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かけ算第25号|ポアソン × ボロノイ × 泡

「均等さ」を実空間で測る物差しと逆空間で測る物差しは、点集合を同じ順に並べるとは限らない。

ポアソン・ディスクの点をボロノイ分割した図。6角形が生成り、5角形が桃、7角形が淡い藍で塗り分けられている
ポアソン・ディスク(最小距離 0.7a)の点をボロノイで分けた。生成りが 6 角形、桃が 5 角形、淡い藍が 7 角形、濃い藍と茜がそれより多いか少ないもの。密度のむらはほとんどないのに、セルの形はよく乱れている。

なにか

ポアソン・ディスクの作品で、「均等(低い波数の構造因子 S が小さい)」と「規則(ブラッグ点が立つ)」は別の量だと書いた。一方でボロノイ詰まり方の帳簿では、乱れをセルの辺の数の分散 μ₂ という実空間の量で測っている。

どちらも「どれくらい整っているか」の物差しである。同じものを測っているのか。同じ点集合に両方を当てて突き合わせた。

まず窓を捨てる

有限の窓で切り取った点集合の S を測ると、低い波数に窓の縁の寄与が乗る。実際、完全な六方格子でさえ S が 0.10 くらいに見えた。ポアソンの作品で踏んだ「低波数の窓に q → 0 を含めると立ち上がりを拾う」という罠と同じ型で、今度は窓そのものが原因である。この下駄をつけたまま比べると、六方格子とフィロタキシスの区別さえつかない。

そこで点集合を周期境界(トーラス)で作り直した。S は箱の許す波数 q = 2π(nx/L, ny/H) だけで測る。ボロノイのほうも 3×3 に敷き詰めて中央の箱に重心が入るセルだけ数えるので、どちらの物差しにも縁が入らない。道具の答え合わせとして、周期の六方格子で μ₂ = 0 ちょうど(480 セルすべて 6 角形)・S = 6×10⁻³⁰ になることを確かめた。

2 つの物差しは順序を入れ替える

横軸が低波数のS、縦軸がμ₂の散布図。六方格子から乱数まで伸びるゆらぎの道の曲線と、その左下から外れた位置にあるポアソン・ディスクの四角い点
横軸が低波数の S(密度のゆらぎ)、縦軸が μ₂(セルの辺の数の分散)。藍の曲線は六方格子にゆらぎを入れていったときの道で、右上の端が乱数。茜の四角がポアソン・ディスクで、道の下に外れている。右は 3 つの点集合のボロノイ図。

六方格子に σ のゆらぎを入れて 0 から大きくしていくと、両方の物差しが単調に上がり、乱数(μ₂ 1.79・S 1.00)に行き着く。この族の中では 2 つの物差しは同じ順序を与える。片方を測ればもう片方も分かる。

ところがポアソン・ディスクはこの道の上に乗らない。S は 0.089 で、ゆらぎでいえば σ ≈ 0.13a のあたり。そのときゆらぎ格子の μ₂ は 0.2 ほどしかないのに、ポアソン・ディスクの μ₂ は 0.655 で 3 倍以上ある。逆から見れば、μ₂ が同じ 0.66 になるゆらぎは σ ≈ 0.2a で、その S は 0.194。ポアソン・ディスクの S はその半分以下である。

言い換えると、同じだけ密度が均等な 2 つの撒き方を比べたとき、ポアソン・ディスクのほうがセルの形はよほど乱れている。逆に同じだけセルが乱れている 2 つを比べれば、ポアソン・ディスクのほうが密度は均等になる。「均等さ」は 1 つの数では表せない

→ ポアソン・ディスク(均等と規則は別の量)

→ 詰まり方の帳簿(Lewis と Aboav–Weaire)

→ ボロノイ図(平均 6 の出どころ)

ポアソン・ディスクは最小距離を変えても同じところにいる

最小距離 r を 0.55a から 0.9a まで振ると、点の数は 868 個から 321 個へ 2.7 倍も変わる。それなのに S は 0.086 から 0.091、μ₂ は 0.59 から 0.75 の狭い範囲に留まった。散布図の上ではほとんど同じ 1 点に重なる。

Bridson の手順は「最小距離 r を守りながら、置けなくなるまで置く」だけなので、r を変えても出来上がりを r で測り直せば同じ状態になる。ゆらぎ格子のように連続的に乱れ具合を選べる族ではなく、ひとつの決まった状態を作る手順なのである。

⟨n⟩ はどの点集合でも厳密に 6.000 になった。周期境界にはオイラー標数 0 のトーラスの帳簿が効くので、平面の窓で測ったときのような 5.9 前後のずれが出ない。詰まり方の帳簿で「有限の網では内側の ⟨n⟩ が 5.7〜5.8 になる」と書いた縁の効果が、ここでは完全に消えている。μ₂ の値は点数 480 の 1 面ぶんで、種を変えれば 1 割ほど動く。ポアソン r=0.9a の μ₂ が他より大きく出ているのは点数が 321 と少ないためで、この差は誤差の範囲にある。

どう作ったか

generators/poisson-order.js。周期境界の三角格子・ゆらぎ・乱数・ポアソン・ディスク(Bridson を最小像距離で書き直した)を作り、S は箱の許す波数だけで、ボロノイは 3×3 に敷いて中央の箱だけで測る。セルの帳簿は cellbook の cellBook をそのまま呼んでいる。機械検査は 10 件。周期の六方格子で μ₂ = 0 ちょうどかつ全セルが 6 角形、その S が 10⁻²⁰ より小さい、⟨n⟩ がどの点集合でも 6 との差 10⁻¹² 未満、ゆらぎ σ を上げると μ₂ も S も単調に増える、乱数が道の端(S ≈ 1)に来る、ポアソン・ディスクは同じ S のゆらぎ格子より μ₂ が 2 倍以上大きい、同じ μ₂ で比べると S がゆらぎ格子の 7 割より小さい、r を 0.55a〜0.9a に振っても S と μ₂ がほとんど動かない、出荷 SVG 2 枚。

出典

数理
R. Bridson (2007)(ポアソン・ディスク)/G. Voronoi (1908)/F. T. Lewis (1928)・D. A. Aboav (1970)・D. Weaire (1974)(セルの帳簿)。低波数の S が小さい点集合を hyperuniform と呼ぶ分類があると聞くが、その定義とここで測った量の対応は照合していない。数字はすべて自分の周期境界の計算で測った
親戚
ポアソン・ディスクボロノイ図詰まり方の帳簿距離を変えたボロノイ
生成
generators/poisson-order.js(poisson-order.svg ポアソンのボロノイ・poisson-order-book.svg 散布図と表)