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かけ算第42号|オオウチ錯視と引き伸ばした市松 × 周辺ドリフトと扇の弧

オオウチ図形を 4 段の明るさで塗る

オオウチ錯視の長方形を、周辺ドリフトの黒・濃い灰・白・薄い灰で塗った。オオウチ錯視の模型である勾配の最小二乗は、1 周期まとめて見積もると 4 段の並びの流れをまったく拾わない。狭い窓ごとに見積もって平均すると、流れは周辺ドリフトの模型と同じ向きに出る。正方形の升でも、4 段で塗ると内と外の見積もりがずれる。

黒・青・生成り・砂色の横長の長方形が、横に 4 色の順で並び縦には 2 色で交互に並ぶ地の中央に、同じ升を 90° 回して縦長に並べた円が置かれている
外は横 64・縦 16 の升で、横に進むと黒 → 濃い灰 → 白 → 薄い灰が一巡し、縦は 2 色の往復になる。円の中は 90° 回した。濃い灰と薄い灰は周辺ドリフトと同じ相対輝度(黒から白までの 29.3% と 70.7%)に置いた。

なにか

オオウチ錯視の記事では、目の揺れから動きを見積もる最小二乗が、勾配のノイズで縮むことを使った。周辺ドリフトの記事では、明暗差の大きいところほど信号が早く出ると置き、時空間の運動エネルギーで流れる向きを出した。2 つの記事は別の仕組みを置いている。そこで、オオウチ図形の升 (i, j) を 4 段の (i + 2j) 番目の明るさで塗り、同じ絵を両方の模型にかけた。

周辺ドリフトの模型では、外の横の並び(黒 → 濃い灰 → 白 → 薄い灰)は 1 次の対向指数 0.0684 で右へ流れ、縦の並び(黒と白、濃い灰と薄い灰の往復)は 2×10⁻¹⁵ で流れない。円の中は 90° 回してあるので、同じ強さで下へ流れる。

最小二乗には流れが映らない

4 段で塗ったオオウチ図形と 2 つの模型の値、窓の位置ごとの見積もりの曲線、灰の明るさを振った 2 本の曲線、縦横比 1・2・4 の図形と縁の数え方の表
上から、図形と 2 つの模型の値、窓の位置ごとの見積もり、灰の明るさを振った比べ、正方形の升の偏りを並べた。

見立ては「勾配の最小二乗にかけても、4 段の並びはドリフトの向きに動く」だった。外れた。潜時の模型の応答を 1 周期と 200ms で積むと、見積もりの速さは 1×10⁻⁹ で、窓を狭くしたときの場所ごとの値(最大 0.083)とは桁が 7 つ違う。

理由は式で書ける。応答が各点の明るさ c と時刻 t だけで決まる I = F(c(x), t) なら、最小二乗の分子 Σ Ix·It は ∫∫ c′(x)·∂F/∂c·∂F/∂t dx dt になる。各時刻で x の積分は c についての閉じた線積分 ∮ g(c) dc で、並びが 1 周して c が元に戻るので 0 になる。潜時の模型でも順応の模型(1×10⁻¹⁰)でも同じで、並びの順序によらない。式の微分を使わず、応答を格子に置いて差分した経路でも 1.5×10⁻⁵ で、刻みを半分にすると 3.8×10⁻⁶ と 4.1 分の 1 になった。差分の誤差が刻みの 2 乗で減っているので、0 に向かっている。

窓ごとに見積もって平均すると流れる

窓を 1 周期より狭くすると、場所ごとの見積もりは 0 でなくなる。1 周期 64(1 段 16)の並びにガウスの窓を置き、窓の中心を 64 か所ずらして見積もった。分子を 1 周期で足すと 0 のままだが、窓ごとに割った速さを平均すると、窓 σ = 2 で +0.0166、4 で +0.0108、8 で +0.0015、16 で 7×10⁻⁷ になった。+ は黒 → 濃い灰 → 白 → 薄い灰の向きで、周辺ドリフトの模型と同じである。

並びを逆にすると σ = 4 で −0.01078 とちょうど反転し、黒 → 灰 → 白 → 灰の対称な並びでは 5×10⁻¹⁷ だった。ぼけを 0.5 と 2 に、段の長さを 8 と 32 に変えても符号は + のままだった。

強さの形は違った。灰のコントラスト a を振ると、周辺ドリフトの模型の山は a = √2 − 1 にあるが、窓ごとの平均(σ = 4)は a = 0.9 で最大になり、a = 1 で 0 に戻る。a が 1 に近いと黒と濃い灰の境の明暗差が小さくなり、その窓で分母が小さくなって値が大きく出る。窓を σ = 2 まで狭くすると、a = 0.99 で 1.38 まで膨らんだ。

正方形の升でもずれる

見立ては「4 段で塗っても、正方形の升なら内と外の差は 0」だった。これも外れた。横に隣る升の境(縦の縁)では明るさが 1 段ずつ変わり、明暗差の 2 乗の平均は 1 + a² = 1.1716 になる。縦に隣る升の境(横の縁)では 2 段変わるので、2(1 + a²) = 2.3431 になる。正方形でも縦と横の勾配の量が 2 倍違い、白黒の縦横比 2 と同じ偏りが残る。

目のぼけ 1・短い辺 4・勾配のノイズ 0.02 で、内と外の縮みの差 D を出した。縦横比 1 で 0.2769(白黒は 0)、2 で 0.4465(白黒 0.2736)、4 で 0.5475(白黒 0.4663)だった。正方形の 4 段の 0.2769 は、白黒の縦横比 2 の 0.2736 に近い。ぼかした絵で積んだ偏りの比(4 段 ÷ 白黒)は、長い辺 4・8・16・32 で 3.160・2.393・2.164・2.076 と 2 に近づいた。短い辺を 4 から 16 に変えても 2.1642 のままで、比は長い辺だけで決まっていた。

→ オオウチ錯視と引き伸ばした市松(勾配の最小二乗)

→ 周辺ドリフトと扇の弧(潜時の模型と対向エネルギー)

→ 和柄の対称群(市松)

どう作ったか

生成器は generators/ouchi-drift.js で、周辺ドリフトの生成器(潜時の場と対向エネルギー)とオオウチ錯視の生成器(ぼかした矩形波と縮み)をそのまま読み込んだ。1 次元の並びは段ごとにぼかした箱の和で書き、応答の微分は式から出した。時間は 0.25ms 刻みで 200ms まで積んだ。2 次元の M は、升ごとにぼかした箱の積を足した絵の勾配を、横 4 段・縦 4 段の 1 周期の箱で積んだ。

確かめていないこと。人の目でこの絵が流れて見えるか、円が滑って見えるかは確かめていない。窓ごとの見積もりを平均する段は自分で置いた仕組みで、Fermüller らの模型にも周辺ドリフトの模型にもない。潜時・時定数・ノイズ・窓の大きさは 2 つの記事と同じ自分で置いた値で、生理の測定値とは比べていない。対向エネルギーは 1 次元の並びごとに出し、2 次元の窓は使っていない。偏りの比が長い辺だけで決まる理由は確かめていない。

出典

数理
勾配の最小二乗とノイズでの縮みはオオウチ錯視と引き伸ばした市松(そこでの出典は Fermüller・Pless・Aloimonos 2000)、潜時の模型と対向エネルギーは周辺ドリフトと扇の弧の生成器をそのまま使った。Σ Ix·It が閉じた線積分になって消えること、窓ごとの平均、縁の数え方は自分で導き、数値で確かめた
親戚
オオウチ錯視と引き伸ばした市松・周辺ドリフトと扇の弧・カフェウォール錯視・和柄の対称群
生成
generators/ouchi-drift.js(ouchi-drift.svg 4 段のオオウチ図形・ouchi-drift-book.svg 帳簿)