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和柄の対称群 — 手ぬぐいの模様は17種類のどれかに入る

市松・七宝つなぎ・麻の葉・青海波の4つの和柄と、それぞれの対称群の測定結果
手ぬぐいや風呂敷でおなじみの4つ。平面の繰り返し模様の対称性は17種類しかない(Fedorov 1891)。和柄はそのどこかに必ず入る——機械に対称操作を探させて、市松と七宝つなぎが同じ p4m、麻の葉が p6m、青海波が cm と分かった

なにか

繰り返す模様には、ずらす・回す・裏返す(+ずらしながら裏返す=映進)という対称操作がある。この操作の組み合わせ方は数学的に17通りしか存在しない。エッシャーが使い、結晶学者が分類したこの17種に、日本の伝統文様も当然入る。どこに入るかを機械に判定させた。

やり方は素朴で、文様を「印つきの点の集合」にして、候補の対称操作をぜんぶ試すだけ。回転(2/3/4/6回)を格子点・マスの中心・辺の中点まわりに、鏡映を15°刻みに、映進を半コマずらして。窓の縁の影響を避けるため、内側の点だけで判定する。

文様作り方回転鏡映映進群(同定)
市松正方格子の2彩色4回4方向(0/45/90/135°)ありp4m
七宝つなぎ正方格子に等半径の円4回4方向なしp4m
麻の葉三角格子の放射6回6方向(30°刻み)ありp6m
青海波同心円の弧を千鳥になし1方向(縦だけ)なしcm

市松と七宝つなぎは同じ群である。見た目はまったく違うのに、対称性の骨格としては同一——この「見た目は別物、骨格は同じ」を言えるのが群で分類することの効きどころ。逆に青海波は、弧が上に開くぶん対称性が大きく落ちて、縦の鏡映しか残らない。

5回対称の席は、周期模様には無い

17種に現れる回転は 1・2・3・4・6 回だけで、5回はどこにも無い(結晶学的制限)。正五角形で床は埋まらない、という子どもの頃の発見が、そのまま定理になっている。機械でも確かめた: 和柄4種に対して 5回・7回・8回・12回の回転を、あらゆる中心で試してひとつも立たなかった

★ここでこのギャラリーの他の棚とつながる。ペンローズ・タイリングは5回対称の見え方をするが、並進対称をひとつも持たない——だから17種のどこにも入らない。頂点1211個で40通りの並進候補をぜんぶ試して、一致率は最良でも 74.9%(市松なら 100%)。面白いのは 74.9% も一致してしまうことで、局所的には周期模様と見分けがつかないのに、どこまで行っても厳密には一致しない。これが準周期の正体である。和柄は「17種に収まる側」、Hat やペンローズは「収まらない側」——同じギャラリーに両方が並んでいる(発見24)。

では、和柄はぜんぶ周期的なのか

ここで扱った4つはすべて周期的である——2方向の独立な並進を持つ、というのが「17種に入る」の意味そのもので、機械にやらせた「市松の並進で一致率 100%」がその判定だった。ただし和柄全体が周期的とは言えない。少なくとも3つ外れる型がある。

① 散らし文様(小紋の散らし、破れ文様)——意図的に格子を崩して置く。並進対称がないので17種の外。② 完全な縞——線の方向には連続的にずらせてしまう。17種の分類は「並進が離散である」ことを前提にしているので、理想的な縞はその前提から外れる(帯や棒の対称群という別の分類の話になる)。③ 手描きの流水・観世水——繰り返してはいるが厳密な格子ではない。

面白いのは逆側である。伝統的な文様の分類には「割付文様」という区分があり、これが「敷き詰めて割り付ける連続文様」=ほぼ周期的な文様にあたる(麻の葉・七宝・亀甲・青海波・市松はここに入る)。周期的かどうかで名前を分ける習慣を、数学の分類より前に持っていたことになる(⚠️この用語の扱いは伝聞で、文献では確かめていない)。
そしてもうひとつ。「規則があるのに周期しない」模様は、伝統の中には見あたらないペンローズ(1974)やHat(2023)は20世紀以降の発見で、手仕事の蓄積が届いていなかった場所である——このギャラリーで和柄と非周期タイリングを並べているのは、そこを見たいから。

骨格の取り方を間違えると、群を読み違える

判定の途中で2回つまずいた。どちらも「模様を点の集合に落とすときに何を落としたか」の問題だった。

① 麻の葉で上向き三角形の中心だけを入れると、6回対称が3回に落ちる(p31m になる)。上向き・下向きの両方の中心を入れて初めて p6m になる。

② 青海波で弧の「上向き」を落とすと、水平の鏡映と2回回転が偽で立つ。点だけ見れば対称に見えてしまうので、向きを表す印をもう1つ置いて判定した。

どちらも「機械が対称性を答えた」だけでは信用できない例で、入力の作り方が答えを決めている異方性DLAで三角格子の丸め方が偽の4回対称を立てた件(v1.16)と同じ型の罠である。

★自分で動かす

下の絵はこの場で計算している(あらかじめ描いた絵の切り替えではない)。上の図を作っているのと同じ 1 本のコード gallery/assets/wagara-live.js を、記事の中で呼んでいる。ここで動かせるのは文様ではなく調べる道具のほう——鏡をぐるりと回して、どの向きが当たるかを自分で探す。

この向きの鏡は
当たる鏡の向き
押した回転は
最大の回転位数
映進

選んだ文様の骨格(印つきの点)と、いま試している鏡の線

5回・7回・8回・12回のボタンは、4つの文様どれでも必ず外れる——これが結晶学的制限で、壁紙の対称群が17種しかない理由そのもの。ペンローズ・タイリングには5回が現れるが、その代わり並進対称が無い(周期がない)。「5回が欲しければ、繰り返しを諦めるしかない」。

どう作ったか

文様は数理的な骨格として自作(正方格子・三角格子・等半径の円・同心円の弧)。判定は候補の等長変換を総当たりし、内側の点だけで一致を見る。群になっていることも確かめた: 90°回転と鏡映の合成がまた対称で、その行列は 45°の鏡映と一致する。機械検査は15件: ①4文様の回転位数・鏡映方向・映進 ②合成が閉じる ③5/7/8/12回の回転はひとつも無い(結晶学的制限)④市松の並進が100% ⑤★ペンローズは最良でも74.9%(並進なし)⑥罠2つ(上向きだけで3回に落ちる・向きを落とすと偽の対称)⑦記事のドラッグ版を偽DOMの上で実際に走らせる8項目(★鏡の向きを 0〜179° まで1°刻みで全部試し、当たる向きが「当たる鏡の向き」の一覧とちょうど一致することを4文様ぶん=720回の判定で確かめる/★5・7・8・12回の回転が4文様どれでも必ず外れる/対照として2・3・4・6回は当たる)⑧出荷SVGとドラッグ版が同じ1本のコードを共有していること ⑨出荷SVG1枚。ドラッグ版の検査の実体は tools/wagara-live-test.js

→ ペンローズ P3(17種に入らない側)

→ Hat タイル(1種類で埋めて決して周期しない)

→ 織りの数理(市松=平織り。同じ格子が布の側から出てくる)

→ ハニカム(麻の葉と同じ三角格子の家族)

出典と権利について

数理
壁紙群(平面結晶群)の17種の分類 E. S. Fedorov (1891)、G. Pólya (1924)。記号は国際結晶学連合の表記。結晶学的制限(許される回転は 1,2,3,4,6 のみ)は標準的な結果。文様の作り方は伝統文様の一般的な作図法に基づく
権利
ここで扱ったのは数理的な骨格(格子・円・弧)だけで、特定の作品・商標のデザインは扱っていない。文様の名前は一般名詞として使用。「この文様はこの群」という同定はこちらの主張で、機械が測ったのは対称操作の集合とその閉性である(文献での分類と突き合わせたわけではない)
生成
generators/wagara.js(4文様の骨格生成・等長変換の総当たり判定・回転位数と鏡映方向と映進の測定・並進対称のテスト・文様の描画。依存ゼロ・乱数ゼロ。ペンローズとの対照は generators/penrose.js を借用)和柄の数理は gallery/assets/wagara-live.js に置き、出荷SVGの生成器と記事のドラッグ版が同じ1本を共有している