清少納言知恵の板とタングラムの凸多角形
タングラムと清少納言知恵の板は、どちらも小さな直角二等辺三角形 16 枚に割れる 7 枚の板でできている。16 枚の三角形でできる凸多角形は 20 個あり、知恵の板はそのうち 16 個を、タングラムは 13 個を組める。組み方を数えると、知恵の板は合わせて 531 通り、タングラムは 142 通りあった。ただし六角形が 1 つだけ、タングラムの組み方が多い形として残った。
なにか
清少納言知恵の板は、正方形を 7 枚に切った板で形を作る遊びである。西尾市岩瀬文庫の古典籍書誌データベースの目録によると、『清少納言智恵板』は寛保 2 年(1742 年)8 月の含霊軒の自序をもつ小さな横本で、京の和泉屋伝兵衛が出した。三角・四角・台形・平行四辺形など 7 種類の板で、八角かゞみ・花生・崩家・三重塔・笘船など 42 の形を作る方法を図に示している。本そのものの図は見ていない。
7 枚の中身は、等脚台形・直角台形・中三角形 2 枚・小三角形・正方形・平行四辺形である。タングラムは、大三角形 2 枚・中三角形・小三角形 2 枚・正方形・平行四辺形になる。小三角形の脚を 1 とすると、どの板も小三角形をいくつかつないだ形になり、どちらの 7 枚も合わせて 16 枚分になる。寸法は Beelen と Verhoeff の報告(arXiv:1812.00746、2018 年)の図 3 に合わせた。等脚台形は下の辺 3・上の辺 1・高さ 1、直角台形は下の辺 2・上の辺 1・高さ 1、大三角形は脚 2 である。
凸多角形の候補は 20 個
Wang と Hsiung は 1942 年に、タングラムで組める凸多角形は 13 個だと示した(American Mathematical Monthly 49 巻 9 号、596〜599 頁)。Fox-Epstein と上原(arXiv:1407.1923、2014 年)によれば、その証明の中で、16 枚の三角形でできる凸多角形が 20 個あることも示されている。二人は同じ論文の補題 1 として、凸に並べたとき 16 枚の斜辺はどれも平行か垂直になることも引いている。この補題を前提にすると、多角形の頂点は整数の格子に乗り、辺は縦・横・斜めの 8 方向だけになる。
候補は 2 通りの方法で数え直した。1 つは、8 方向それぞれの辺の長さを振り、閉じて面積が 8 になる多角形を拾う方法である。もう 1 つは、外に接する長方形から四隅を直角二等辺三角形で落とす方法である。どちらも 20 個で、回転と裏返しで重ねると同じ 20 個だった。内訳は三角形 1・四角形 13・五角形 2・六角形 4 になる。
目録が例に挙げる形の 1 つ目は八角かゞみである。そこで「16 枚では凸な八角形は作れない」と見立てた。外に接する長方形から四隅を落として 8 辺を残す組み合わせを手で当たると、面積が 8 になるものが見つからなかったからである。三角形の枚数 n を 1 から 24 まで振ると、凸な八角形が現れるのは n = 14・20・22 だけで、16 枚の 20 個は多くても六角形だった。見立ては当たった。目録の八角かゞみは凸な八角形そのものではないはずだが、本の図で確かめてはいない。
知恵の板は 16 個、タングラムは 13 個
組めるかどうかは、升を対角線 2 本で 4 つの三角形に割った細かい格子の上で、7 枚の置き方をすべて試して数えた。片は 8 通りの向きに置き、升の角と升の中心のどちらにも寄せられる。組めたのは知恵の板が 16 個、タングラムが 13 個で、Fox-Epstein と上原の 16 と、Wang と Hsiung の 13 に合った。タングラムの 13 個はどれも知恵の板で組める。
知恵の板だけが組めるのは、幅 1 の細い帯 3 つ(形 8・9・10)である。タングラムの大三角形は脚が 2 あるので、幅 1 の帯には置き方が 1 つもない。どちらも組めない 4 つ(形 11〜14)には、知恵の板の等脚台形の置き方が 1 つもない。Fox-Epstein と上原が挙げた理由(下の辺 3 の台形が入らない)のとおりだった。形 11・13・14 には大三角形が 6 通りずつ置けるが、残りの片が収まらず、タングラムでも組めなかった。
組み方の数
組み方は、形の回転と裏返しで重なるものを 1 つとし、同じ形の 2 枚を入れ替えたものは数えない。知恵の板の 16 個は 34・38・43・61・19・72・3・21・23・21・16・4・32・24・60・60 通りだった。Beelen と Verhoeff の表 2 と並べ替えれば一致し、合計はどちらも 531 通りになる。表の番号と形は図で対応しているので、図の名前で分かる 3 つも確かめた。正方形は 3 通り、1 × 8 の長方形は 24 通り、2 つの平行四辺形の帯は 60 通りずつで、表と同じだった。
タングラムの 13 個は合わせて 142 通りだった。多いのは形 6 の 36 通りと形 20 の 28 通りで、正方形は 1 通りしかない。この数は開いた資料の中には見つからず、ここで数えたものである。置き方の刻みを半分にしても(片を升の 4 分の 1 ずつ動かせるようにしても)、20 個すべてで組み方の数は 1 つも変わらなかった。組み方はどれも、片が小三角形の格子にぴったり乗るものだった。
李浩の修士論文(北陸先端科学技術大学院大学、2026 年 3 月)の概要は、16 枚の三角形でできる形を凸に限らず数え、知恵の板で組める形はタングラムの約 1.95 倍あったと書く。これを見て「凸多角形でも、知恵の板はどの形でも組み方がタングラムより多い」と見立てた。両方で組める 13 個で比べると、知恵の板の組み方は合わせて 2.73 倍あり、差は形を数えたときより大きい。ところが形 17 の六角形だけは、タングラムが 6 通り、知恵の板が 4 通りで、見立ては 1 か所で外れた。
穴のあいた正方形
Fox-Epstein と上原は、真ん中に正方形の穴があいた 3 × 3 の正方形を、知恵の板にはできてタングラムにはできない形として図に載せている。同じ格子で数えると、知恵の板は 9 通り、タングラムは 0 通りだった。枠の幅が 1 なので、ここでも大三角形の置き方は四隅の 4 通りしかなく、2 枚を置くと残りが埋まらない。
数字を出す前の見立ては 3 つだった。「16 枚では凸な八角形は作れない」は当たりで、八角形は 14 枚・20 枚・22 枚で現れた。「刻みを細かくしても組み方は増えない」も当たった。「知恵の板はどの形でも組み方が多い」は、形 17 の 1 か所で外れた。
どう作ったか
生成器は generators/chienoita.js である。形も片も、升を対角線 2 本で割った三角形の集合として表した。片を置くたびに、その片にちょうど重なる三角形を拾い、拾った数が片の面積と合う置き方だけを残した。組み方は、まだ覆っていない三角形のうち候補の最も少ないものから枝を張る総当たりで数えた。こうすると同じ形の 2 枚を入れ替えた組み方は 1 回しか現れない。形の対称で重なる組み方は、8 通りの回転と裏返しのうち形を自分に重ねるものを当て、最も小さい書き方にそろえてまとめた。依存はなく、乱数も使っていない。
確かめていないこと。Wang と Hsiung の論文の本文は開いていない。20 個の候補と、斜辺が平行か垂直になる補題は Fox-Epstein と上原の説明から借りた。補題を外した置き方(片を 45° 回したまま混ぜるもの)や、升の 4 分の 1 より細かいずれは試していない。1742 年の本の図は見ておらず、42 の形がどの板の組み合わせかは分からない。李浩の論文は概要だけを読み、本文の表は見ていない。
出典
- 身近
- 含霊軒『清少納言智恵板』寛保 2 年(1742 年)8 月自序、京師書房和泉屋伝兵衛刊。西尾市岩瀬文庫の古典籍書誌データベース(函番号 34-39)の目録による。図は見ていない
- 数理
- 凸多角形 13 個: F. T. Wang, C.-C. Hsiung, A Theorem on the Tangram, American Mathematical Monthly 49 巻 9 号(1942 年)596〜599 頁(書誌は Crossref で確かめた。本文は開いていない)。知恵の板の 16 個と候補の 20 個: E. Fox-Epstein, R. Uehara, The Convex Configurations of "Sei Shonagon Chie no Ita" and Other Dissection Puzzles, arXiv:1407.1923(2014 年)。知恵の板の組み方の数と片の寸法: T. G. J. Beelen, T. Verhoeff, Determining the essentially different partitions of all Japanese convex tangrams, arXiv:1812.00746(2018 年)の図 3 と表 2。凸に限らない形の数: 李浩『タングラム・清少納言知恵の板で構成可能なポリアボロの全列挙』北陸先端科学技術大学院大学 修士論文(2026 年 3 月)の概要
- 親戚
- 畳の敷き方・算額の不変量・紋切り遊びと一刀切り・Wang タイル
- 生成
- generators/chienoita.js(chienoita.svg 20 個の一覧・chienoita-book.svg 帳簿。依存ゼロ)