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泡の法則

3辺から9辺までの泡を 120° の頂点で組み、辺の数と膜の曲がり方の関係を確かめた。

3辺から9辺までの泡を120度で組んだ図。5辺以下は外へ膨らみ、6辺は直線、7辺以上は内へ凹む
どの泡も頂点はきっちり 120°(Plateau の法則)。すると辺の数だけで形が決まってしまう。5辺以下は外へ膨らみ(縮む運命)、6辺はまっすぐ(動かない)、7辺以上は内へ凹む(育つ運命)。ビールの泡で小さい泡から消えていくのは、このためである

なにか

シャボンの泡が集まると、膜は必ず3枚ずつ 120°で出会う(Plateau の法則)。この作品では 120° を仮定せず、同じ張力の膜3枚が1点で釣り合う向きを解いた。答えは 120.000000°(残差 10⁻³¹)になった。3次元では辺が4本ずつ出会い、その角は arccos(−1/3) = 109.4712° になる(4方向の単位ベクトルの和がちょうどゼロ)。

そこから先が本題である。頂点が 120° に決まってしまうと、泡の輪郭が1周でどれだけ曲がるかは辺の数だけで決まる。式で書くと ∮κds = (π/3)(6 − n) である。曲率は膜が動く速さそのものなので(曲がっている膜は中心へ動く)、面積の増減も辺の数だけの関数になる。これが von Neumann の法則 dA/dt = (πM/3)(n − 6) である。

曲率の総量は、先に決まっている

辺の数に対する曲率の総量が一次関数になるグラフと、Plateauの120度・109.47度の図
点は弧に沿って接線が回った量を数値で積んだ値、線は (π/3)(6−n) である。6辺がちょうど境目で、そこだけ 0 になる(4×10⁻¹³)。右は Plateau の2つの角で、どちらも張力の釣り合いを解いた答えである

理由は帳簿である。1周すると接線は必ず 2π 回る。頂点1つで π/3(= 180°−120°)ぶん回るので、n 個の頂点で nπ/3 になる。残りを弧が受け持つから ∮κds = 2π − nπ/3 = (π/3)(6 − n) となる。設計の自由はどこにもない。

これは Resch パターンで見た「曲率は総量が先に決まっていて、設計の自由は配り方だけ」(発見13)と同じ帳簿である。あちらは紙の角の欠損(Σδ = 2πχ)で、こちらは泡の膜の曲率である。折り紙と泡が同じ式で縛られている。

数値の一致も確かめた。相対誤差は 0.04% で、刻みを10倍細かくすると誤差が10分の1になる(2.1×10⁻³ → 2.1×10⁻⁴ → 2.1×10⁻⁵)。つまり残っているずれは式のずれではなく、弧を折れ線で近似したぶんだった。

「平均6」が、育つ泡と縮む泡を釣り合わせている

ボロノイ図の平均隣接数は6である(発見9「平均6は平坦の特権」)。泡でも同じで、内部 144 セルの平均辺数は 6.014。すると 縮む側(5辺以下)42 個と育つ側(7辺以上)46 個がほぼ同数になる。「平均6」という平面の事情が、そのまま泡の生き死にの釣り合いになっていた。

時間が経つと泡は粗くなる(大きい泡だけが残る)。その理由もここにある。縮んだ泡が消えると、隣の泡の辺の数が変わり、6辺だったものが7辺になって育ち始める。個々の泡の運命は辺の数だけで決まるのに、全体としては「大きいものが勝つ」という向きが出てくる。

どう作ったか

頂点を単位円上に等間隔に置き、各辺を「弦から δ = (2π/3 − (n−2)π/n)/2 だけ持ち上げた円弧」にすると内角がちょうど 120° になる(n=6 だけ δ=0=直線)。曲率の総量は弧を折れ線にして接線の回転を積む。Plateau の 120° は仮定せずに力の釣り合いを降下法で解いた。動かす計算(時間発展)は実装していない。確かめたのは静的な帳簿(∮κds)までで、dA/dt はそこからの帰結として述べている。

→ ハニカム(同じ120°が「周長を最小にする」側から出てくる)

→ ボロノイ図(平均6の出どころ)

→ Resch パターン(曲率の総量が先に決まっている、紙の側の話)

出典

数理
J. Plateau (1873) の法則と、その数学的な証明 J. Taylor, "The structure of singularities in soap-bubble-like and soap-film-like minimal surfaces", Ann. of Math. 103 (1976)。面積の増減則は J. von Neumann (1952) と W. W. Mullins, "Two-dimensional motion of idealized grain boundaries", J. Appl. Phys. 27 (1956)。ここで確かめたのは静的な恒等式 ∮κds = (π/3)(6−n) と2つの角度で、時間発展そのものは実装していない
生成
generators/foam.js(弧多角形の構成・内角と曲率の総量の数値測定・面積・Plateau の角を張力の釣り合いから解く・4面体角・図2枚。依存ゼロ・乱数ゼロ。平均6の検査は generators/voronoi.js を借用)