畳の敷き方
祝儀敷きの掟は「畳の角を 1 点に 4 つ集めない」の 1 つだけである。この掟で 6 畳の敷き方は 11 通りから 4 通りに、8 畳は 36 通りから 2 通りに落ち、正方形の部屋は畳だけなら 2 通りしかない。4 畳半は半畳がなければ敷けず、半畳を入れると 10 通りになる。
なにか
和室の畳には敷き方の作法がある。畳の角が 1 点に 4 つ集まる「十字」を作らないのが祝儀敷きで、ふだんの部屋はこう敷く。十字ができてもかまわない敷き方が不祝儀敷きで、葬儀などで使われてきた(建材メーカーの大建工業の解説による)。4 畳半なら真ん中に半畳を置き、そのまわりに 4 枚を風車のように回すのが定石で、この形は左に回すか右に回すかの 2 つがある。
畳は縦横 1 対 2 の長方形で、半畳は正方形。だから部屋を半畳のマス目で切ると、畳の敷き方はドミノ(1×2)と、ときどきモノマー(1×1)で長方形を埋める問題になる。ドミノで長方形を埋める数は Kasteleyn の積公式で閉じた形に書ける。ここに「十字を作らない」という掟を 1 つ足す。数学ではこれを tatami tiling と呼び、数え上げと構造が調べられている(Ruskey と Woodcock 2009、Erickson・Ruskey・Schurch・Woodcock 2011)。ここで確かめたのは自分の数え上げだけで、文献の式は一致したものだけ「一致」と書く。
掟が数をどう変えるか
掟なしの数は、マスを 1 つずつ埋める背理(backtracking)と、列ごとに状態を送る転送行列の 2 経路で数え、Kasteleyn の積公式と突き合わせた。3 つとも一致する(8×8 で 12,988,816)。掟ありは背理と転送の 2 経路で数え、これも一致する。転送では列の各マスに「横の左半分・右半分・縦の上・下」の 4 つの型を持たせ、隣り合う 2 列のあいだの格子点ごとに「4 マスが 4 つの別のタイル」を禁じる。
結果は小さい数になる。6 畳(3×4)は 11 通りが 4 通りに、8 畳(4×4)は 36 通りが 2 通りに、12 畳(4×6)は 281 通りが 3 通りに落ちる。8 畳の 2 つは互いに 90° 回した形で、正方形の部屋(n×n、n は偶数)は n = 2 から 12 のどれでも畳だけなら 2 通りしかない。もっと大きい部屋では掟が敷き方をほとんど決めてしまう。24 畳(6×8)と 40 畳(8×10)は畳だけなら 1 通りで、48 畳(8×12)と 35 畳(7×10)は 0 通り、つまり半畳を入れないと掟を守れない。
幅を伸ばしたときの伸び方も掟で変わる。高さ 2 の細長い部屋では、掟ありの数は t(n) = t(n−1) + t(n−3)(1, 2, 3, 4, 6, 9, 13, 19, 28 と続く)に従い、1 列あたり x³ = x² + 1 の根 1.4656 倍で増える。高さを上げると、掟なし(ドミノ)は 1 列あたりの倍率が 1.62 から 9.0 へと大きくなるのに、掟ありは 1.47 から 1.10 へと小さくなる。掟は部屋が広いほど強く効く。
4 畳半(3×3)は面積が奇数なので畳だけでは埋まらない。半畳を 1 枚許すと 10 通りで、半畳が中央なら 2(風車の左手と右手)、角なら 8、辺の真ん中なら 0。辺の真ん中に半畳を置くと、両脇の畳の角が半畳の角と 1 点に集まって十字ができる。半畳の枚数を増やした帳簿も取った。n×n の部屋に半畳をちょうど n 枚入れた敷き方の数は 3×3 で 12、4×4 で 32、5×5 で 80で、文献の式 n·2^(n−1)(Erickson ら 2011 の定理 2)と一致した。半畳の枚数は n と同じ偶奇しか出ない(面積の偶奇)。
どう作ったか
生成器は generators/tatami.js で、敷き方を2通りに数えている。1 つはマスを順に埋める背理法で、横・縦・半畳の順に置き、置くたびに周囲 4 点に十字ができていないかを調べる。もう 1 つは列ごとの転送で、列の型を列挙し、隣り合う列が十字を作らずに並べるかを判定する(大きな数は BigInt で数える)。掟を外した数は Kasteleyn の積公式とも比べた。2 つの数え方は、試した 8 部屋すべてで一致した。
出典
- 身近
- 和室の畳。祝儀敷き・不祝儀敷き・4 畳半の風車(作法の由来は調べていない。ここでは「十字を作らない」という規則だけを使った)
- 数理
- ドミノの数の積公式は R. Kenyon の講義ノート Lectures on dimers(arXiv:0910.3129)の p.23 で、式と「Z8,8 = 12988816」を確かめた(Kasteleyn の原論文は出版社の人間確認で止まり開けていない)。十字を禁じた敷き方の定義「4 枚のタイルが 1 点で出会わない」は F. Ruskey と J. Woodcock, Counting fixed-height tatami tilings, Electron. J. Combin. 16 (2009) R126 の定義 1.1、「n×n の正方形に半畳 n 枚の敷き方は n·2n−1」は A. Erickson・F. Ruskey・M. Schurch・J. Woodcock, Monomer-dimer tatami tilings of rectangular regions, Electron. J. Combin. 18 (2011) P109 の p.1(定理 2)で読んだ。祝儀敷きと不祝儀敷きは大建工業の畳のコラム(daiken.jp)の「合わせ目のラインが十字にならないようにする敷き方」「不祝儀敷きはお葬式などで用いられてきました」による。2 本の論文は祝儀・不祝儀に触れていない。ここで確かめたのは自分の数え上げの一致である
- 親戚
- ロザンジュ・タイリング・Wang タイル・織りの数理・和柄の対称群
- 生成
- generators/tatami.js(tatami.svg 4 畳半の風車・tatami-book.svg 帳簿。依存ゼロ・乱数ゼロ)