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ロープだけの作図 — 定規が無くても、幾何は全部できる

同じ半径の円7つで描いた六弁のロゼット。円の交点を結ぶと2つの正六角形が浮かび上がる
ロープ1本(=コンパス)で描ける六弁のロゼット。まっすぐな線は1本も引いていないのに、円の交点として正六角形が2つ(半径 R と √3·R)出てくる

夜の麦畑の道具箱

ミステリーサークルは1970年代からイングランド南部の麦畑に現れた巨大な幾何図形で、1991年に2人組(Bower と Chorley)が「自分たちが描いた」と名乗り出た。道具はロープと板だけ(⚠️経緯は伝聞)。一端を杭に掛けて張ったロープは、そのまま巨大なコンパスである。

ここで数学の問いになる。定規なし・コンパスだけで、作図はどこまでできるのか? 答えは「全部」——定規とコンパスで作図できる点はすべて、コンパスだけで作図できる(Mohr 1672 / Mascheroni 1797)。ロープ1本あれば、ユークリッド幾何の点はすべて畑に打てる。夜の畑で精密な図形が描けたことに、種も仕掛けもある——仕掛けの名前は定理である。

★線を引かずに中点を取る——仕掛けは反転

円7つでAとBの中点Mを作図する手順。歩く円で倍点Dを作り、Dを反転してMを得る
円7つで A と B の中点 M を取る。①〜④ 六角形の歩幅で3歩歩いて A の反対側 D(AD = 2AB)を作り、⑤〜⑦ D を円 C(A, AB) で反転する

核になる部品は反転である。円 C(O, r) に対する点 X の反転 X* は OX·OX* = r² を満たす点で、これがコンパスだけで作図できる(X を中心に O を通る円を描き、基準円との交点 U, V から円を2つ——衝突する点が X*)。D は A から 2AB の距離にあるから、反転すると AM = AB²/(2AB) = AB/2——中点が出る。

機械検査では、ランダムな200組の A, B でこの作図を実行し、座標計算の中点(独立の第2経路)と突き合わせた——最大のずれは 10⁻¹⁴ の桁。倍点(|AD| = 2|AB|・3点が同一直線)、反転の恒等式 OX·OX* = r²、鏡映も同様に検査した。⚠️反転には |OX| が r/2 より大きいことが必要で、境目の内側では交点の円が届かない——このガードも「内側なら null が返る」ことまで検査にした。

ロゼットの正六角形は「出てくる」

主図の六弁ロゼット(ヘクサフォイル)は、教会の石にも、麦畑にも、日本の麻の葉文様の親戚にも現れる古い形である。作り方は「中心の円のまわりに、円周上の点を中心に同じ円を6つ」——それだけで、円の交点が正六角形を2つ作る。花びらの先端(隣どうしの円の外側の交点)は中心から √3·R にあり、角度はきっちり 60° 刻み(検査では 10⁻¹² 以内)。半径 R の円で正六角形が出てくるのは、正六角形の辺の長さが外接円の半径に等しい——ハニカム麻の葉と同じ、六角の特権である。

どう作ったか

機械検査は10件: ①円と円の交点が両方の円上に乗る(自己検証・10⁻¹⁵)②鏡映が代数計算と一致(200組)③倍点 |AD| = 2|AB|・同一直線(200組)④反転の恒等式 OX·OX* = r²・X* が半直線 OX 上(200組)⑤★コンパスだけの中点 vs 座標計算(200組・最大 10⁻¹⁴)⑥使った円はちょうど7つ ⑦反転のガード(|OX| が r/2 以下なら作図不能=null)⑧ロゼットの先端が半径 √3·R・60° 刻み(10⁻¹²)⑨決まった乱数 ⑩出荷SVG2枚。

→ ハニカム(六角の特権)

→ 和柄の対称群(麻の葉 p6m)

→ 畑の円の面積比(同じ畑の幾何)

→ πのらせん(同じ畑の幾何)

出典

数理
G. Mohr, Euclides Danicus (1672)。L. Mascheroni, La geometria del compasso (1797)。反転を核にした証明の道筋は現代の教科書の標準。⚠️定理の全証明は実装していない——核になる3部品(倍点・反転・中点)を実装して検証した
ミステリーサークルの扱い
オカルトではなく野外の幾何アートとして扱う。1991年の告白の経緯は伝聞。誰が・なぜは扱わず、「ロープ=コンパスで何が描けるか」という数理だけを再実装した。特定の畑の図案は複製しない(無名の製作者の作品のため)——ロゼットも中点の作図もこちらで引いた図である
生成
generators/mascheroni.js(円と円の交点・作図記録・倍点・反転・中点・ヘクサフォイル・図2枚。依存ゼロ・乱数は mulberry32)