泡の法則 — どの泡が消えるかは、辺の数を数えれば分かる
なにか
シャボンの泡が集まると、膜は必ず3枚ずつ 120°で出会う(Plateau の法則)。この作品では 120° を仮定せず、同じ張力の膜3枚が1点で釣り合う向きを解いた——答えは 120.000000°(残差 10⁻³¹)。3次元では辺が4本ずつ出会い、その角は arccos(−1/3) = 109.4712°(4方向の単位ベクトルの和がちょうどゼロ)。
そこから先が本題である。頂点が 120° に決まってしまうと、泡の輪郭が1周でどれだけ曲がるかは辺の数だけで決まる: ∮κds = (π/3)(6 − n)。曲率は膜が動く速さそのものなので(曲がっている膜は中心へ動く)、面積の増減も辺の数だけの関数になる——これが von Neumann の法則 dA/dt = (πM/3)(n − 6) である。
曲率の総量は、先に決まっている
理由は帳簿である。1周すると接線は必ず 2π 回る。頂点1つで π/3(= 180°−120°)ぶん回るので、n 個の頂点で nπ/3。残りを弧が受け持つから ∮κds = 2π − nπ/3 = (π/3)(6 − n)。設計の自由はどこにもない。
これはResch パターンで見た「曲率は総量が先に決まっていて、設計の自由は配り方だけ」(発見13)と同じ帳簿である。あちらは紙の角の欠損(Σδ = 2πχ)、こちらは泡の膜の曲率。折り紙と泡が同じ式で縛られている。
数値の一致も確かめた。相対誤差は 0.04% で、刻みを10倍細かくすると誤差が 1/10 になる(2.1×10⁻³ → 2.1×10⁻⁴ → 2.1×10⁻⁵)——つまり残っているずれは式のずれではなく、弧を折れ線で近似したぶんだった。
「平均6」が、育つ泡と縮む泡を釣り合わせている
ボロノイ図の平均隣接数は6である(発見9「平均6は平坦の特権」)。泡でも同じで、内部 144 セルの平均辺数は 6.014。すると 縮む側(5辺以下)42 個と育つ側(7辺以上)46 個がほぼ同数になる。「平均6」という平面の事情が、そのまま泡の生き死にの釣り合いになっていた。
時間が経つと泡は粗くなる(大きい泡だけが残る)。その理由もここにある: 縮んだ泡が消えると、隣の泡の辺の数が変わり、6辺だったものが7辺になって育ち始める。個々の泡の運命は辺の数だけで決まるのに、全体としては「大きいものが勝つ」という向きが出てくる。
どう作ったか
頂点を単位円上に等間隔に置き、各辺を「弦から δ = (2π/3 − (n−2)π/n)/2 だけ持ち上げた円弧」にすると内角がちょうど 120° になる(n=6 だけ δ=0=直線)。曲率の総量は弧を折れ線にして接線の回転を積む。Plateau の 120° は仮定せずに力の釣り合いを降下法で解いた。動かす計算(時間発展)は実装していない——確かめたのは静的な帳簿(∮κds)までで、dA/dt はそこからの帰結として述べている。機械検査は14件: ①δ の式で内角が厳密に 120°(n=3..20)②6辺だけ直線 ③3辺は外へ膨らみ9辺は凹む ④数値の内角 120°±0.015° ⑤∮κds の一致と刻みによる収束 ⑥6辺は厳密ゼロ ⑦面積の単調性 ⑧Plateau 120°(残差 10⁻³¹)⑨4面体角 arccos(−1/3) ⑩ボロノイの平均6と育つ/縮むの釣り合い ⑪出荷SVG2枚。
出典
- 数理
- J. Plateau (1873) の法則と、その数学的な証明 J. Taylor, "The structure of singularities in soap-bubble-like and soap-film-like minimal surfaces", Ann. of Math. 103 (1976)。面積の増減則は J. von Neumann (1952) と W. W. Mullins, "Two-dimensional motion of idealized grain boundaries", J. Appl. Phys. 27 (1956)。ここで機械検査したのは静的な恒等式 ∮κds = (π/3)(6−n) と2つの角度で、時間発展そのものは実装していない
- 生成
- generators/foam.js(弧多角形の構成・内角と曲率の総量の数値測定・面積・Plateau の角を張力の釣り合いから解く・4面体角・図2枚。依存ゼロ・乱数ゼロ。平均6の検査は generators/voronoi.js を借用)