カテナリー
電柱の間に垂れる電線に、同じたるみの放物線を重ねた。下の図では、荷重の配り方を自分で動かせる。
なにか
鎖や電線が自重で垂れるときの形である。ガリレオは「放物線だ」と考えたが、正解は双曲線関数 y = a·cosh(x/a) だった。1691年、ライプニッツ・ホイヘンス・ヨハン=ベルヌーイが同時に解いた(上の図で破線とのずれが小さいのを見れば、ガリレオを責める気にはなれない)。ひっくり返すと純粋な圧縮だけで立つ最強のアーチになり、ガウディはコロニア・グエル教会の設計で、紐と重りの「逆さ吊り模型」から柱と丸天井の形を読み取った。セントルイスのゲートウェイ・アーチもこの形をしている。
要になるのは「荷重の配り方が曲線を選ぶ」ところである。水平張力は曲線のどこでも一定なので、傾きは「そこまでに吊った重さ」に比例する。鎖の自重は弧長あたり一様なので、傾きは弧長に比例し、曲線は cosh になる。ところが吊り橋の主ケーブルが担ぐ橋桁はスパン(x)あたり一様なので、傾きは x に比例し、曲線は放物線になる。つまりガリレオの答えは「間違い」ではなく「別の問題の正解」だった。電線はカテナリー、明石海峡大橋のケーブルはほぼ放物線と、隣り合う2つの日常が違う曲線を使い分けている。
自分で動かす
下の絵は、あらかじめ描いた絵の切り替えではなく、ページを開いたその場で上の図と同じ計算をしている。荷重の配り方だけを鎖(弧長一様)から橋桁(スパン一様)へ連続に動かすと、同じソルバの答えが cosh から放物線へ乗り換わる。
λ=0 は弧長あたり一様(鎖・電線の自重)、λ=1 はスパンあたり一様(吊り橋の橋桁)。あいだは両方を混ぜた重さ。
- cosh とのずれ
- —
- 放物線とのずれ
- —
- どちらに乗っているか
- —
- 傾きは何に比例するか
- —
スライダーで決めた荷重の配り方で釣り合った鎖の形と、cosh・放物線とのずれの図
λ をゆっくり動かすと、あいだでは両方のずれが同じくらい大きくなる。混ぜた荷重の答えは「cosh と放物線の中間の曲線」ではなく、どちらにも乗らない別の曲線になる。端では 10⁻⁶〜10⁻⁷ まで乗るのに、λ≈0.35 ではどちらも 2×10⁻² で、4桁も悪い。「荷重の配り方が曲線を選ぶ」は、選ばれない配り方があるという意味でもある。
どう作ったか
釣り合いはシューティング法で求めた。リンクの向きを(水平張力, そこまでに吊った重さ)に比例させ、端点に届くようにニュートン法で 10⁻¹⁰ まで合わせる。鎖(弧長あたり一様の重さ)の形は cosh に乗り、放物線は 8600 倍ずれる。重さの配り方をスパンあたり一様に替えるだけで、今度は放物線に乗り、cosh が 9 万倍ずれる。2つの役割がそっくり入れ替わる。傾きと弧長(鎖)、傾きと x(橋)の相関は 1−10⁻⁹ を超え、弧長は恒等式 2a·sinh(x/a) と一致する。荷重を混ぜるつまみの両端は元の2つの計算と一致し、λ=0 では鎖との差がちょうど0になる。あいだではどちらにも乗らない。λ=0.356 では cosh も放物線も 2×10⁻² ずれ、端より 5200 倍と 37000 倍悪い。
出典
- 数理
- Leibniz・Huygens・Johann Bernoulli, Acta Eruditorum (1691)。吊り橋ケーブル=放物線は荷重分布の標準的帰結。ガウディの逆さ吊り模型はコロニア・グエル教会堂 (1898–)
- 生成
- generators/catenary.js(離散鎖160リンクのシューティング釣り合い・cosh/放物線の最小二乗くらべ)。シューティング法、荷重の配り方、cosh と放物線のあてはめの計算は gallery/assets/catenary-live.js にまとめ、上の図と動く図の両方がこれを使っている