かけ算第50号|回りながら縮む三角形と六角形 × 籠目 × ハニカム
回りながら縮む多角形を、布に刷る柄にする
回りながら縮む三角形と六角形の図案を、生地に刷る前提で見直した。柄の繰り返しの単位は 4 つの敷き詰めとも段ごとに半分ずらす並べ方になり、ずらしても頂点は 2×10⁻¹⁵ 以内で重なった。ところが籠目・三角・六角の単位は縦横の比が √3/2 で、正方形の画素ではどこかで必ずずれる。ずれの小さい画素数を探すと、近似するべき数は √3/2 ではなく √3 だった。入れ子は中心へ向かって無限に細くなるので、刷れる太さで打ち切る段数を式にした。段数がいちばん多くなるのは、t の中ほどではなく、刷れる下限のおよそ e 倍の小さな t だった。
なにか
正 n 角形の各辺を t : (1 − t) に分ける点を結ぶと、少し小さく少し回った正 n 角形ができる。これを繰り返した入れ子を敷き詰めに並べ、隣のタイルと逆向きに回すと、縞がタイルの境目を越えて続く。ここまでは第48号で確かめた。
この号では、それを生地の柄として扱う。見たのは 3 つである。柄の繰り返しの単位(この記事ではリピートと呼ぶ)が継ぎ目なしに並ぶか。色は何色か(版で刷るなら 1 色に版が 1 枚要る)。細すぎて刷れない所はどこか。並べ方の名前は 2 つ使う。ハーフブリックはリピートを段ごとに横へ半分ずらす並べ方(レンガ積み)で、ハーフドロップは列ごとに縦へ半分ずらす並べ方である。
刷れる太さには目安が要る。ここでは 1 辺 a = 30 mm、刷れる最小の太さ w = 0.5 mm と置いた。1 辺は出典のない決めた値である。表には w = 0.3 mm と 1 mm も並べた。
(2026-09-25 追記)太さ 0.5 mm を、刷り屋が公開している入稿の目安と比べた。調べる前の見立ては「0.5 mm は布のシルクスクリーンかインクジェットの目安に入る」だった。1 つ目は、販促品の通販サイト「販促スタイル」(株式会社トランス)の「印刷方法ごとの線幅の目安について」(2025-07-01 更新)である。布へのシルク印刷の推奨の最小線幅と最小ヌキ幅は、コットンなどで 0.5 mm と 1 mm、ポリエステル・ナイロンでも 0.5 mm と 1 mm になっている。キャンバスは 0.7 mm と 1.2 mm、手ぬぐい(顔料)やタオルは 2 mm と 2 mm と太い。布へのインクジェットは 0.3 mm と 0.5 mm、刺繍は 1.5 mm と 1.5 mm である。ヌキ幅は、刷らずに地を見せる部分の幅のことである。2 つ目の経路は Transfer Express のページである(2011-08-09 公開・2023-10-10 更新)。題は「Art Detail Guidelines for Custom Screen Printed Transfers」。衣類に熱で貼るシルクスクリーンの転写で、刷る線は 0.012 インチ(0.30 mm)、地を見せる部分は 0.04 インチ(1.02 mm)を勧めている。見立ては当たった。0.5 mm は、布のシルク印刷の線の目安と、布のインクジェットのヌキの目安にちょうど重なる。ただし、生成の部分を刷らずに生地の地で出すと、その部分はヌキになる。入れ子の縞は色が段ごとに入れ替わるので、細い角は生成の側にも出る。シルク印刷ならヌキの 1 mm が効くので、表の w = 1 mm の列(三角形 6 段・正方形 11 段・六角形 19 段が最大)を見ることになる。インクジェットなら線 0.3 mm・ヌキ 0.5 mm なので、本文の w = 0.5 mm の値がそのまま使える。どちらも目安で、商品ごとの指定が優先すると両方のページに書いてある。表の値は出し直していない(0.3・0.5・1 mm はもとから並べていた)。
(2026-09-25 追記)織り(ジャカード)の目安も探した。1 つ目は、画像から布を織るサービスの WOVNS(米国)の「Design」の質問集である(ページに日付の記載なし)。画像の 1 画素が、経糸 1 本と緯糸 1 本の交わりにあたる。品質は 2 つある。Divan は 177 dpi で、幅 2400 画素が 13.5 インチになる。Talma は 84 dpi で、幅 3984 画素がおよそ 47 インチになる。線の太さは 4〜10 画素より細くしないよう勧めていて、Divan では 0.57〜1.44 mm、Talma では 1.21〜3.02 mm にあたる。細い線の多い図案には、太さを変えた 1 ヤードの試し織りを勧めている。2 つ目の経路はタオルのジャカードである。今治のタオル会社、新居田物産株式会社の記事がある(2025-02-05 公開・2025-11-04 更新)。パイルのある上げ落ち・毛違いの織りには 3 mm 以上、パイルのない平らなフラット織には 1 mm の線幅を挙げている。タオルの通販「いとへん」の上げ落ちジャガード織のページ(2014-12-02 公開・2022-09-30 更新)は、4 mm 以上を勧め、細い線は 1 mm 以上が必要と書いている。織りの細い線の目安は、平らな布で 0.6〜1.4 mm、タオルで 1〜4 mm になり、刷る場合の線 0.3〜0.5 mm より太い。表では w = 1 mm の列がいちばん近い。Talma の 4 画素(1.21 mm)を最小の太さにすると、段数の最大は三角形 5・正方形 9・六角形 16 段になる。1 mm の列の 6・11・19 段より少ない。これは生成器の式で出した値で、表には載せていない。
リピートはずらしても重なる
図案は 6 枚作った。A は籠目の t = 0.12、B は籠目の t = 0.3、C は三角の t = 0.15、D は正方の t = 0.12 で、どれも隣のタイルと逆向きに回した。E と F は六角を同じ向きに敷き、E は t = 0.5、F は t = 0.3 にした。
見立ては「格子のベクトルでずらすと重なり、半分のベクトルでは重ならない。4 つともハーフブリックになる」だった。当たった。格子のベクトルは 1 辺 1 で、籠目 (2, 0)・(1, √3)、三角 (1, 0)・(1/2, √3/2) である。正方の交互は (2, 0)・(1, 1)、六角は (√3, 0)・(√3/2, 3/2) になる。
確かめは 2 通りで行った。1 つは、タイルと格子のベクトルだけずらしたタイルで、刷る段までの入れ子の頂点を比べるやり方である。6 枚とも、ずれの最大は 2×10⁻¹⁵ 以下だった。もう 1 つは、でたらめに選んだ 3,000 点の色を、ずらした点の色と比べるやり方である。6 枚とも、2 本のベクトルで 6,000 組がすべて一致した。半分のベクトルでずらすと、6 枚で 2,752〜3,980 組が一致しなかった。これより小さい送りでは繰り返さない。
4 つともリピートは格子の 1 本目のベクトルを横幅にした長方形で、段ごとに横へ半分ずれる。籠目は 2 × √3、三角は 1 × √3/2、正方の交互は 2 × 1、六角は √3 × 3/2 になる。正方の交互は、列ごとに縦へ半分ずらす 1 × 2 のハーフドロップとも読める。色は、籠目が藍・茜・生成の 3 色、ほかは 2 色だった。
画素のずれは √3 の近似分数で小さくなる
籠目・三角・六角のリピートは、縦横の比がどれも √3/2 になる。見立ては「正方の交互は整数の画素で正確に繰り返せ、籠目・三角・六角はどこかで必ずずれる。ずれの最も小さい画素数は √3/2 の連分数の近似分数から出る」だった。前半は当たり、後半は外れた。
確かめには、リピートを横 W・縦 H 画素で描いて 2 × 2 に並べた絵と、同じ範囲を直接描いた絵を比べた。正方の交互は 128 × 64 画素で、32,768 画素すべてが一致した。籠目 B は縦を丸めただけの 192 × 166 画素だと、1 段ごとに縦が 0.2769 画素ずれ、127,488 画素のうち 1,836 画素が違った。柄を縦に 0.167% 縮めて送りをちょうど 166 画素に合わせると、違う画素は 0 になる。代わりに柄がそれだけ縦につぶれる。
外れたのは近似分数の取り方である。段ごとに半分ずらすには、横の画素数が偶数 2m でなければならない。すると縦との比 H/2m ≈ √3/2 は H/m ≈ √3 と同じになり、近似するべき数は √3 になる。√3/2 の近似分数 84/97 を 2 倍した 194 × 168 画素では 1 段のずれが 0.0089 画素で、違う画素は 130,368 画素のうち 48 画素だった。√3 の近似分数 97/56 からの 112 × 97 画素は 1 段のずれが 0.0052 画素で、43,456 画素のうち 26 画素だった。画素が少ないのに、ずれは小さい。横を偶数で 2〜1,400 画素まで総当たりすると、ずれの最小を更新する横は 2・6・8・22・30・82・112・306・418・1,142 画素だった。これは √3 の近似分数の分母を 2 倍した値と一致する。
1 段のずれは |H − m√3| = |H² − 3m²|/(H + m√3) と書ける。√3 の近似分数では H² − 3m² が 1 か −2 になる。1 になる 26/15・97/56・362/209 では、ずれが半画素に積もるまでの段数がほぼ H になる(26・97・362 段)。
入れ子は刷れる太さで打ち切る
入れ子の縞は、段ごとにできる n 個の角の三角形である。三角形のいちばん太い所の目安として、内接円の直径をとった。段 k の角の三角形は、長さ t·ak と (1 − t)·ak の辺が内角 π − 2π/n をはさみ、向かいの辺は次の段の辺 q·ak になる。ここから内接円の直径は dk = 2t(1 − t)·sin(2π/n)·a·qk/(1 + q) になり、これが w 以上の段まで描けばよい。濃い縞と生成の縞は交互なので、生成の縞が細すぎても同じく刷れない。打ち切った内側は生成のまま残した。
段数は 2 通りで出した。上の閉じた式と、多角形を作り直して角の三角形の面積と周の長さから数えるやり方である。n = 3・4・6 と t = 0.02〜0.5 の 147 通りで、147 通りとも一致した。図案ごとの段数は、A が六角形 32・三角形 10、B が 21・6、C が 9、D が 17、E が 19、F が 21 だった。
見立ては「t が小さいと 1 段目から細いので t に下限があり、下限はほぼ w/(a·sin(2π/n))。刷れる段数は t の中ほどで最大になる」だった。前半は当たった。下限は三角形 0.01934・正方形 0.01681・六角形 0.01953 で、近似の 0.01925・0.01667・0.01925 に近い。
後半は外れた。段数がいちばん多くなるのは、三角形で t = 0.043〜0.062(13 段)、正方形で 0.037〜0.058(22 段)、六角形で 0.045〜0.066(38 段)だった。t の中ほどではなく、下限のすぐ上である。理由は式から出る。小さな t では d0 ≈ t·a·sin(2π/n)、−log q ≈ t(1 − cos(2π/n)) になる。下限を t0 と書くと、段数はほぼ log(t/t0)/(t(1 − cos(2π/n))) である。これは t = e·t0 で最大になり、最大の値は 1/(e·t0·(1 − cos(2π/n))) である。e·t0 は 0.0523・0.0453・0.0523 で上の範囲に入り、最大の値の近似は 12.74・22.07・38.23 になった。w を 0.3 mm と 1 mm にしても、e·t0 は 9 通りとも段数が最大になる t の範囲に入った。
下限の近くでは縞が 1 段目から細く、t を大きくすると 1 段で大きく縮む。段数が多い図案を選ぶと、縞は細く密になる。段数の少ない t = 0.3 や 0.5 は、1 本 1 本の縞が太く、柄として遠くからも読める。
六角は t = 1/2 でつながり、t = 0.3 ではずれる
六角だけの敷き詰めは頂点に 3 枚が集まり、隣どうしを逆向きに塗り分けられない。見立ては「同じ向きに敷くと、t = 1/2 で継ぎ目がつながり、t = 0.3 では共有辺で 0.4a ずれる」だった。当たった。E(t = 0.5)の共有辺のずれは 2×10⁻¹⁵ で、F(t = 0.3)は 0.400 だった。
F は、縞が境目で折れる柄になる。つながらないことを隠さずに見せる図案として候補に残した。E は t = 1/2 なので、どちら向きに回しても同じ入れ子になる。1 段で 30° 回って √3/2 倍に縮むので、六角の中に星形が重なる柄になった。
どう作ったか
生成器は generators/polygon-textile.js で、敷き詰めと入れ子は第48号の generators/polygon-whirl.js を使った。向きは、正方は格子の番号の和の偶奇、三角は上向きと下向き、籠目は六角形と三角形で分けた。点の色は、点を含むタイルを探し、入れ子を 1 段ずつ内側へたどって、はみ出した段の偶奇で決めた。画素の比べでは、画素の中心の色をこのやり方で求めた。
確かめていないこと。1 辺 30 mm は決めた値である。刷れる太さは刷り屋 2 社が公開している目安と比べただけで、実際に刷って確かめてはいない。織り(ジャカード)は、織りのサービス 1 社とタオル会社 2 社の目安と比べただけで、表を織りの目安で出し直してはいない。内接円の直径を太さの目安にしたのも、この記事の選択である。三角形の尖った先は必ず 0 まで細くなるので、刷るとそこは欠ける。インクのにじみ、生地の伸び、版の位置合わせのずれは入れていない。画素の比べは籠目 B と正方 D でしか行っていない。
出典
- 数理
- 格子のベクトルとリピート、画素のずれ |H² − 3m²|/(H + m√3)、角の三角形の内接円の直径、t の下限と e·t0 は自分で導き、数値で確かめた。入れ子と継ぎ目のずれ |1 − 2t| は第48号と同じ計算である
- 決めた値
- 1 辺 a = 30 mm(出典なし)。刷れる最小の太さ w = 0.5 mm(表では 0.3 mm と 1 mm も並べた)は、下の 2 つの入稿の目安と比べた(2026-09-25 追記)
- 刷りの目安
- 販促スタイル(株式会社トランス)「印刷方法ごとの線幅の目安について」2025-07-01 更新、https://www.hansoku-style.jp/user_data/print_line(2026-09-25 閲覧・素材別の推奨の最小線幅と最小ヌキ幅の表)。Transfer Express「Art Detail Guidelines for Custom Screen Printed Transfers」2011-08-09 公開・2023-10-10 更新、https://blog.transferexpress.com/tips-for-screen-printing-custom-artwork-tip-4-detail-guidelines/(2026-09-25 閲覧・刷る線 0.012 インチ、地を見せる部分 0.04 インチ)
- 織りの目安
- WOVNS「Design」(質問集・日付の記載なし)、https://www.wovns.com/faq/design/(2026-09-25 閲覧・1 画素が経糸 1 本と緯糸 1 本の交わり、Divan 177 dpi・Talma 84 dpi、線は 4〜10 画素より細くしない)。新居田物産株式会社「【50枚〜制作可能】ジャガード織なのに小ロットで作れる「フラット織」の魅力」2025-02-05 公開・2025-11-04 更新、https://niida.jp/towel-library/intro-flat/(2026-09-25 閲覧・上げ落ちと毛違いは 3 mm 以上、フラット織は 1 mm)。いとへん「上げ落ちジャガード織」2014-12-02 公開・2022-09-30 更新、https://itohen-towel.jp/made-of/ageochi-jacquard/(2026-09-25 閲覧・4 mm 以上を勧め、細い線は 1 mm 以上)
- 親戚
- 回りながら縮む三角形と六角形・籠目・ハニカム・雷文を色の帯にしてトンネルへ巻く
- 生成
- generators/polygon-textile.js(polygon-textile.svg 籠目の図案 B・polygon-textile-book.svg 帳簿)