サイクロイド — 自転車のバルブが描く最速の坂
なにか
転がる円の縁の1点が描くアーチ。ガリレオが名づけ、17世紀の数学者たちが取り合いをした「幾何学者のヘレネ(争いの元になる美女)」。幾何はきれいに閉じる: 1アーチの長さはちょうど 8r(円周 2πr より短い整数倍!)、面積はちょうど 3πr²(転がった円3枚ぶん)。
ただの軌跡で終わらないのがこの曲線の凄み。①最速降下線(ベルヌーイの挑戦状, 1696): 坂を重力だけで滑り降りるとき、2点を最速で結ぶ坂は直線でも円弧でもなく、上下逆さのサイクロイド——回り道なのに一番速い(スケートパークのランプがこの形に近いのは偶然ではない)。②等時曲線(ホイヘンス, 1673): サイクロイドの谷は、どの高さから玉を放しても底に着く時刻がぴったり同じ T=π√(r/g)。振り幅で周期が変わる普通の振り子の弱点を、ホイヘンスはサイクロイドの頬で振り子の紐を抱かせて解決した——振り子時計の心臓は、この曲線でできている。
すべり台くらべ
★自分で動かす
下の絵はこの場で計算している(あらかじめ描いた絵の切り替えではない)。上の図を作っているのと同じ 1 本のコード gallery/assets/cycloid-live.js を、記事の中で呼んでいる。「放す高さ」を動かしても、底に着く時刻が変わらない——等時性はこうやって動かすと一目で分かる。
円が1回転すると、縁の点が描く弧の長さはちょうど 8r(円周 2πr ≈ 6.28r より長い)。閉じた式 4r(1−cos(t/2)) と数値積分の2経路を並べて出している。
藍=サイクロイドの弧に沿って滑る/砂色=同じ2点をまっすぐ結んだ坂。遠回りのほうが速い。そして放す位置をどこにしても、サイクロイドの時刻だけが動かない。
- 弧長(数値積分)
- —
- 弧長(閉じた式)
- —
- 差
- —
スライダーで決めた転がり角のサイクロイドと、そこから滑らせたときの降下時間の図
どう作ったか
降下時間 T=∫ds/√(2g(y−y₀)) は出発点で被積分関数が発散するので、パラメータを t=t₀+u² に置換して滑らかにしてから積分するのが計算の要。機械検査は8件: 弧長8r・面積3πr²(閉形式 vs 数値積分)・最速降下(3本の坂の時間の順序と理論値π)・等時性(5つの高さから放して全員 π±10⁻³ で同着)・途中までの弧長も2経路(数値積分 と 4r(1−cos(t/2)))で41通り一致・記事のドラッグ版を偽DOMの上で実際に走らせる8項目(★放す位置を31通り動かしても降下時間が動かない/対照のまっすぐな坂は330倍動く)・出荷SVGとドラッグ版が同じ1本のコードを共有していること・SVG実物2枚。ドラッグ版の検査の実体は tools/cycloid-live-test.js。
出典
- 数理
- 等時性は C. Huygens, Horologium Oscillatorium (1673)。最速降下線は Johann Bernoulli の公開問題 (1696) にニュートン・ライプニッツらが解答。弧長 8r は C. Wren (1658)
- 生成
- generators/cycloid.js(転がし図・すべり台くらべ・降下時間は u² 置換+シンプソン則)サイクロイドの数理(軌跡・弧長と面積・降下時間・比較曲線)は gallery/assets/cycloid-live.js に置き、出荷SVGの生成器と記事のドラッグ版が同じ1本を共有している