かけ算第53号|雷文を色の帯にしてトンネルへ巻く × 雷文の帯を、角を保ったままふくらませる × 回りながら縮む多角形を、布に刷る柄にする
部品を段に重ねて、1 枚の図案にする
第44号から第52号までに作った組み立て(左右の鏡・雷文・六角・トンネル・ふくらみ・色の帯・回りながら縮む多角形)を段として重ね、段の選び方だけで図案が決まる生成器にした。できた絵の鏡は、段ごとに向きを受け渡していけば前もって言い当てられた。左右の鏡で折ると、残る鏡は 90° と 0° だけになる。ただし折る前から 90° の鏡があれば、折っても 1 画素も変わらない。布に刷るなら、平らな模様を折った図案はリピートになり、ふくらみとトンネルの図案は 1 枚柄になる。
なにか
サイケデリックアートの図案を見ていて気づいた組み立てを、第44号から 1 つずつ作ってきた。この号ではそれを段として上から順に通す。特定の作品の構図は写していない。
段は 5 つある。1 段目は左右の鏡で、パネルでは w = (x, y) → (|x|, y)、リピートでは x を周期 32 の三角波で折る。続いてふくらみ(第52号の ζ = K w²)、トンネル(第44号の ξ = α log ζ / s)、模様、色の帯を通す。模様は 4 つ用意した。雷文と回、ハニカム、雷文の回を回りながら縮む正方形に替えたもの、第50号の籠目の図案 B である。回る正方形は t = 0.2 で、回の外側の正方形(1 辺 6)の中に入れた。
見立ては 5 つ置いた。1 つ目は「鏡は段ごとに受け渡される。ふくらみは絵の鏡 θ を 2θ に、トンネルは軸の向き arg α・軸からのずれ θ|α|/s の模様の鏡に運ぶ。左右の鏡で折ると 90° が加わり、0° と 90° 以外は消える。折る前から 90° があれば何も変わらない」。2 つ目は「回を回る正方形に替えると、雷文の対角の鏡は消える」。3 つ目は「平らな雷文を折った図案は 32 × 16 がリピートになり、継ぎ目は 0」。4 つ目は「ふくらみとトンネルは場所ごとに縮尺が変わるので、リピートにならない」。5 つ目は「色の数は部品の色を合わせた数」。
鏡は段ごとに受け渡される
左右の鏡で折った絵 g = h∘fold が鏡 θ を持つとする。右半分の中で映る点を見れば、h も鏡 θ を持つ。右から左へまたぐ点を見れば、h は回転 R_90 R_θ も持つ。2 つを合わせると h は 90° の鏡を持つ。だから h に 90° の鏡がなければ、g に残るのは 90° と、h にあれば 0° だけになる。
パネル 8 枚で、この予言と式を使わない探索(絵の 400 点で鏡の前後の値の差の最大を 0.05° 刻みで調べる)を突き合わせ、8 枚とも一致した。P1(ふくらみ × 雷文)は折る前から 0° と 90° を持ち、折りで変わった画素は 40,000 のうち 0 だった。P2(雷文を 10° 回す)は 85° と 175° が消えて 90° だけになり、14,816 画素が変わった。P3(ふくらみ × 六角を 15° 回す)は 15° ごとの 12 本がすべて消え、90° の 1 本になった。
トンネルでは、揃った α のとき絵の鏡は θ_j = 8√2 j·s/|α| になる(雷文の鏡の軸は x + y = 16j で、間隔は 8√2)。P4(トンネル (1, 1))は 0°・45°・90°・135° の 4 本を持ち、折りで変わった画素は 0 だった。P5(トンネル (2, 1))は折る前に鏡がなく、折ると 90° だけになった。P6 は、ふくらみのあとにトンネルを通した。トンネルの 4 本がふくらみで半分の角に運ばれ、22.5° ごとの 8 本になった。1 つ目の見立ては当たった。
2 つ目の見立ても当たった。平らな雷文を、でたらめな 4,000 点で対角の鏡 (x, y) → (16 − y, 16 − x) に映すと、色が変わった点は 0 だった。回を回る正方形に替えると 482 点が変わった。回は鏡の軸の上にあり、回る正方形には右回り・左回りがあるからである。図案 G(ふくらみ × 雷文と回る正方形 × 左右の鏡)は折る前に鏡がなく、折ると 90° だけが残った。折りで変わった画素は 2,252 で、回る正方形の所だけだった。籠目の図案 H も、折る前は鏡がなく、折ると 90° だけになった。
リピートになる図案と、1 枚柄になる図案
布の寸法は第50号と同じ決めた値を使った。回の外側の正方形の 1 辺を、第50号のタイルの 1 辺 a = 30 mm に合わせたので、模様の 1 単位は 5 mm になる。帯 0.25 単位は 1.25 mm で、刷れる最小の太さ w = 0.5 mm より太い。回る正方形は第50号の式で 13 段まで刷れる。
平らな雷文を三角波で折った R1 と、雷文と回る正方形を折った R2 は、32 × 16(160 × 80 mm)のリピートになった。1 単位を 8 画素にとり、リピートを 2 × 2 に並べたものと、大きい面を直接塗ったものを比べると、131,072 画素のうち違う画素は 0 だった。半分の送り (16, 0)・(0, 8)・(16, 8) では、R1 で 2,304 画素ずつ、R2 で 12,568・12,568・6,496 画素が変わった。縦の線 x = 0 と 16 は鏡で、x = 8 と対角は鏡ではない。3 つ目の見立ては当たった。
ふくらみとトンネルの図案は、場所ごとに縮尺 |dp/dw|(模様の点の、絵の点についての伸び)が変わる。ふくらみは 2K|w| で、P1 なら 52|w| になる。トンネルは |α|/(s|w|) で、P4 なら 14.41/|w| になる。どうずらしても縮尺が合わないので、重なる送りはない。12 方向 × 長さ 0.05〜0.5 の 120 通りずらすと、色が変わった点は、いちばん少ない場合でも P1 で 71.5%、H で 58.2% あった。4 つ目の見立ても当たった。この 8 枚は 1 枚柄(パネル)として刷ることになる。
パネルの 1 辺は P = 900 mm と決めた。帯の太さは mm で f/|dp/dw|·P/2 になる(f は模様の単位での太さで、雷文 0.25・六角 0.12)。ふくらみは四隅でいちばん細く、P1 で 1.53 mm、P3 で 2.55 mm になり、どこでも刷れる。トンネルは真ん中で帯が限りなく細くなるので、帯が 0.5 mm より細くなる円が残る。半径は P4 で 0.0640(28.8 mm)、P5 で 0.1012(45.6 mm)、P6 で 0.1280(57.6 mm)だった。籠目の H は、刷れなくなったタイルが生成だけになり、半径 0.0125(5.6 mm)の円が残る。どの値も、閉じた式と、生成器の段をそのまま差分した縮尺とで 4 桁まで一致した。
5 つ目の見立ても当たった。色は雷文の図案とハニカムの図案が 4 色、籠目の H が藍・茜・生成の 3 色だった。回る正方形は藍と生成で、雷文の帯の色と重なるので増えない。
1 辺 900 mm のパネルを入稿の形にする
(2026-09-25 追記)図案 G を 1 辺 900 mm の原寸で書き出し、刷れる太さの目安に引っかかる所を調べた。目安は第50号の追記で開いた販促スタイル(株式会社トランス)の表から取った。布のインクジェットは線 0.3 mm・ヌキ 0.5 mm、布のシルク印刷(コットンなど)は線 0.5 mm・ヌキ 1 mm である。織り(ジャカード)は、第50号に追記した WOVNS の目安を使った。1 辺 900 mm を 1 枚で織れる幅があるのは Talma 品質(84 dpi)だけなので、線 4 画素(1.21 mm)と 10 画素(3.02 mm)を並べた。刷る色は藍・茜・山吹で、生成は布の地(刷らない所)とみなした。生成の細い所はヌキの目安で見ることになる。
数字の前に置いた見立ては 4 つある。1 つ目は「雷文の帯は四隅で 1.53 mm なので、刷る目安にも織りの 4 画素にも引っかからない」。2 つ目は「回る正方形は内接円の直径 0.5 mm 以上の段まで描いたので、インクジェットでは三角形は 1 つも引っかからず、シルクでは直径 0.5〜1 mm の生成の三角形だけが引っかかる」。3 つ目は「式と原寸の画素は三角形の内心で一致する」。4 つ目は「打ち切りの規則を替えれば、どの目安でも引っかかる三角形はなくなる」。
確かめ方は 2 通りにした。経路 A は式で、回る正方形の三角形を 1 つずつ数え、その場の縮尺から内接円の直径を出す。1 辺 a mm のタイルでは 0 段目が 0.1754·a で、1 段ごとに 0.8246 倍になる。経路 B は式を使わず、400 dpi(14,174 画素四方)の原寸の画素で、色ごとに目安の直径の円を転がし、入らない画素を拾う。画素の距離変換で開きの演算を組み、小さな例で総当たりと全画素一致することを確かめてから使った。
見立ては 4 つとも当たった。ただし 1 つ目の帯の太さは、式でしか見ていない。インクジェットでは細い三角形は 0 個だった。シルクでは右半分で 136 個(左右で 272 個)が引っかかり、どれも生成の三角形で、直径は 0.62〜0.95 mm だった。引っかかる三角形は、どれも回る正方形の最後に描いた段から 1〜3 段外側の生成の段にあり、1〜2 段外側の生成の三角形は全部が 1 mm に届かない。織りの 4 画素では 440 個(刷る色 244・生成 196)、10 画素では 948 個になった。三角形の内心の画素で 2 つの経路を比べると、4 つの目安のどれでも食い違いは 0 だった。直径と目安の差が 3 画素ぶん(0.19 mm)未満の三角形は、境目として別に数えた(シルクで 216 個)。200 dpi で同じことをしても、食い違いは 0 だった。式で細いと出た三角形の画素のうち、原寸の画素で拾われたのはシルクで 99.99%(435 mm²)、織りの 4 画素で 99.83% だった。
画素だけが拾う所もある。三角形の尖った先と雷文の角で、インクジェットで 1,356 mm²、シルクで 3,831 mm² ある。パネル 810,000 mm² の 0.17% と 0.47% にあたる。先は必ず 0 まで細くなるので、どの目安でも残り、刷ると丸まる。10 mm 四方の窓で解像度を 200・400・800・1,600 dpi と振った。細い三角形を拾う割合はどれも 100% のままで、先と角の面積は 22.8・20.5・19.0・17.9 mm² と少しずつ縮んだ。画素の縁のぎざぎざが減るためで、400 dpi の面積は 1 割ほど多めに出ている。
シルク用には、打ち切りの規則を替えた版を作った。刷る色の三角形は線の目安以上、そのあいだの生成の三角形はヌキの目安以上になる段までで止める。パネルの真ん中から 450 mm の所では、描く段が 16 段から 13 段に減る。この版では式で細い三角形は 0 個で、原寸の画素でも内心が拾われた三角形は 0 個だった。織りの 4 画素に合わせた版も同じく 0 個だった。織りの 10 画素(3.02 mm)では雷文の帯も細くなる。帯は式から、真ん中から 322 mm より外で 3.02 mm を下回るので、三角形を減らしてもパネルの 25% ほどが残る。
入稿用のファイルは 2 組作った。インクジェット用は 200 dpi(7,087 画素四方)の PNG と、同じ絵を 900 mm 四方の 1 ページに原寸で置いた PDF である。200 dpi は 2 社の入稿の案内に合わせた。布プリントの ING-JET.NET(株式会社応援染隊)は 150〜300 dpi を、Fabric Design(Image Magic)は 200 dpi・RGB を勧めている。シルク用は段を減らした版から、藍・茜・山吹の版 3 枚を 400 dpi の白黒で書き出し、3 ページの PDF にもした。版どうしの重なりは 0 画素、どの版にも入らない画素は生成とだけ一致した。ファイルは大きいのでギャラリーには置いていない。generators/motif-compose-print.js で作り直せる。
機械で分かる範囲と、目でしか分からない範囲
機械で確かめたのは、8 枚の鏡の予言と探索の一致と、折りで変わる画素の数である。リピートの継ぎ目が 0 であることと半分の送りで重ならないこと、パネルがずらしで重ならないことも確かめた。刷れる太さの 2 通りの出し方の一致と色の数も見た。
どの組み合わせが図案として美しいか、布に刷ったときに帯や回る正方形がどう見えるかは、人の目でしか分からない。
どう作ったか
生成器は generators/motif-compose.js で、段はどれも前の号の生成器を呼んでいる。雷文とハニカムの距離とトンネルの α は第44号(generators/fret-tunnel.js)から使った。ふくらみと模様の置き方、鏡の予言は第52号(generators/fret-bulge.js)から使った。回る正方形と籠目、刷れる段の数は第50号(generators/polygon-textile.js)から使った。
確かめていないこと。a = 30 mm と P = 900 mm は出典のない決めた値である。w = 0.5 mm は、第50号とこの記事の追記で刷り屋と織りの目安と比べたが、実際に刷って(織って)確かめてはいない。インクのにじみ、生地の伸び、版の位置合わせのずれ(トラップ)は入れていない。回る正方形の t = 0.2 とふくらみの K は自分で選んだ。リピートの半分の送りは 3 通りだけ試し、もっと細かい送りがないことの証明はしていない。折りの規則は自分で導き、8 枚の図案で確かめただけである。パネルの刷れない円に何を置くか(無地にするか別の柄にするか)は決めていない。
出典
- 数理
- 折りの鏡の規則、トンネルの鏡の角 θ_j = 8√2 j·s/|α|、縮尺 |dp/dw| と刷れる太さの式は自分で導き、数値で確かめた。本文では新しく開いた原典はない
- 入稿の目安
- (2026-09-25 追記)刷れる太さは販促スタイル(株式会社トランス)「印刷方法ごとの線幅の目安について」2025-07-01 更新、織りは WOVNS「Design」(どちらも出典の詳細は第50号)。解像度は ING-JET.NET(株式会社応援染隊)「データ制作について」(ページに日付の記載なし)、https://www.ing-jet.net/data_seisaku.html(2026-09-25 閲覧・推奨 150 dpi、最大 300 dpi、ファイル名は半角英数字)。Fabric Design(Image Magic)「入稿データについて」2026-06-14 公開・2026-07-24 更新、https://fabric-design.meetmygoods.com/guide/about_print_data/(2026-09-25 閲覧・200 dpi・RGB を推奨)
- 親戚
- 雷文を色の帯にしてトンネルへ巻く・雷文の帯を、角を保ったままふくらませる・回りながら縮む三角形と六角形・回りながら縮む多角形を、布に刷る柄にする・ハニカム
- 生成
- generators/motif-compose.js(motif-compose.svg 図案 G・motif-compose-book.svg 帳簿)。追記は generators/motif-compose-print.js(motif-compose-print.svg 検査の図・入稿用のファイル)