双曲ボロノイ — 「平均6」は平坦の特権だった
なにか
見取り図の発見2は「平面をどう分割しても、隣接数の平均は6に近づく」だった。では平面でなかったら? レタスの縁やサンゴのように波打つ負曲率の面にキリンの網目を描いたら、平均は6のままなのか——答えは否。ガウス・ボネの定理から、曲率−1の世界では平均隣接数 = 6 + 3×(平均セル面積)/π と正確に書き換わる。セルが大きいほど、部屋は多角形になる。
検算がひとつ嬉しい: 双曲タイリング {7,3}(第17作)は七角形の面積がちょうど π/3 なので、6 + 3·(π/3)/π = 7——七角形が3枚ずつ、という既知の事実がこの式から厳密に出てくる。本作の実測でも平均隣接数 6.58 に対し理論値 6.60(差0.02)。
どう作ったか
鍵は Klein 円板模型。この模型では測地線が直線になるだけでなく、2点の双曲二等分線も直線になる(双曲面模型で ⟨X, P−Q⟩=0 が座標に線形だから)。つまりユークリッドのボロノイと同じ「半平面で削る」だけで双曲ボロノイが作れる。描画は等角なポアンカレ円板に写し直した。機械検査は6件: {7,3} での厳密検算・定理との一致(0.1以内)・全セル面積が正で有限・母点包含・対照実験=母点を1/12に縮めて曲率を実質消すと平均が6に退化・SVG実物。
母点くらべ — {7,3} が返ってくる
母点を替えて定理の顔ぶれを見た。①{7,3} の中心: ボロノイが元の七角形タイリングを厳密に再現する(辺数7・面積π/3)。第17作から中心を取り出し、第34作に食わせると第17作が返ってくる——かけ算の環がひとつ閉じた。②擬似乱数の母点(双曲面積で一様・種固定): 黄金角のときと同じく平均隣接数 6.54 ≈ 6+3a/π = 6.55。定理は母点の置き方に依らない。
出典
- 数理
- ガウス・ボネの定理(測地多角形の面積 = (k−2)π − 内角和)。Klein 模型で双曲ボロノイが線形になることは Nielsen & Nock (2010) が整理。組み合わせは本ギャラリーのかけ算第7号
- 生成
- generators/hypvoronoi.js(母点600・双曲半径4.8・依存ゼロ)