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Spectre タイル

Spectre タイルは、裏返しを使わずに1種類だけで平面を埋める。置換を3回繰り返した559枚でも裏返したタイルは0枚で、向きは30°の倍数の12通りに収まり、配置は周期的に繰り返さない。

Spectreタイル559枚のパッチ。曲線の縁を持つ同じ形のタイルだけが平面を隙間なく埋め、赤いタイルが不規則に散らばる
赤で塗ったのは、1枚だけ30°傾いて収まる「Mystic の相棒」で、その散らばり方も周期的に繰り返さない
左は直線14辺のTile(1,1)、右はその辺を曲線に置き換えたSpectre
左の形 Tile(1,1)(14辺すべてが同じ長さ)の辺を曲線に置き換えると、右の Spectre になる。ふくらみが辺ごとに交互なので、裏返した鏡像ははまらなくなる

なにか

1種類の形だけで平面を隙間なく埋め、しかも模様が周期的に繰り返さない。その1枚を探す「アインシュタイン問題」は、2023年3月の Hat タイルで解決した。ただし Hat には小さな注釈が付く。左右の靴のように、裏返した鏡像も一緒に使うのだ。「裏返しも1種類と数えるのか?」という60年来の問いに、同じチームが3か月後に出した答えがこの Spectre である。右足の靴だけで床を敷き詰めるように、裏返しを一切使わずに平面を埋め、それでも配置は周期的に繰り返さない。

Spectre のもとになった形は、Hat の仲間だった。Hat は2種類の辺の長さの比を変えると形が連続して変わる族の一つで、その比をちょうど1:1にした形が Tile(1,1)である。この形は、鏡映を許すと周期的に並べられてしまう例外だった。ところが鏡映を禁止すると、並べ方は非周期しか残らない。そこで14本の辺を同じ曲線に置き換えて、鏡像がはまらないようにした。裏返しを禁じる決まりを、形そのものに組み込んだのが Spectre である。

どう作ったか

原論文の置換システムを自分で実装した。9種類のメタタイル(Γ・Δ・Θ・Λ・Ξ・Π・Σ・Φ・Ψ)を7手の配置規則で8個ずつ束ね、一段ごとに鏡映を1回挟む。Γ だけは Spectre 2枚を組にした「Mystic」で、相棒の1枚が30°傾く。タイル張り全体で、30°の奇数倍だけ回っているのはこの相棒だけである。559枚はすべて同じ向きの面を上にしていて(裏返しは0枚)、14本の辺はすべて同じ長さで、回転角はすべて30°の倍数になった。枚数は漸化式と一致し、世代ごとの増え方は 4+√15 倍に近づく。内側の辺3,529本では、どこでも隣どうしの曲線のふくらみが逆向きに噛み合い、重なりも隙間もなかった。

→ Hat タイル(鏡映も使う最初のアインシュタイン)

→ ペンローズ・タイリング(2種類で非周期・50年前の出発点)

自分で動かす

下の絵は、ページを開いたその場で上の図と同じ計算をしている。置換の回数を 0 から 4 へ動かすと、1 枚が 4,401 枚まで増えていく。そのたびに枚数を漸化式と比べ、裏返しが 0 枚であること(det > 0)と、回転角が 30° の倍数だけであることを数え直して表示する。

枚数(実装/漸化式)
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鏡映の枚数(det ≤ 0)
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回転角の種類
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奇数×30° の枚数=Mystic の相棒
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スライダーで決めた置換回数の Spectre タイリングのパッチ

回転角の種類は 1 → 6 → 11 → 12 → 12 で止まる。30° の倍数は 12 通りしかなく、そのうち30° の奇数倍の向きを持つのは Mystic の相棒だけである。角度を −180〜180° のまま 360 で割ると、−30° と 330° を別に数えて 13 通りに見えてしまうので、数える前に 0〜360° にそろえている。置換のたびに鏡映が 1 回かかるため、回数が奇数のときは最初に 1 回裏返し、すべてのタイルが回転と平行移動だけで並ぶようにした。上の図は置換 3 回(559 枚)である。

出典

数理
D. Smith, J. S. Myers, C. S. Kaplan, C. Goodman-Strauss, "A chiral aperiodic monotile", arXiv:2305.17743 (2023)。置換規則表の整理は Kaplan の公開実装を参照(コードは自作)
生成
generators/spectre.js(置換3回・Δ 起点・曲線の縁は三次ベジェで自作)