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カイトの Heesch 数

Hat タイルは、六角形を 6 つに切ったカイト 8 枚でできている。そのカイトを 2〜10 枚つないだ形を全部作り、それぞれが自分の写しで何重に囲めるかを数えた。平面を敷きつめられない形のうち、3 重まで囲めて 4 重目で行き詰まる形は、10 枚で初めて 1 つ現れた。その形は、裏返した写しを使えないと 1 重も囲めない。

赤い細長い形のまわりを、同じ形の青い写しが内側から濃い順に 3 重に囲んでいる図。外側ほど写しが多く、腕を伸ばすように広がっている
中心の赤がカイト 10 枚の形で、まわりの青は同じ形の写しである。内側から 5 枚・9 枚・23 枚で 3 重に囲んでいる。同じ環の中で一段濃い写しは裏返した写しになる。4 重目はどう並べても作れない。

なにか

ある形の写しを、重ねずすき間も作らずにまわりへ並べて、元の形をすっかり囲めたら 1 重である。囲んだ全体をさらに写しで囲めたら 2 重になる。こうして何重まで囲めるかが、その形の Heesch 数である。平面を敷きつめられる形はいくらでも囲めるので、Heesch 数は無限大と決める。Kaplan は 2021 年の論文の §2.1 でこの定義を書き、いちばん外側の環に穴を許すかどうかで意見が分かれるので、許さない数え方(Hc)と許す数え方(Hh)を分けて報告している。Kaplan の序論によると、Grünbaum と Shephard は 1987 年の時点で 1 より大きい例を知らなかった。その後 4 まで見つかり、Mann と Thomas が辺に印をつけた形で 5 に上げ、2021 年に Bašić が 6 の形を示した。

Hat タイルについて、Smith・Myers・Kaplan・Goodman-Strauss の論文は「[3.4.6.4] の Laves タイルのカイト 8 枚の合併」と書く。正六角形を、中心と辺の中点を結んで 6 つに切ったひと切れがカイトである。同じ論文の §2 は、Kaplan の Heesch 数を数えるソフトを書き換えて、Hat がもし平面を敷きつめないなら Heesch 数は 16 以上になると確かめたことを書いている。

Kaplan 2021 は、正方形をつないだポリオミノ(19 枚まで)、正六角形をつないだポリヘックス(17 枚まで)、正三角形をつないだポリイアモンド(24 枚まで)の Heesch 数を全部数えた。カイトをつないだポリカイトについては、Myers が平面を敷きつめられるかどうかを 25 枚まで分類している。Heesch 数のほうは、開いた範囲では数えた表が見つからなかった。開いたのは Kaplan 2021 の本文、Kaplan のデータのページ、Kaplan が 2025 年に書いた総説「The Path to Aperiodic Monotiles」、Smith ほかの本文、Myers のページである。総説も、自分が Heesch 数を計算した対象をポリオミノ・ポリヘックス・ポリイアモンドと書いている。そこで、カイトで同じことを数えた。

10 枚で、Heesch 数 3 が初めて出る

枚数ごとの形の数と Heesch 数の内訳の表、ポリオミノ・ポリヘックス・ポリイアモンド・ポリカイトで Heesch 数が初めて出る大きさを比べた表、3 つの形とその環の図、裏返しを禁じたときの表、見立ての当たり外れの表
上から、枚数ごとの内訳、その Heesch 数が初めて出る大きさ、3 つの形と見つかった環、裏返しを禁じたときの値、見立ての当たり外れを並べた。

カイトを辺でつないだ形は、回転と裏返しで重なるものを 1 つと数えると、7 枚で 262 形、10 枚で 10,011 形ある。穴のある形を除くと 10 枚で 9,309 形が残る。形の数と穴のある形の数は、1〜10 枚のどれも Myers の表と一致した。

10 枚の 9,309 形のうち、平面を敷きつめない 9,294 形の内訳は、Hc で 0 が 8,702、1 が 579、2 が 12、3 が 1 だった。穴を許す Hh では 0 が 8,280、1 が 998、2 が 14、3 が 2 になる。4 重まで囲めた形は 15 形あり、Myers の表で敷きつめられる形の数(10,011 から穴あき 702 とタイルしない 9,294 を引いた 15)と一致する。Smith ほかが Hat の次に見つけた Turtle もカイト 10 枚の形なので、この 15 形に入っている。

小さい枚数から見ると、Hc=1 は 4 枚、Hc=2 は 7 枚で初めて出る。7 枚で Hc=2 の形は 1 つだけで、8 枚では 5 つに増えるが、9 枚では 0 に戻る。9 枚の平面を敷きつめない 2,021 形は、Hc で 0 か 1 しかない。そのあと 10 枚で、2 が 12、3 が 1 と一度に出てくる。

Kaplan 2021 の表 1・3・5 で、穴なしの Hc=3 が初めて出る大きさを読むと、ポリオミノは 17 枚、ポリヘックスは 7 枚、ポリイアモンドは 10 枚だった。カイトは 10 枚で、ポリイアモンドと同じ枚数になる。Hc=2 はポリオミノが 9 枚、ポリヘックスが 6 枚、ポリイアモンドが 10 枚で、カイトの 7 枚はそのあいだに入る。単位の形の大きさがそろっていないので、枚数だけを並べた比べ方である。

3 重の囲み方を描く

Heesch 数を数える式は、囲めたときに写しの置き方そのものを返す。それを取り出して描いたのが上の図で、Hc=3 の形は内側から 5 枚・9 枚・23 枚の写しで 3 重に囲まれた。囲み方は 1 通りではなく、ここに描いたのは見つかった 1 つである。

Hh=3・Hc=2 のもう 1 つの形は、3 重目まで並べると外側の環にどうしても穴が残る。見つかった並べ方では、カイト 2 枚ぶんの穴が 2 か所に開いた。穴を許さなければ 2 重までで、そのときの枚数は 5 枚・10 枚だった。7 枚で Hc=2 の形は、7 枚・16 枚の写しで 2 重に囲まれた。

描いた並べ方は、数える式とは別に組んだ判定でも確かめた。写しどうしは重ならず、どれも中心の形と合同で、内側の環の写しは触れるカイトを全部覆われ、各環の写しは 1 つ内側の環に触れ、2 つ以上内側の環には触れていない。

見立て

環の置き方を取り出す前に、見立てを 6 つ決めた。

見立ての 1 つ目は、Heesch 数 3 の 2 形はどちらも Hat をそっくり含まない、だった。Hat の 13 角の輪郭を 8 枚の形 873 個と照らすと、ちょうど 1 つと一致した。その Hat を 12 の向きと格子のずらしで当ててみると、2 形とも重なるのは最大 5 枚で、Hat はそっくりは入らない。見立てどおりである。

見立ての 2 つ目は、2 形とも回転でも裏返しでも自分に重ならない、だった。12 の向きのうち自分に重なるのは向きを変えない 1 つだけで、輪郭はそれぞれ 19 角と 15 角だった。見立てどおりである。

見立ての 3 つ目は、裏返した写しを禁じると 2 形とも Hc が 3 より下がる、だった。Hc=3 の形は、裏返しを禁じると Hc も Hh も 0 になり、1 重も囲めなくなった。もう 1 つの形は、もともと Hc が 2 なので、この書き方では判定にならないことに結果を見てから気づいた。禁じる前と比べると Hc 2・Hh 3 のまま変わらず、裏返しなしでも同じだけ囲める。半分当たりとした。

見立ての 4 つ目は、7 枚で Hc=2 の形も、裏返しを禁じると下がる、だった。Hc は 2 から 0 に落ちた。見立てどおりである。

見立ての 5 つ目は、3 重の環の枚数は内から外へ増え、3 つ目の環は 1 つ目の 2 倍以上、だった。5 枚・9 枚・23 枚で、3 つ目は 1 つ目の 4.6 倍である。見立てどおりである。

見立ての 6 つ目は、Hh=3 の形の 3 つ目の環に開く穴は 1 つで、カイト 1〜2 枚ぶん、だった。穴はカイト 2 枚ぶんの大きさだったが、2 か所に開いた。外れである。穴の数は見つかった並べ方によって変わりうるので、2 か所が最少かどうかは数えていない。

→ Hat タイル(カイト 8 枚で平面を敷きつめ、繰り返さない形)

→ Spectre タイル(裏返しを使わない非周期タイル)

機械で分かる範囲と、目でしか分からない範囲

機械で確かめたのは、1〜10 枚の形の数と穴のある形の数が Myers の表と一致すること、3 重まで(10 枚は 4 重まで)囲めた形の数が、どの枚数でも敷きつめられる形の数と一致すること、描いた 4 つの並べ方が上の判定を通ることである。同じ数え方を Kaplan の表の小さい所に当てると、7・8 枚のポリオミノと 6 枚のポリヘックスは内訳がそのまま一致し、7 枚のポリヘックスは 3 重まで調べた範囲で一致した。

目で決めたのは、どの形を描くかと、カードの色である。環の色は内側から濃い順にし、裏返した写しは同じ環の中で一段濃くした。

どう作ったか

生成器は generators/heesch-kite.js、数える道具は generators/heesch-lib.js である。カイトの格子は正六角形の格子を 6 倍に細かくして、カイトの 4 つの頂点がどれも整数の点に乗るように置いた。形の列挙は 1 枚から辺の隣を足していき、回転と裏返しで最小の書き方にそろえて重複を除いた。Heesch 数は Kaplan 2021 の §3 と同じく、「n 重に囲めるか」を真偽の式に直してソルバで解き、囲めなくなるまで n を上げた。2〜9 枚は全部数え直し、10 枚は 9,309 形を 3 重まで数えたあと、3 重まで囲めた 17 形を 4 重まで調べ直した。10 枚の全数には 18 分ほどかかる。

確かめていないこと。11 枚より大きい形は数えていないので、Hc=4 の形がいつ出るかは分からない。描いた囲み方は見つかった 1 つで、枚数が最少の囲み方かどうか、穴が最少の囲み方かどうかは数えていない。Hat と Turtle の Heesch 数は無限大で、この表には入らない。Bašić 2021・Mann と Thomas 2016・Grünbaum と Shephard 1987 は開いておらず、記録の経緯は Kaplan 2021 の序論の書き方をそのまま引いた。

出典

Heesch 数の定義と表
C. S. Kaplan「Heesch Numbers of Unmarked Polyforms」arXiv:2105.09438(2021)。§2.1 の定義(Hc と Hh)、§3 の式の立て方、序論の記録の経緯、表 1・3・5(表のページを画像で読んだ)。Kaplan のデータのページ cs.uwaterloo.ca/~csk/heesch/ も開いた
Hat と Turtle
D. Smith, J. S. Myers, C. S. Kaplan, C. Goodman-Strauss「An aperiodic monotile」arXiv:2303.10798v3。Hat がカイト 8 枚の合併であること、Hat がもし敷きつめないなら Heesch 数は 16 以上と確かめたこと(§2)、Turtle がカイト 10 枚の合併であること(§2)。本文で読んだ
総説
C. S. Kaplan「The Path to Aperiodic Monotiles」arXiv:2509.12216v1(2025)。Heesch 数の計算の対象がポリオミノ・ポリヘックス・ポリイアモンドであること
ポリカイトの分類
J. Myers「Polyomino, polyhex, polyiamond and polykite tiling」polyomino.org.uk/mathematics/polyform-tiling/。ポリカイトの表(1〜10 枚の形の数・穴あき・非等面体・タイルしない形)を写した
数理
形の列挙、Heesch 数の計算、囲み方の取り出しと判定、Hat の見つけ方は自分で組んで、上の表と照らした
親戚
Hat タイル・Spectre タイル
生成
generators/heesch-kite.js(heesch-kite.svg 表紙・heesch-kite-book.svg 帳簿)と generators/heesch-lib.js。数値は generators/data/heesch-kite/facts.json に書き出した