小惑星帯の隙間は木星との整数比に開く
火星と木星のあいだを回る小惑星 90 万個を、軌道の大きさで並べて数えた。数が落ちる細い谷がいくつもあり、そのうち 3 つの谷の中心は、公転の周期が木星のちょうど 1/3・2/5・3/7 になる位置と 0.1% 以内で重なった。周期が 2/3 になる所では、逆に小惑星が集まって山になる。
なにか
D. カークウッドは 1867 年の本『Meteoric Astronomy』の第 13 章で、当時知られていた小惑星 91 個の距離と周期を表にした。周期が木星の 1/2・1/3・2/5・2/7・3/7・4/9 になる距離を 3.2776・2.5012・2.8245・2.2569・2.9574・3.0299 と書き、隣り合う小惑星のあいだでいちばん広い 3 つの間隔が、その距離に当たると指摘している。その距離を回る粒はいつも軌道の同じ所で木星と並ぶので離心率が大きくなり、軌道は土星の環の隙間のように空になる、と説明している。
今は 100 万個を超える小惑星の軌道が公開されている。1867 年の 91 個と同じ問いを、今の数で確かめた。
データと 2 つの出し方
データは 2 つ使った。1 つ目は JPL の SBDB から 2026 年 9 月 29 日に取った、番号の付いた小惑星 895,910 個のある時刻の軌道(接触軌道要素)である。2 つ目は AstDyS の合成固有要素 1,152,208 個で、長い時間の揺れをならした軌道の大きさ・離心率・平均運動が載っている(見出しは Knežević 2024 年 6 月)。こちらにトロヤ群は入っていない。
谷の位置は 2 通りに出した。経路 A はデータで、軌道の大きさ a のヒストグラムから谷を探し、谷の両側の肩の高さの半分を切る 2 点の中点を中心とした。経路 B はケプラーの第 3 法則で、小惑星が p 回まわるあいだに木星が q 回まわる位置を a = aJ(q/p)2/3(1 + mJ/M☉)−1/3 と置いた。木星の a = 5.20288700 au は JPL の惑星の近似要素の表 1、質量比 mJ/M☉ = 1/1047.35 は同じく JPL の定数表(DE440)から取った。
経路 B は、木星の a を使わない形でも出した。平均黄経の変化 3034.74612775 度/世紀を木星の平均運動とし、太陽の GM から a = (GM☉/n2)1/3 を解く。2 つの出し方の差はどの共鳴でも 19.3 ppm で、木星の a に直すと 5.202987 au になった。
3:1・5:2・7:3 の谷は 0.1% 以内に落ちる
見立ての 1 つ目は、谷の中心は 3:1・5:2・7:3 では共鳴の位置と 0.1% 以内で合い、2:1 は谷の外側がなだらかなので 1% 以上ずれる、だった。接触要素を 0.002 au のビンで数えると、谷の中心は 3:1 で 2.4991 au(−0.056%)、5:2 で 2.8257 au(+0.073%)、7:3 で 2.9577 au(+0.037%)になり、3 つとも 0.1% 以内に入った。固有要素でも −0.057%・+0.116%・+0.052% だった。2:1 の中心は 3.2690 au で −0.232% しかずれず、1% 以上という見立ては外れた。
ただし 2:1 の谷は底が平らで、中心の値が落ち着かない。ビン幅を 0.0005 au から 0.01 au まで振ると、3:1・5:2・7:3 の中心の動きは 0.0011・0.0020・0.0008 au に収まったが、2:1 は 3.2681〜3.2886 au と 0.0205 au 動いた。0.002 au 以上は動かないという見立ての 5 つ目は、3 つの谷で当たり、2:1 で外れた。
次数の低い共鳴ほど谷が広い
見立ての 2 つ目は、谷の幅は共鳴の次数 p − q が小さいほど広く、2:1 > 3:1 > 5:2 > 7:3 の順になる、だった。肩の半分の高さで測った幅は、2:1 が 0.0900 au、3:1 が 0.0483 au、5:2 が 0.0315 au、7:3 が 0.0092 au で、見立ての順に並んだ。7:3 は底が肩の 0.24 倍までしか下がらない浅い谷で、ほかの 3 つは 0.02 倍以下まで下がる。
見立ての 3 つ目は、離心率が大きいほど谷は広く、0.2 ≤ e < 0.3 の幅は e < 0.1 の 2 倍以上になる、だった。3:1 の幅は 0.0311 au から 0.0551 au へ 1.77 倍に広がり、5:2 は 0.0407 au から 0.0321 au へ 0.79 倍に狭まった。2 倍には届かず、5:2 は向きも逆で、外れである。e が 0.3 を超える組は 14,764 個しかないが、そこでは 3:1 が 0.0765 au、5:2 が 0.0550 au と、どちらも最も広くなった。
周期の比で見ても、谷の半分は p/q に落ちる
見立ての 4 つ目は、固有要素の平均運動を木星の平均運動で割った比 n/nJ で数えても、谷の中心は p/q と 0.1% 以内で合う、だった。この出し方はケプラーの法則を通らない。谷の中心は 3:1 で 2.9974(−0.086%)、7:3 で 2.3320(−0.055%)と合ったが、5:2 は 2.4934(−0.265%)、2:1 は 2.0248(+1.239%)で外れた。見立ての半分が当たった。
見立てになかったこととして、固有要素では共鳴の中に小惑星が細く集まっていた。ヒルダ群のある 3:2 では、3.955〜3.975 au の 0.02 au の幅に 5,353 個が入る。2:1 の谷の真ん中にも 3.270〜3.280 au に 1,421 個が立つ。n/nJ で見ると、この 2 つの集まりの頂は 1.5013 と 2.0019 で、p/q より 0.087%・0.095% 大きい所にそろって立った。このずれの原因は、この作品では確かめていない。
位置を知らずに探しても、谷は共鳴に当たる
見立ての 6 つ目は、共鳴の位置を使わずにヒストグラムの谷を機械で探すと、底が肩の 1/3 以下の深い谷は全部、p が 11 以下で次数 4 以下の共鳴の 0.3% 以内にある、だった。接触要素で見つかった深い谷は 5 つで、3:1(−0.056%)・5:2(+0.073%)・2:1(−0.039%)・9:5(−0.234%)の 4 つは 0.3% 以内に入り、いちばん内側の 2.0515 au の谷は 4:1 から −0.612% 離れていた。固有要素では 4:1 が +0.027% と合った代わりに、2:1 と 9:5 が外れて 5 つ中 3 つだった。全部という見立ては外れた。
比べる相手の共鳴は 2.0〜3.6 au に 7 個あり、その ±0.3% の範囲を足しても区間の 7.8% にしかならない。でたらめな位置に谷を 5 つ置いて 4 つが当たる見込みは小さい。7:3 は浅いので、この探し方では拾えなかった。
3:2 と 1:1 は山になる
見立ての 7 つ目は、3:2(ヒルダ群)と 1:1(トロヤ群)は谷でなく山になり、山の頂は共鳴の位置と 1% 以内にある、だった。3:2 の位置 3.9693 au に対して接触要素の山の頂は 3.9623 au(−0.18%)、1:1 の位置 5.2012 au に対して 5.2012 au(+0.00%)で、見立てどおりである。3.7〜4.2 au には 4,081 個、4.9〜5.5 au には 10,641 個がいて、2:1 の外側の 3.58〜3.88 au にはほとんどいない。4:3 のチューレ群は 4.2〜4.4 au に 27 個だった。
カークウッドが 4/9 の距離とした 9:4(3.0291 au)には、ごく浅いくぼみがあった。0.002 au ごとの数は 3.029 au で 1,231 個まで下がり、前後 0.01〜0.03 au の平均 1,687 個の 0.73 倍になる。
1867 年の 91 個でも、谷の場所は見えていた
カークウッドは 2.26〜3.16 の 86 個を 0.1 刻みで数え、6・19・4・16・16・8・4・3・10 として、2.26〜2.36・2.46〜2.56・2.86〜3.06 を極小とした。見立ての 8 つ目は、このうち 2.46〜2.56 と 2.86〜3.06 は今の 90 万個でも極小で、2.26〜2.36 は今は極小にならない、だった。今の接触要素で同じ区切りを数えると 93,870・91,875・48,871・123,412・105,157・60,493・31,855・72,734・114,475 で、極小は 2.46〜2.56 と 2.86〜2.96 だった。2.26〜2.36 は極小でなく、見立てどおりである。
1867 年の表で間隔の広い 3 つは、Leucothea と Pales のあいだ 0.0785(9:4 と 11:5 を含む)、Leto と Terpsichore 0.0755(5:2)、Thetis と Hestia 0.0525(3:1)で、本の記述と一致した。表の 91 行のうち 88 行は、周期が 365.2564 a1.5 日と 0.2% 以内で合う。いちばん外れる Thalia は +0.77% だった。この行だけ、周期と距離の組がほかの行と同じ式に乗らない。
本の共鳴の距離から木星の a を逆算すると、6 つとも 5.2026〜5.2029 au に入る。6 つの距離は、今の木星の a で質量比を入れない式 aJ(q/p)2/3 の値と 0.0002 以内で合う。同じ章で、1/3 の距離は p.106 では 2.5012、p.110 の文では 2.4935 と書かれている。archive.org のスキャンの文字でも同じだった。
機械で分かる範囲と、目でしか分からない範囲
機械で確かめたのは、2 つの出し方の共鳴の位置が 19.3 ppm で合うこと、谷の中心・幅・深さ、ビン幅と離心率で谷がどう変わるか、共鳴を知らずに探した谷がどの共鳴に近いか、山の頂の位置、1867 年の表の数え直しである。
谷がなぜ開くか(共鳴の中で離心率が大きくなり、火星や木星に近づいて外へ出る筋道)は、この作品では計算していない。谷の中心は「肩の半分」という決め方に左右され、2:1 のように底が平らな谷では決め方しだいで 0.02 au 動く。
どう作ったか
生成器は generators/kirkwood.js である。2 つのデータを 0.0005 au のビンで数えて集計だけを残し、谷を探すときは 0.002 au に束ねて 0.004 au の幅でならした。谷は、ならした数の局所最小で、左右 0.06 au(a に比例させた)の肩の低いほうの 1/3 以下まで下がる所とした。共鳴ごとの谷を測るときは 1/2 以下まで拾った。カードは接触要素の a と e を 0.005 au × 0.01 の格子で数え、数の平方根を 7 段の藍の濃さにした。
確かめていないこと。AstDyS の合成固有要素の計算の手順の論文は開いていない。カークウッドがこの説を最初に発表した 1866 年の学会の記録も開いていない。固有要素の平均運動が p/q より 0.09% 大きい所に集まる理由は調べていない。
出典
- 本
- D. Kirkwood『Meteoric Astronomy: A Treatise on Shooting-Stars, Fire-Balls, and Aerolites』Philadelphia: J. B. Lippincott, 1867。第 13 章「The Asteroid Ring between Mars and Jupiter」の共鳴の距離(p.106)、91 個の表、表(pp.107–108)、0.1 刻みの数といちばん広い 3 つの間隔(p.109)、1/3 の距離を 2.4935 とする文(p.110)を、Project Gutenberg #43715 の電子版と archive.org の meteoricastro00kirkrich のスキャンで読んだ
- データ
- JPL Small-Body Database Query API(ssd-api.jpl.nasa.gov)。番号の付いた小惑星 895,910 個の接触軌道要素を 2026 年 9 月 29 日に取った
- データ
- AstDyS-2 の合成固有要素 all.syn(newton.spacedys.com/~astdys2)。見出し「Knezevic June 2024」、1,152,208 個を 2026 年 9 月 29 日に取った
- 定数
- JPL「Approximate Positions of the Planets」表 1(木星の a と平均黄経の変化)、JPL「Astrodynamic Parameters」(太陽の GM、木星系の GM は DE440・Park ほか 2021 AJ 161:105、1 au = 149597870700 m)
- 数理
- 共鳴の位置の 2 つの出し方、谷の探し方と測り方は、自分で組んで数値で確かめた
- 親戚
- アナレンマ・原子核の魔法数がそろう細い帯・元素の多さのギザギザ
- 生成
- generators/kirkwood.js(kirkwood.svg 表紙・kirkwood-book.svg 帳簿)。集計は generators/data/kirkwood/hist.json、数値は facts.json に書き出した