← ギャラリーへ

対数螺旋

オウムガイの殻を、1周で3倍に育つ対数螺旋として描いた。下の図では角度と成長率を動かして、回すことと拡大することが同じ操作になるのを確かめられる。

オウムガイの殻の断面。対数螺旋に沿って小部屋が並び、最後に大きな住房が開く
オウムガイの殻の断面の模式。r=ae^{bθ}、1周で3倍(実物のオウムガイとほぼ同じ成長率)。小部屋は成長の記録で、生体は最後の広い部屋に住む

なにか

貝は家を建て替えられない。体が大きくなっても引っ越せないから、入口に建て増しを続けるしかない。そのとき「今の家と同じ形のまま大きくしたい」という一点だけを要求すると、答えは対数螺旋 r=ae^{bθ} ただひとつに決まる。この曲線の本質は、回して見ても拡大して見ても同じ曲線になるところにある。回転と拡大が同じ操作になる、連続の自己相似だ。オウムガイの殻、台風の雲、銀河の腕、ロマネスコの突起の並びがみな同じ曲線なのは、どれも「今ある形を保ったままスケールだけ変わる成長」だからである。

もうひとつの顔は等角性である。曲線上のどこでも、中心から引いた線と進行方向のなす角が同じになる(この実装では 80.1°)。ハヤブサが獲物めがけて螺旋を描いて降りるのは、目を動かさずに獲物を視界の同じ角度に保って飛ぶと、軌道が自動的に対数螺旋になるからだ。

自分で動かす

下の絵は、あらかじめ描いた絵の切り替えではなく、ページを開いたその場で上の図と同じ計算をしている。回す角を動かすと、茜色の弧がいつも元の螺旋の上に乗る。回転と拡大が同じ操作だというのは、この重なりのことである。

オウムガイの実測は約3倍である。1 に近づけるほど円に近づき、大きくするほど開いた渦になる。

藍の弧を α 回して e^{bα} 倍にしたものが、茜の弧である。拡大率はこちらで選べず、角度が決まれば倍率も決まる。

成長率 b
—
等角(閉じた式)
—
等角(実測のばらつき)
—
回転=拡大のずれ
—

スライダーで決めた成長率の対数螺旋と、回して拡大した弧が元の螺旋に重なる図

倍率を 1 に近づけていくと、等角は 90° に近づいて円になる。円は「回しても大きさが変わらない」対数螺旋の端っこで、そこだけ拡大と回転が切り離せる。フィロタキシスやヒマワリの螺旋は点の並びが作る見かけの螺旋で、こちらは曲線そのものが螺旋である。

どう作ったか

成長率はオウムガイの実測に合わせて、1周で3倍(b=ln3/2π)にした。α 回して ebα 倍にした曲線は、元の曲線と誤差 10⁻¹⁵ で重なる。中心からの線と進む向きのなす角はどの点でも同じで、曲率半径は中心からの距離に比例する(比例定数は √(1+b²))。隔壁と住房の描き分けは模式で、数理の主役は殻の螺旋そのものである。

→ フィロタキシス(同じ「螺旋」でも出どころが違う=とびとびの回転)

→ 見取り図(この作品で「自己相似の3つの顔」が揃った)

出典

数理
対数螺旋(equiangular spiral): J. Bernoulli が "eadem mutata resurgo"(形を変えて甦る)と墓碑に刻んだ古典。貝殻の成長モデルは D'Arcy Thompson, "On Growth and Form" (1917) ほか
生成
generators/logspiral.js(1周3倍・3.75周・隔壁は模式)。対数螺旋の計算は gallery/assets/logspiral-live.js にまとめ、上の図と動く図の両方がこれを使っている