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誘電破壊

雷の枝を、粒子ではなく電位の場から育てた。つまみの指数 η を 0 から 4 まで変えた4枚を並べた。

誘電破壊模型の4枚。上段左からη=0の丸い塊とη=1の雷の枝、下段はη=2の粗い枝とη=4のほぼ一本道
同じ600粒・同じ乱数の種で、変えたのは指数 η だけ(4枚は同じ縮尺)。上段左 η=0(縁のどこでも等確率=苔のような塊)・上段右 η=1(雷の枝=DLA と同じ形)・下段左 η=2・下段右 η=4(先端しか伸びず、ほぼ一本道)。焼けた順に藍から生成りへ塗った。次元は 1.93 → 1.60 → 1.17 → 0.92 と落ちていく

なにか

雷、コンセントの火花、アクリル板に高電圧をかけたときのリヒテンベルク図形、木を走る焼け跡は、どれも枝分かれして育つ。DLA(雷の枝)は粒子を歩かせて枝を作ったが、こちらは場を解く。

規則は2つしかない。①焼けた枝は導体だから電位0、遠くの縁は電位1、あいだはラプラス方程式 Δφ=0 を満たす。②枝の隣のマスは、そこの電位の勾配の η 乗に比例した確率で焼ける。この η がつまみになる。

η=1 は DLA と同じ形になる(拡散する粒子の到達確率=調和測度=電位の勾配、という一致)。η=0 にすると縁のどこでも等確率で、ただ太る塊になる(Eden 模型、苔のような形)。η を上げると勾配の大きい先端ほど選ばれやすくなり、枝分かれをやめて一本道へ向かう。

η を回すと次元が動く

ηフラクタル次元 D先端の数同じ600粒での半径見た目
01.9261818.7苔・丸い塊(面に近い)
11.60110135.1雷の枝(DLA と同じ)
21.1679851.2粗い枝・幹が目立つ
40.9172771.3ほぼ一本道(線に近い)

次元は親の作品と同じ物差し(質量-半径法)で測っている。1つのつまみで「面(2)」から「線(1)」までを連続に渡る。同じ600粒でも η が大きいほど遠くまで届く。枝分かれに粒を使わず、先端に全部つぎ込むためである。

種を3通り変えても順序は崩れない(D(η=0) > D(η=1) > D(η=2) が seed=7/21/99 すべてで成立)。

独立な2つの道が同じ次元を出した

この作品でいちばん確かめたかったのは、ここである。粒子を歩かせる DLA と場を解く DBM(η=1)はアルゴリズムに共通点がない(一方は乱数ウォーク、他方はラプラス方程式の緩和)。それでも、同じ物差しで測ると次のようになる。

粒子数粒子を歩かせる DLA場を解く DBM(η=1)差
600D = 1.636D = 1.6010.035
1500D = 1.700D = 1.6620.038

2つの道が同じところへ着く。これが「拡散する粒子の到達確率=電位の勾配」という一致を、目に見える形にしたものである。雷が枝分かれする理由と、金属が樹枝状に育つ理由は同じだった。

どう作ったか

1粒育つごとに場を作り直すのではなく、前の解から6回だけ SOR(過緩和つきのガウス・ザイデル法、ω=1.85)で追い込む。これで1粒ぶんの計算が格子1枚の数倍に収まる(161×161格子・600粒で約0.9秒)。枝に隣接する空きマスだけを候補表に持ち、電位の η 乗で重みづけて1つ選ぶ。乱数は自前の擬似乱数で、同じ種なら結果は完全に同じになる。

できた枝は、どの粒も種から連結していて、同じマスに二重に付いた粒はない。

→ DLA(雷の枝・粒子を歩かせる方=この作品の親)

→ 異方性 DLA(格子を替えると枝の向きが決まる・もうひとつの親戚)

→ 準結晶の上の雷(かけ算第14号・非周期の格子で育てたら)

出典

数理
L. Niemeyer, L. Pietronero, H. J. Wiesmann, "Fractal dimension of dielectric breakdown", Phys. Rev. Lett. 52, 1033 (1984)。DLA は T. A. Witten & L. M. Sander, Phys. Rev. Lett. 47, 1400 (1981)。η=0 の等確率成長は M. Eden (1961)
生成
generators/dbm.js(SOR によるラプラス場の逐次緩和・電位の η 乗で候補を選ぶ成長・先端数と回転半径の測定。次元は generators/dla.js の関数をそのまま使用=物差しを共有。依存ゼロ・乱数は自前 PRNG)