乾燥亀裂と柱状節理 — 割れる順序が接合の角度を決める
田んぼのひびと、玄武洞の柱
干上がった田んぼのひび割れは直角のT字路だらけで、区画はだいたい四角い。ところが玄武岩の柱状節理(玄武洞・東尋坊)の断面は120°のY字路で、六角形が並ぶ。同じ「割れる」なのに、なぜ角度が違うのか。
材料の違いではなく時間割の違いである。泥は順に割れる——先に大きな亀裂が走り、あとから来た亀裂は、開いた亀裂の面がせん断応力を伝えないせいで既存の亀裂に直交して突き当たる(Lachenbruch 1962)。一方、ゆっくり冷える玄武岩では割れ目が何層もかけて進み、そのたびに接合点が釣り合いの位置へ動く——3方向の張力が釣り合うのは泡の Plateau と同じ 120° しかない。
この模型は応力場を解いていない。「近づいたら直交へ曲がって止まる」を規則として入れ、その帰結(接合角の分布・面の統計・履歴・緩和後の角度)を測った。対照として直交規則を切ると、到着角の90°からのずれは平均 6.6°→27.2° に散る=90°は幾何の偶然ではなく規則の帰結である。
★泥の「四角」と蜂の「六角」は同じ帳簿だった
面の統計を取ると意外なことが出る。順に割った網の面は、角(180°でない頂点)が平均 4.03 個——泥のひび割れが「四角く」見える正体である。ところが辺の数(接合点の数)を数えると平均 5.64 個で、ボロノイの 5.65 個とほぼ同じ。
差はT字の180°を「角」に数えないことから来る。T字路では貫通する側の亀裂がまっすぐ通るので、片側の面には180°の平らな頂点ができる——目には角と映らない。整数の帳簿はきっちり合う: 亀裂1本=接合2つ+辺3本(60本で接合点 124 = 2N+4・辺 184 = 3N+4・面 61 = N+1・オイラーの式 V−E+F = 2 が厳密)。ボロノイや泡の「平均6」と、泥の「平均4」は、同じオイラーの帳簿を「角を数えるか、接合を数えるか」で読み分けた違いだった。
★亀裂は履歴を持つ——同じ種でも順序で別の網になる
あとから来た亀裂は「そのとき既にあった亀裂」に突き当たって止まる。だから網の形はどの亀裂が先にあったかを記憶している。同じ種で順序だけシャッフルすると、接合点の一致はわずか 3% だった。ボロノイは定義に順序が入っていないので、いつでも同じ網になる——「亀裂は履歴を持つ分割、ボロノイは履歴を持たない分割」が、そのまま機械検査になる。
★釣り合えた接合点は、例外なく 120.000°
順に割った網(T字だらけ)の接合点を、総延長が減る向きに動かした(張力の釣り合い=泡と同じ力学)。すると接合角の山は 90° から 120° へ移り(120°±15° が 11%→39%)、釣り合いに達した点(3方向の単位ベクトルの和が 10⁻⁹ 未満)では、42 個の角がすべて 120° に 10⁻¹² °以内で一致した。和が0 ⟺ 互いに120° は式の帰結で、対照(120°から1°ずらすと和が 0.017 以上)も置いた。
⚠️ただし全部は釣り合えない(釣り合えたのは 14/100 点)。内角の和の恒等式(m角形で (m−2)·180°)から、直線の辺のまま全接合を120°にできるのは6角形だけの網で、この網に辺6本の面は 3% しかないからである。実物はここをどう解決しているか——泡は辺を曲げて帳簿の不足を曲率に払わせ(∮κds = (π/3)(6−n))、柱状節理は何層もかけて網そのものを組み替える(セルの併合・実物の観察は伝聞)。緩和だけで六角にはならない、という失敗の形が、実物が時間をかける理由を説明している。
どう作ったか
機械検査は30件: ①先端120個が全部着地(すり抜け・行き止まり0)②★到着角のずれ平均6.6°・対照(規則オフ)27.2° ③刻み半分で6.6°→2.6°=規則の固定点 ④オイラーの式が厳密・面数 N+1 ⑤整数の帳簿(2N+4・3N+4)⑥接合角の和はどの点でも360° ⑦内角の和 = (m−2)·180°(面歩きの自己検証・最大3.6×10⁻¹²°)⑧★角の平均 4.03 vs 5.25・⚠️辺の数はほぼ同じ ⑨ボロノイは120°の一山・順次は90°と180°の二山 ⑩★順序で一致3%・ボロノイは完全一致 ⑪★釣り合えた点は例外なく120°(10⁻¹²)・山が90°→120°へ ⑫⚠️全部は釣り合えない(6角形の面が3%しかない)・緩和は帳簿を変えない(辺数の平均が完全一致)・角は4.03→4.98に増える ⑬補題の対照(和0⟺120°)⑭決まった乱数 ⑮出荷SVG2枚。
出典
- 数理
- 亀裂は最大引張応力に垂直に進む(Griffith 1921 以来の破壊力学の標準)。開いた亀裂=自由表面はせん断を伝えず、あとから来た亀裂が直交して当たる(A. H. Lachenbruch 1962: 永久凍土の亀裂多角形)。乾湿の繰り返しで接合がTからYへ成熟すること・柱状節理の断面が六角に近づくことは L. Goehring らの実験・観察(2010ほか)——⚠️実験と実物の値は伝聞で、こちらでは測っていない
- こちらの主張
- 「順に割ると角4.03・同時なら5.25、なのに辺の数はどちらも5.6」「順序だけ変えて一致3%」「釣り合えた点は例外なく120°、ただし直線の辺では全部は釣り合えない」はこの作品で測ったもの。応力場は解いていない(直交規則の幾何模型)
- 生成
- generators/crack.js(逐次モデル・半平面切り抜きのボロノイ・面歩き・縮約と制約つき勾配緩和・図2枚。依存ゼロ・乱数は mulberry32)