誘電破壊
雷の枝を、粒子ではなく電位の場から育てた。つまみの指数 η を 0 から 4 まで変えた4枚を並べた。
なにか
雷、コンセントの火花、アクリル板に高電圧をかけたときのリヒテンベルク図形、木を走る焼け跡は、どれも枝分かれして育つ。DLA(雷の枝)は粒子を歩かせて枝を作ったが、こちらは場を解く。
規則は2つしかない。①焼けた枝は導体だから電位0、遠くの縁は電位1、あいだはラプラス方程式 Δφ=0 を満たす。②枝の隣のマスは、そこの電位の勾配の η 乗に比例した確率で焼ける。この η がつまみになる。
η=1 は DLA と同じ形になる(拡散する粒子の到達確率=調和測度=電位の勾配、という一致)。η=0 にすると縁のどこでも等確率で、ただ太る塊になる(Eden 模型、苔のような形)。η を上げると勾配の大きい先端ほど選ばれやすくなり、枝分かれをやめて一本道へ向かう。
η を回すと次元が動く
| η | フラクタル次元 D | 先端の数 | 同じ600粒での半径 | 見た目 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 1.926 | 18 | 18.7 | 苔・丸い塊(面に近い) |
| 1 | 1.601 | 101 | 35.1 | 雷の枝(DLA と同じ) |
| 2 | 1.167 | 98 | 51.2 | 粗い枝・幹が目立つ |
| 4 | 0.917 | 27 | 71.3 | ほぼ一本道(線に近い) |
次元は親の作品と同じ物差し(質量-半径法)で測っている。1つのつまみで「面(2)」から「線(1)」までを連続に渡る。同じ600粒でも η が大きいほど遠くまで届く。枝分かれに粒を使わず、先端に全部つぎ込むためである。
種を3通り変えても順序は崩れない(D(η=0) > D(η=1) > D(η=2) が seed=7/21/99 すべてで成立)。
独立な2つの道が同じ次元を出した
この作品でいちばん確かめたかったのは、ここである。粒子を歩かせる DLA と場を解く DBM(η=1)はアルゴリズムに共通点がない(一方は乱数ウォーク、他方はラプラス方程式の緩和)。それでも、同じ物差しで測ると次のようになる。
| 粒子数 | 粒子を歩かせる DLA | 場を解く DBM(η=1) | 差 |
|---|---|---|---|
| 600 | D = 1.636 | D = 1.601 | 0.035 |
| 1500 | D = 1.700 | D = 1.662 | 0.038 |
2つの道が同じところへ着く。これが「拡散する粒子の到達確率=電位の勾配」という一致を、目に見える形にしたものである。雷が枝分かれする理由と、金属が樹枝状に育つ理由は同じだった。
どう作ったか
1粒育つごとに場を作り直すのではなく、前の解から6回だけ SOR(過緩和つきのガウス・ザイデル法、ω=1.85)で追い込む。これで1粒ぶんの計算が格子1枚の数倍に収まる(161×161格子・600粒で約0.9秒)。枝に隣接する空きマスだけを候補表に持ち、電位の η 乗で重みづけて1つ選ぶ。乱数は自前の擬似乱数で、同じ種なら結果は完全に同じになる。
できた枝は、どの粒も種から連結していて、同じマスに二重に付いた粒はない。
出典
- 数理
- L. Niemeyer, L. Pietronero, H. J. Wiesmann, "Fractal dimension of dielectric breakdown", Phys. Rev. Lett. 52, 1033 (1984)。DLA は T. A. Witten & L. M. Sander, Phys. Rev. Lett. 47, 1400 (1981)。η=0 の等確率成長は M. Eden (1961)
- 生成
- generators/dbm.js(SOR によるラプラス場の逐次緩和・電位の η 乗で候補を選ぶ成長・先端数と回転半径の測定。次元は generators/dla.js の関数をそのまま使用=物差しを共有。依存ゼロ・乱数は自前 PRNG)