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かけ算第34号|水の玉 × カテナリー

ころがる楕円と、ころがる放物線

蛇口の水の糸がくびれて玉になる途中の形も、2 つの輪のあいだに張った石鹸膜のくびれも、表面張力だけで釣り合った回転面である。Delaunay は 1841 年に、平均曲率が一定の回転面はすべて「円錐曲線を直線の上でころがしたときの焦点の跡」を回したものだと示した(J. Math. Pures Appl. 6 の p.315。numdam の写しで読んだ)。楕円ならくびれの列(アンデュロイド)、放物線なら石鹸膜(カテノイド)、双曲線ならノドイドになる。ここではころがしを数値で実際にやり、跡を回した面の平均曲率が断面に沿って一定になること(1e−7)を確かめた。放物線の焦点の跡は r = (p/2)cosh(2z/p) ちょうどで、電線のカテナリーと同じ cosh である。楕円の跡の周期は離心率 e → 0 で同じ体積の円柱の周 2πa に収束し、作品122 で分散関係から出た Rayleigh の中立波長 ka = 1 と同じ数が別の理由で出る。e を上げると周期は短く面積は大きくなり、e → 1 で触れ合う玉の列(周期 √6/2π、面積 √(3/2) 倍)になる。くびれの列はどれも同じ体積・同じ周期の円柱より面積が大きい平衡形で、円柱が負けるのは離れた玉に対して、それは λ > 9a/2(厳密)。Plateau の 2πa より短く、そのあいだ円柱は準安定である。カテノイドは輪の間隔 h/R が 1.32549 を超えると張れない。同じ cosh が、電線では垂れを、石鹸膜では張れる限界を決めている。

生成りの地。上に、直線の上をころがる茜の楕円と、その焦点が描く藍のくびれの列と回転面の輪。下に、ころがる放物線と、その焦点が描くカテノイドのくびれ
上: 楕円(e = 0.5)を線の上でころがす。焦点(茜の点)の跡がアンデュロイドの断面で、回すとくびれの列になる。下: 放物線をころがすと、焦点の跡は cosh=カテノイドのくびれ。

なにか

焦点を原点にした極形式 ρ(φ) = p/(1 + e cos φ) の円錐曲線を、接点を線の上に置き接線を線に合わせる剛体変換で「ころがす」。接点までの弧長 s が線の上の位置、焦点は接線からの距離 r と線に沿った位置 z = s + (F − C)·T̂ をもつ。この跡 r(z) を z 軸のまわりに回した面の平均曲率 H = ½[1/(r√(1+r′²)) − r″/(1+r′²)^{3/2}] を断面 4,000 点で測ると、楕円 e = 0.3 で 0.455000 ± 2e−8、e = 0.7 で 0.255000 ± 7e−8、放物線で 0 ± 1e−7、双曲線 e = 1.5 で −0.625 ± 8e−8。楕円と双曲線は (1 − e²)/2p で、放物線だけが 0(極小曲面)になる。ころがしがそのまま表面張力の平衡形を作る。

放物線は cosh、楕円の周期は 2πa

上から平均曲率の表、周期が 2πa へ収束する表、e を振った周期比と面積比の図と表、カテノイドの限界の図
帳簿。①H の一定と放物線 = cosh ②周期 → 2π r_cyl ③e を振った帳簿(玉の列の極限・9a/2) ④カテノイドの張れる限界。

放物線(半通径 p = 1)の焦点の跡は、最小の r を a とすると r = a cosh((z − z₀)/a) に 4,000 点で 3e−7 で乗り、a = 0.500000 = p/2 になる。カテノイドの断面はカテナリーである。鎖が自重で垂れる形と、石鹸膜が表面張力で張る形が同じ cosh になるのは、どちらも「水平張力が一定で、傾きが積み上がった量に比例する」型の釣り合いだから(作品 catenary の側の説明)。

楕円の跡は周期をもつ。同じ体積の円柱の半径 r_cyl で測った周期は e = 0.3・0.2・0.1・0.05・0.02・0.01 で 0.93499・0.97051・0.99253・0.99813・0.99970・0.99992 × 2π r_cyl。無限小のくびれをつけた平衡形の周期は円柱の周 2πa に収束する。作品122 では Rayleigh の分散関係 ω² ∝ x(1−x²)I₁/I₀ が x = ka = 1 で 0 になり、円周より長い波だけが育った。同じ 2πa が、片方は分散関係の零点、片方はころがしの周期として出る。

玉の列は円柱より面積が大きい

e を上げると、同じ体積・同じ周期の円柱と比べて 周期は 0.935・0.830・0.689・0.514・0.436・0.408・0.397(e = 0.3〜0.997)と短くなり、面積は 1.0015・1.011・1.042・1.122・1.181・1.206・1.218 と大きくなる。e → 1 の極限は触れ合う玉の列で、周期 √6/2π = 0.390、面積 √(3/2) = 1.2247 になる。アンデュロイドは平衡形だが最小ではない。円柱が負けるのは離れた玉に対してで、周期 λ・同じ体積の玉 1 つの面積を円柱と比べると (6a²λ)^{2/3}/(2aλ)、これが 1 を切るのは λ > 9a/2(厳密)。Plateau の不安定(ka < 1 ⟺ λ > 2πa = 6.28a)はそれより長い波でしか始まらないので、4.5a < λ < 6.28a では円柱は玉より損なのに崩れない。準安定である。最速の λ* = 9.014a では玉の面積は円柱の 0.793 倍になる。

以下は偶然の一致の記録である。Rayleigh の最速 x* = 0.6970 と 2π/9 = 0.6981(λ* = 9.014a と 2 × 4.5a = 9a)は 0.16% 違う別の数で、式に共通の根はない(x* は Bessel の超越方程式の根、9/2 は代数)。近いのは偶然として記録する。

石鹸膜が張れる限界

半径 R の輪 2 つのあいだのカテノイドは r = a cosh(z/a)、輪で R = a cosh(h/2a) となる。輪の間隔 h/R = 2t·arccosh(1/t)(t = a/R)は t について最大をもち、黄金分割で h/R = 1.32549、a/R = 0.55243(R/a = 1.81018)。停留条件 arccosh u = u/√(u² − 1)(u = R/a)の根 1.81018 から出しても 2 arccosh(u)/u = 1.32549 で、2 経路が 1e−9 で一致する。間隔がこれより広いとカテノイドは存在できず、膜は輪に張った 2 枚の円板(Goldschmidt の解)に移る(Walzel ほか, arXiv:2203.16140 の p.2 は臨界を約 1.33 としている)。2 枚の円板のほうが面積の小さくなる間隔は、これとは別の値である。

続き: 双曲線の側の帳簿

上に、離心率 0.5・1・1.5・3 の断面を 4 つ並べた図。波打つ線、半円の列、輪を作りながら進む線が順に並ぶ。その下に周期と面積と体積の表。下半分は、水の糸が左右 2 か所でくびれていく 3 枚の断面と、波数ごとの小さな玉の割合の表
続きの帳簿。上は平均曲率をそろえた族の断面と、周期・面積・体積の表。下は細い糸がくびれていく形と、くびれのあいだに残る体積の表。

上の帳簿は半通径 p をそろえて e を動かした。この向きでは e が 1 に寄ると面の大きさ a = p/|1 − e²| が際限なく大きくなり、e = 1 で平均曲率 0 のカテノイドを通る。平均曲率を 1/2a にそろえると、族は別の面を通ってつながる。断面は r = a√(1 + e² + 2e cos t)、dz/dt = a(1 + e cos t)/√(1 + e² + 2e cos t) と書ける。e = 0 が円柱、0 < e < 1 がアンデュロイド、e = 1 が半径 2a の玉の列、e > 1 がノドイドで、e だけを動かせば 1 本の族になる。

この書き方では弧長が s = a·t になるので、断面 1 周期の長さはどの e でも 2πa である。円柱の周も、半径 2a の玉の半円 2 つぶんも、ノドイドの輪 1 つも同じ長さになる。周期は Z = 2a[(1 + e)E(k) + (1 − e)K(k)]、面積は A = 8πa²(1 + e)E(k) で、k = 2√e/(1 + e)、K と E は完全楕円積分である。どちらも数値積分と 2e−10 で合う。Z は e = 0 の 2πa から e = 1 の 4a へ縮み、ノドイドに入っても縮み続けて e = 1.5 で 2.236a、e = 3 で 1.062a、e = 20 で 0.157a になる。e = 1 でつながってはいるが、傾きは 2 ln|1 − e| の形で深くなる。幅 0.01・0.001・0.0001 で測ると −11.4・−16.0・−20.6 で、つなぎ目の接線は縦に立つ。

ノドイドの断面は r = a√(e² − 1) より内側で z を戻り、輪を作る。双曲線の 2 本の枝を別々にころがすと、焦点に近い枝の跡がこの内側の部分、遠い枝の跡が外側の部分にあたる。どちらも同じ第一積分 r² ∓ 2ar(dz/ds) − a²(e² − 1) = 0 に 8e−7 で乗った。上の表で双曲線の H が負になっているのは、近い枝だけをころがしていて z の向きが逆だからで、1 本の曲線としてたどれば符号は変わらない。

e を大きくすると断面は半径 a の円に寄り、面はドーナツに近づく。e = 100 で面積はドーナツの 1.0000 倍になるが、体積 π∫r²dz は 1.5000 倍になった。体積もドーナツに寄ると見立てていたが、外れた。輪は閉じきらず 1 周ごとに πa/e だけ進み(Z·e = 3.1416)、そのぶんの円板 π(ea)²·(πa/e) がドーナツの体積のちょうど半分になる。

続き: くびれに残る小さな玉

蛇口の水の記事では、玉のあいだに残る小さな衛星滴を、計算しないまま置いていた。線形の理論は 1 つの波が育つ速さしか教えないので、くびれの先は非線形の式を解くしかない。ここでは細い糸の 1 次元の模型(Eggers と Dupont の細長近似で、曲率は省略しない形)を周期 1 つ分で解いた。長さの単位は糸の半径 a、粘りはオーネゾルゲ数 Oh = μ/√(ρσa) で表す。初めの振幅は 1% とし、くびれの最小半径が 0.02a になったところで止め、2 つのくびれのあいだの体積を衛星滴とした。

くびれは波の谷の中央ではなく、中央から離れた左右 2 か所で細くなる。最速の波 x = ka = 0.697、Oh = 0.1 では中央から 2.41a の位置で、あいだに残る体積は全体の 1.81%、玉にすると半径 0.496a である。大きい玉の半径は、体積をすべて集めた 1.891a から 1.879a に減る。波が長いほど衛星滴は大きい。Oh = 0.1 では x = 0.3・0.5・0.697・0.9 で 24.4%・8.30%・1.81%・0.28%、Oh = 0.3 では 15.6%・3.67%・0.60%・0.08% になった。波数について単調に減り、粘りが強いほど小さい。この見立ては当たった。

この数は解き方では動かない。格子を半分にすると 1.81% が 1.80% になり、止める半径を 0.05a と 0.01a に変えても 1.81%、初めの振幅を 0.1% にしても 1.81% で、振幅 5% では 1.79% になる。線形の区間の成長率は、模型の式 √(x²(1 − x²)/2 + 9Oh²x⁴/4) − 3Oh x²/2 に 1.8% 以内で乗った。

ここまでで止めた。Oh = 1 は最小半径 0.02a で止めるとくびれが中央に 1 つに見え、0.005a まで追うと 2 か所に分かれて 0.003% になった。止める位置で答えが変わるので、粘りの強い側で衛星滴が消えるとは言わない。Oh = 0.03 と 0.01 は格子 400 で 2.69%・3.03% だが、Oh = 0.03 の格子 200 は計算が壊れた。水道の水は半径 1mm で Oh ≈ 0.004 にあたり、この解き方では届いていない。切れたあとの糸が 1 つの玉にまとまるか、さらに切れるかも追っていない。

どう作ったか

ころがし
generators/delaunay.js。接点 C(φ) と接線 T̂ を中心差分で取り、弧長を細かい折れ線で積む。焦点の位置は z = s + (F−C)·T̂・r = (F−C)·N̂。
平均曲率
跡 r(z) の 1 階・2 階微分を中心差分で取り、回転面の H の式に入れる。楕円は 1 周(周期)、放物線は φ ∈ [−2.5, 2.5]、双曲線は漸近線の手前まで。
帳簿
体積 ∫πr²dz と面積 ∫2πr√(1+r′²)dz を台形則(20,000 点)。円柱は同じ体積・同じ周期にそろえた。
カード
円錐曲線の写しは、接点を (s, 0) に、接線を線に合わせる剛体変換で曲線全体を写す。放物線は帯に収まる範囲だけ描く。
続きの族
完全楕円積分は算術幾何平均で出し、数値積分は t の中点則 100,000 点。双曲線の遠い枝は、同じ極形式で ρ が負になる角の範囲をころがした。
続きの糸
半径を格子の中心、速さを格子の境目に置き、時間は 4 次のルンゲ・クッタで進めた。体積のずれは 3e−15 以下だった。

検査

出典と権利

数理
C. Delaunay, "Sur la surface de révolution dont la courbure moyenne est constante", J. Math. Pures Appl. 6 (1841)(pp.309〜315。ころがす円錐曲線の焦点の跡は p.315 の定理)は numdam の写しで読んだ。Plateau(1873)の不安定の条件は Eggers と Villermaux の総説 pp.4〜5 の紹介による。Goldschmidt の解は Walzel ほか arXiv:2203.16140 の p.2。ころがしの数値・平均曲率・周期と面積の帳簿・9a/2・1.32549 の 2 経路はここで計算した。続きの族の式(断面・周期・面積)はここで導いたもので、先行例は確かめていない。糸の模型は J. Eggers & T. F. Dupont, "Drop formation in a one-dimensional approximation of the Navier-Stokes equation", J. Fluid Mech. 262 (1994) 205〜221(arXiv:physics/0110081 の写しを開いた)の形を自分で離散化した。衛星滴の数値はすべてここで計算した。
ギャラリー内
蛇口の水が玉になる長さ(作品122・分散関係と 2πa)・カテナリー(cosh の釣り合い)。
生成
generators/delaunay.js(delaunay.svg カード・delaunay-book.svg 帳簿・delaunay-book2.svg 続きの帳簿)、generators/lib/jet1d.js(糸の模型)、tools/explore/jet1d-sweep.js(波数と粘りを振った記録)

つながり: 蛇口の水が玉になる長さ・カテナリー・ハニカム(周長最小の親戚)・見取り図の発見101