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ミトラの階段雷文

図と地が同じ形になるのは、色を入れ替える等長変換が 1 つあるときだけ。その条件は階段と渦巻きに取り引きを強いる。階段を伸ばすと、渦巻きは 2 本の腕に縮む。

石片のような正方形のセルで描いた階段雷文。藍の渦巻きと生成りの渦巻きが同じ形で噛み合う
階段 1 段(3 コマ)と 6 本の腕の渦巻きをつないだ幅 1 の道を、14×4・ずれ 6 の格子で敷いたもの。藍が図、生成りが地。どちらも同じ形で、茜の点(帳簿の図)を中心に半回転すると入れ替わる。石片を 1 つずつ組んだミトラの壁にならって、セルごとに目地を空けて描いた。

なにか

オアハカのミトラ遺跡(紀元 200 年から 1521 年、中心は後古典期後期の 1200 年から 1521 年)の壁は、小さな石灰岩の石片を組んだ幾何模様で覆われている。スペイン語で grecas と呼ばれ、メキシコ国立人類学歴史研究所(INAH)は、これはよく言われるミシュテカのものではなくサポテカの系譜の印だとしている。図柄はとても多様で、繰り返されるのはときどきだという。代表が階段と渦巻きをつないだ xicalcoliuhqui で、ナワトル語の「瓢箪の器」と「ねじれたもの」を合わせた語である。ギリシャの雷文、中国の雷文と同じ家系で、こちらは渦巻きへ向かう道が階段になっている。

この図柄には、見た人がすぐ気づく性質がある。石片の図と、石片のあいだの地が、同じ形をしている。ここでは「図と地が同じ形になる条件」を格子の上で書き下し、階段と渦巻きの族を作って、その条件を満たす並べ方を総当たりで探した。特定の遺跡の図柄は写していない。作ったのは規則と、その帰結である。

条件は 1 行で書ける

カードの図柄と半回転の中心、色を入れ替える等長変換の 4 つの型、階段の段数と渦巻きの腕の本数の表、傾きの違う階段 3 つ
左上はカードの図柄と、図を地に写す半回転の中心(茜)。右上は色を入れ替える等長変換の 4 つの型の例。下は階段の段数ごとに図地同形にできた渦巻きの腕の本数と、傾きの違う階段の繰り返し。

格子のセルを図と地の 2 色に塗った周期模様を考える。周期の格子 Λ で割った商(トーラス)の上では、模様は有限個のセルの塗り分けである。図と地が同じ形であることは、図を地に写す等長変換 σ が 1 つあることと同じで、σ は 2 回で元に戻り(σ² は Λ の並進)、しかも固定セルを持てない。固定されたセルは図でも地でもなくなるからである。

σ の型は 4 つある。半回転、並進、縦軸の鏡映か映進、横軸の鏡映か映進。半回転型なら、固定セルを持たないために中心はセルの角か辺の中点に落ちる。半回転の中心の族は c + Λ/2 で、格子の幅と高さがともに奇数だと、この族のどれかが必ずセルの真ん中に落ちるので半回転型は作れない(片方でも偶数なら作れる)。カードの図柄は 14×4・ずれ 6 で、図 28 セルと地 28 セルが半回転(中心はセルの角)でぴったり入れ替わる。色を保つ対称は並進以外になく(p1)、色を入れ替える対称は半回転だけ(2 色の壁紙群でいう p2′)。

階段を伸ばすと渦巻きが縮む

階段 n 段(踏み面と蹴上げが t コマ)の先に、腕が 1 つずつ縮む渦巻き(幅 1・隙間 1)をつないだ幅 1 の道を族にして、段数 8・踏み面 3・腕 10 本・格子 48 までを総当たりした。図地同形になる(図柄・格子・σ)の組は 27,644 あり、σ の型は半回転 8,094・並進 6,432・縦鏡映 11,403・横映進 1,393・縦映進 322。横鏡映は 0 だった。

腕が単調に縮む渦巻きだけを数えると、はっきりした取り引きが見える。階段が 1 段なら腕 9 本(2 巻き以上)の渦巻きまで図地同形にできる。階段が 2 段以上あると、腕は 2 本までしか許されない。段数を 2 から 8 まで動かしても、3 本以上の腕の解は 1 つも出ない。階段を長くしたければ渦巻きは鉤に縮み、渦巻きを深く巻きたければ階段は 1 段に縮む。この族とこの範囲での結果である。現代のサポテカの敷物が階段の長い渦巻きを 3 色で織っているのを見て、最初は 2 色の制約を色でほどいているのだと書いたが、次の節のとおり逆だった。

→ アンデスの噛み合う魚(半回転で噛み合う辺は中点を通る。図地同形はそれを模様全体に広げたもの)

→ 和柄の対称群(17 種。ここでは色を入れ替える対称を加えた 2 色群を見ている)

3 色にすると渦は巻けない

藍・茜・砂色の 3 色で同じ形の鉤を敷いた模様と、階段の段数ごとに 2 色と 3 色で巻ける腕の最大を並べた表
左は 3 色の図地同形の例で、3 つの色は同じ形(階段 1 段、腕 [2,1] の鉤)の平行移動。右は族の総当たりで図地同形にできる渦巻きの腕の最大で、2 色の 4 型すべて、2 色の並進型だけ、3 色の 3 行。

3 つの色の類がすべて同じ形だとする。色を巡回させる(藍を茜に、茜を砂色に、砂色を藍に写す)等長変換 g がある。g は格子の点群の元 A と並進の組で、正方格子の点群 D4 の位数は 1・2・4 のどれかで、3 がない。A の位数を k とすると g^k は並進で、k と 3 は互いに素だから g^k も色を巡回させる。3 色を巡回させる並進が必ずあり、3 つの類は互いの平行移動になる。2 色のときに使えた半回転・鏡映・映進の型は、3 色では使えない。だから「3 色で図地同形」は「図柄が格子の平行移動だけで平面を敷ける」ことと同じで、色はその格子の指数 3 の部分格子で分けるだけである。

族を総当たりすると 3 色の解は 6,049 組で、階段が 1 段でも渦巻きの腕は 2 本まで。2 色なら 9 本まで巻けたのは半回転や鏡映が使えたからで、色を足すと制約はほどけず、むしろ締まる。独立の経路として、3 色の解の形(セル数が偶数のもの)を 2 色の並進型の解の形と突き合わせると、どちらも 1,424 種で差は 0 だった。サポテカの敷物が 3 色で長い階段と深い渦巻きを織れているなら、3 色目は同じ形ではなく別の形の地であるはずで、その帳簿はこの号の外にある。六方格子なら点群に位数 3 があるので、120° 回転で 3 色を巡回させる別の道が開く。

階段の傾きが繰り返しを決める

ミトラの階段は傾き 1 で、右へ 1 歩ごとに 1 段上がる。傾きを 1/2 にすれば 2 歩に 1 段、周期 2。傾きを無理数、たとえば 1/φ²(φ は黄金比)にすると、上がる歩と上がらない歩の列は二度と繰り返さない。この列はフィボナッチ・ワードで、切断投影で作った列と 400 歩ぶん一致し、第 12 世代のフィボナッチ・ワード(233 文字)を接頭辞に持つ。階段を描くことは斜めの線を格子に落とすことと同じで、傾きが有理数なら周期模様、無理数なら非周期になる。ミトラの職人が傾き 1 を選んだから、雷文は周期を持つ。

どう作ったか

生成器は generators/mitla-fret.js で、幅 1 の道(階段と渦巻き)を作り、格子の商で正規化してから、色を入れ替える等長変換を総当たりで探している。最初は領域の形を先に決めて数えようとしたが、それでは解が見つからなかった。格子の商で考え直すと探索が開けた。フィボナッチ・ワードとの突き合わせには、フィボナッチ・ワードの切断投影をそのまま使っている。

出典

史実
年代と「ミシュテカではなくサポテカの系譜の印」は INAH の遺跡の頁(inah.gob.mx/zonas/zona-arqueologica-de-mitla の「Cronología: 200 1521 d. C.」「Posclásico Tardío 1200 a 1521 d. C.」)、図柄の多様さは INAH の Lugares の頁(N. Robles García 執筆、"the motifs they comprise are very varied, only being repeated occasionally")で読んだ。xicalcoliuhqui は Online Nahuatl Dictionary で、主訳が "a stepped fret design"(サアグン『最初の覚え書き』)、xicalli が「瓢箪の器」、coliuhqui がモリーナ 1571 の「ねじれたもの」。以前ここに書いていた「モルタルなし」「図柄は 14 種」「同じ図柄は二度と現れない」は観光向けの紹介記事にしか見つからず、INAH の頁は「ときどき繰り返す」と書いているので外した。Washburn と Crowe の本は、階段雷文を xicalcoliuhqui やミトラの名では論じていなかった(archive.org の本文検索で 0 件)ので、出典から外した
数理
2 色の壁紙群(色を入れ替える対称を含む 46 種)は H. J. Woods, J. Textile Inst. Trans. 27 (1936) T305 が初めて数え上げた。原著は開いていない。B. G. Thomas, Bridges 2009 の p.178 に「Woods が 1 次元の 17 種と 2 次元の 46 種の色交代模様を初めて完全に数え上げた」とあるのを確かめた。ここで確かめたのは「図地同形 ⟺ 色を入れ替える等長変換が 1 つ」と、階段と渦巻きの族での総当たりの結果だけ。フィボナッチ・ワードは当ギャラリーの同名の号
身近
ギリシャの雷文・中国の青銅器の雷文・サポテカの織物の greca・包装紙や帯の縁飾り
親戚
アンデスの噛み合う魚・和柄の対称群・フィボナッチ・ワード・ユークリッドリズム・結ばれた輪
生成
generators/mitla-fret.js(mitla-fret.svg 階段雷文・mitla-fret-book.svg 条件と族の帳簿・mitla-fret-tricolor.svg 3 色の帳簿)