← ギャラリーへ

かけ算第54号|雷文の帯を、角を保ったままふくらませる × 見つめた点から離れると帯が粒に化ける

ふくらませた雷文は、縁から粒に化ける

第52号でふくらませた雷文の絵を、第47号と同じ、見つめた点から離れるほど粗くなる標本で拾い直した。どこで化けるかは、写像の伸び |F′| を入れた比 q だけで決まり、トンネルで数えた曲線にそのまま重なった。中心を見つめると、トンネルでは中心のまわりが化けたのに対して、ふくらませた絵では縁から化ける。写像が折れる中心の点は、どこを見つめても化けなかった。

中心に八つ星がある、ふくらませた雷文の絵。中心の小さな輪を見つめたときの標本で塗り直していて、星のまわりの帯はなめらかだが、縁に近い細かい帯ほど縁がぎざぎざの粒になっている
第52号のカード(二乗の写像でふくらませた雷文)を、絵の幅が視角 20° に見えるとして、中心の小さな輪を見つめたときの標本で塗り直した。1 画素ずつ最も近い標本の色で塗っている。

なにか

第47号では、第44号の雷文のトンネルを網膜の標本の並びで拾い直した。標本の間隔は Watson(2014)の式 (10) の 60·S = 0.53 + 0.434·E で、見つめた点からの角度 E(度)とともに広がる。化けるかどうかの目安には比 q を使った。q はその場所の標本のナイキスト周波数 1/(√3·S) に、模様の升 1 つの角度を掛けた数で、「模様の升 1 つに、並びが運べる最高の周波数がいくつ入るか」を表す。トンネルでは升の大きさが中心からの距離に比例していた。

第52号でふくらませた絵では、升の大きさは場所ごとに 1/|F′| で変わる。F は絵の点 w を模様の点へ送る写像で、|F′| はその場所の伸びである。そこで q の式の升の角度を、1000 px の絵で 1000/(2|F′|) px にして数え直した。絵は 2 つ使った。1 つは第52号のカードと同じ二乗 F = 26w² で、写像は中心で折れ、中心の八つ星のまわりほど帯が太い。もう 1 つは三次 F = 20(w − 0.3w³) で、帯は左右の縁の中ほどで太く、四隅で細い。

組み立て直しは、第47号の M0(1 画素ずつ最も近い標本の色で塗る)と、第49号の M2(標本ごとにまわりの絵をガウスで平均してから拾い、なめらかにつなぐ・重みの幅 0.5·S)を使った。見つめる点は、中心・左上(200, 200)・左上の隅(40, 40)の 3 通りにした。

化け方は q の曲線に乗る

二乗と三次の絵を 3 通りの見つめ方で塗り直した縮小図、中心と縁と隅の等倍の切り出し、中心を見つめたときの比 q の地図、q の区間ごとの化けた割合をトンネルと重ねたグラフ、数値の一覧
上から、塗り直した絵、等倍の切り出し、q の地図、q ごとの化けた割合、数値を並べた。縮小図は 4 × 4 画素の色の割合で塗っている。

見立ての 1 つ目は「化けるかどうかは |F′| を入れた局所の q だけで決まり、第47号のトンネルの曲線にそのまま乗る(同じ q の区間で差は 0.05 以内)」だった。当たった。20° の絵を M0 で塗り直し、元の色と違う画素の割合を q の区間ごとに数えた。トンネルの 2 通りの見つめ方をまとめた曲線と比べると、差の最大は二乗で 0.016・0.026・0.028(中心・左上・左上の隅)、三次で 0.042・0.025・0.006 だった。比べたのは、どちらも 500 画素以上ある区間だけである。写像も見つめる点も違うのに、化け方は q の値だけで読める。

中心を見つめると、縁から化ける

見立ての 2 つ目は「中心を見つめると、二乗では |F′| も標本の間隔も中心からの距離 r にほぼ比例するので、q はおよそ 1/r² で外へ落ちる。化けるのは縁からで、中心に化けない円が残る。三次では隅から化け、左右の縁の中ほどは化けない」だった。向きは当たり、落ち方は半分だけ当たった。

二乗で中心を見つめると、q は r だけの関数 q(r) = N(S(r/ppd))·500²/(2·26·r)/ppd になる(ppd は 1 度あたりの px)。r = 25・50・100・200・400 px で q は 178.36・69.11・23.83・7.35・2.08 になった。r を倍にするごとに q は 2.58・2.90・3.24・3.53 分の 1 になった。1/r² なら 4 分の 1 である。中心の近くでは標本の間隔の式の定数 0.53 が効いて 1/r に近く、外へ行くほど 1/r² に寄る。q = 1.5 の円の半径は、絵の幅 10°・20°・40° で 448.4・476.2・490.8 px だった。20° で q が 1.5 を下回る画素は格子で数えて 28.8% で、円の外の面積の式 1 − πr²/1000² とも 28.8% で合った。絵の幅を広げた極限では、半径は 500·√(60/(√3·0.434·2·26·1.5)) = 505.8 px に近づく。

M0 で化けた画素は、中心の枠(400〜600 px)で 0.9%、左上の隅で 34.9%、右下の隅で 29.4%、左の縁の中ほどで 19.0% だった。第47号のトンネルで中心を見つめたときは、q が 1.5 を下回るのはトンネルの中心から 22 px 以内だけで、化けるのは中心のまわりだった。ふくらませた絵では向きが逆になる。三次では、左上の隅と右下の隅の枠の中心の q は 2.09 と 2.56 で、化けた画素は 19.5% と 15.3% だった。帯がいちばん太い左の縁の中ほどは、q が 10.21 で化けた画素は 4.2% だった。

折れた点は化けない

見立ての 3 つ目は、計画の段階で書いた「二乗の臨界点のまわりは |F′| → 0 なので必ず化ける」だった。数字を出す前、q の式を書いた段階で向きが逆だと気づいた。|F′| が 0 に近づくことは、模様の升が絵の上で大きくなることで、q は大きくなる。数えると外れていた。中心から 60 px 以内の q の最小は、中心・左上・左上の隅を見つめたときで 51.9・11.6・8.2 あり、どれも 1.5 を大きく上回った。中心の枠で化けた画素は 0.9%・3.2%・4.8% だった。第52号で「真ん中をふくらませるには真ん中で写像を折る」と書いた点は、目の粗さに対していちばん強い場所になる。

見つめた隅ははっきりする

見立ての 4 つ目は「いちばん細い隅を見つめると、その隅ははっきりし、化けるのは遠い側の隅」だった。当たった。左上の隅を見つめると、二乗で化けた画素は左上の隅 9.5%・右下の隅 54.6% で、中心を見つめたときの左上の隅の 34.9% から大きく減った。三次でも左上の隅 5.4%・右下の隅 32.3% になった。二乗の左上の隅が 0 に近づかないのは、そこが絵でいちばん帯が細い場所だからである。見つめた点の上でも q は 9.66 しかなく、枠の端(200, 200)では 3.15 まで下がる。トンネルの曲線で q が 3〜4 と 4〜6 の区間の化けた割合は 11.5% と 8.3% で、9.5% はその間にある。

ぼけの分は伸びの大きい所で増える

見立ての 5 つ目は「M2 で組み立て直すと、第49号と同じく標本が作った分は小さく、ぼけの分が残る。ぼけの分は |F′| の大きい所ほど多い」だった。当たった。第49号と同じく、標本を取らずに同じ幅のガウスで絵を直接ぼかしたものを基準にした。元の絵から基準までを「ぼけの分」、基準から組み立て直した絵までを「標本が作った分」として、4 色の割合の差の半分の和で数えた。標本が作った分は絵全体で、二乗・中心 1.3%、二乗・左上の隅 1.3%、三次・中心 0.9% だった。ぼけの分は 37.3%・48.4%・23.5% だった。

二乗で中心を見つめると |F′| も離心率も r に比例するので、2 つの効き目を分けられない。三次の中心を見つめた絵は分けられる。左上の枠(中心が離心率 8.5°)と左の縁の中ほどの枠(8.0°)は離心率がほぼ同じで、|F′| の平均は 24.1 と 9.2 である。ぼけの分は 26.9% と 10.0% で、同じ離心率でも伸びの大きい所ほどぼけた。

→ 雷文の帯を、角を保ったままふくらませる(元の絵)

→ 見つめた点から離れると帯が粒に化ける(標本と q)

→ 見つめた点の外で、雷文の線が混み合う(組み立て直しと差の分け方)

帯の比が開く所は、化けるのがいちばん遅い

(2026-09-26 追記)第52号の三次の絵では、茜と山吹の幅の比が臨界点に近い左右の縁で 0.840〜1.080 まで開いた。帯の幅は 0.25/|F′| という 1 次の近似で読めるが、帯を 3 本歩くあいだに |F′| が大きく変わる所ではその近似が崩れる。第52号で比が 0.95〜1.05 の外に出た標本点は 3 つあり、比は 0.840・1.080・1.067、ε は 0.332・0.366・0.333 だった。ε は第52号で置いた目安 (0.75/|F′|)·|F″|/|F′| である。この 3 点の近くを目の標本で拾うとどう化けるかを調べた。

数字の前に置いた見立ては 3 つある。1 つ目は「比が開く所は |F′| が小さく升が大きいので q が大きい。中心を見つめた 20° では化けない」。2 つ目は「どこを見つめても、絵をどれだけ大きく見ても、比が開く所の q は 5 を下回らない」。3 つ目は「近似が崩れていても化けた割合は q だけで読め、ε の大きい画素でもトンネルの曲線との差は 0.05 以内に収まる」。

三次の絵に ε の等高線と比が開いた 3 点を重ねた図、中心を見つめたときに化け始める絵の幅の地図、絵の幅ごとに化けた画素の割合を ε の大きい所とそれ以外で比べたグラフ、ε で分けた化けた割合をトンネルの曲線と重ねたグラフ
左上は三次の絵に ε = 0.1 と 0.3 の等高線を重ねたもの、右上は中心を見つめたときに各画素が化け始める絵の幅。下の左は絵の幅ごとに q が 1.5 を下回る画素の割合、下の右は ε で分けて数えた化けた割合である。

1 つ目は当たった。中心を見つめた 20° の絵で、3 点の q は 9.50・10.23・9.52 だった。ε が 0.3 以上の画素(絵の 3.8%)では、q の最小は 7.22 である。

2 つ目は向きを取り違えていた。ε が 0.1 以上の画素で見つめる点を総当たりで振ると、20° の絵での q の最小が、絵の幅を広げた極限の値より小さく出て気づいた。q = 60u/(√3(0.53·ppd + 0.434·d)) の u は升 1 つの px、ppd は 1 度あたりの px、d は見つめた点までの px である。絵の幅 W を広げると ppd = 1000/W が小さくなり、q は大きくなる。W を無限に広げた極限の q = 60u/(√3·0.434·d) は下限ではなく上限だった。最も遠い隅を見つめたときのこの上限は、3 点で 4.33・4.65・4.34 で、5 にも届かない。絵を小さく見れば、つまり遠くから見れば、どの画素もいずれ化ける。

そこで問いを化ける順番に替えた。画素は、絵の幅が W* = 530/(60u/(1.5√3) − 0.434d) より小さいと q が 1.5 を下回る。中心を見つめると、3 点の W* は 0.449°・0.419°・0.448° だった。ε が 0.3 以上の画素のどれかが化け始めるのは絵の幅が 0.542° のときで、その幅では絵全体の 94.9% がすでに化けている。見つめる点を 50 px ごとの 21 × 21 通りに振ると、順番がいちばん早まるのは左の縁の (0, 350) を見つめたときで、幅 0.705°・すでに 91.7% だった。W* の式を使わずに、q の最小が 1.5 になる幅を二分法で探し、その幅で q が 1.5 を下回る画素を数える方法でも、同じ 4 つの値が出た。比が開く所は、化けないのではなく、化けるのがいちばん遅い所だった。ε が 0.1 以上の画素(絵の 13.2%)まで広げると順番は弱まり、中心を見つめて 60.0%、左上の隅 (0, 0) を見つめて 37.8% だった。

順番を決めるのは升の大きさ u = 500/|F′| である。ε の式から |F′| を消すと u = 500·√(ε/(0.75|F″|)) になる。三次の写像では |F″| = 36|w| で、絵の中では 50.9 以下にとどまる。そのため ε が大きい所ほど升が大きい。帯の比が崩れるほど |F′| が急に変わる所は、|F′| そのものが小さい所でもある。

3 つ目は当たった。画素を ε が 0.1 以上と未満に分けて、q の区間ごとの化けた割合を数えた。ε が 0.1 以上の画素では、トンネルの曲線との差の最大は、20° で中心を見つめたとき 0.006(4 区間)、80° で右下の隅を見つめたとき 0.009(6 区間)だった。ε が 0.1 未満の画素との差も 0.006 と 0.009 だった。比べたのは、どちらも 500 画素以上ある区間だけである。帯の幅の近似が崩れても、化け方はその場の q で読める。茜と山吹のどちらが先に化けるかは、色ごとに数えていないので確かめていない。

どう作ったか

生成器は generators/bulge-fovea.js で、絵の色と写像は第52号の生成器を、標本の輪と間隔は第47号の生成器を、M2 の組み立て直しは第49号の生成器をそのまま呼んだ。数えるときは 2 px ごとの格子を使った。トンネルの曲線は、第47号の生成器で同じ 2 px の格子で数え直したものである。

この模型が説明しないこと。標本の間隔は Watson 2014 の式 (10) だけで、光学のぼけの大きさ、錐体の大きさ、色の違い、目の動きは入れていない。M2 の重みの幅 0.5·S は文献で決めた値ではない(第49号で振った値の 1 つ)。混み合いはこの記事では見ていない。ユーザーの「周りがドットに見える」にこの記事が何を足すかも確かめていない。

出典

文献
A. B. Watson, "A formula for human retinal ganglion cell receptive field density as a function of visual field location", Journal of Vision 14(7):15, 2014(標本の間隔。第47号で本文を開いた。この記事で新しく開いた原典はない)
数理
|F′| を入れた比 q、二乗で中心を見つめたときの q(r) の式と q = 1.5 の円の半径、絵の幅を広げた極限の半径は自分で組んで数値で確かめた。追記の化け始める幅 W* と u = 500·√(ε/(0.75|F″|)) も同じ
親戚
雷文の帯を、角を保ったままふくらませる・見つめた点から離れると帯が粒に化ける・見つめた点の外で、雷文の線が混み合う
生成
generators/bulge-fovea.js(bulge-fovea.svg 中心を見つめて M0 で塗り直した絵・bulge-fovea-book.svg 帳簿・bulge-fovea-open.svg 帯の比が開く所の追記)