シュタイナー鎖
円の輪が一度閉じると、どこから並べ始めても閉じる。反転で同心円に写すと理由が見え、鎖の円の中心は楕円の上に乗る。
なにか
大きい円の内側に小さい円を置き、そのあいだに両方へ接する円をぐるりと並べていく。隣どうしも接するように置いていくと、ふつうは一周したところで最後の円が最初の円と重なるか、隙間が空く。うまく大きさを選べば、ちょうど閉じる。
問題はここからで、一度閉じる配置を見つけたら、並べ始める位置をどこにずらしても閉じる。閉じるかどうかは 2 つの円の関係だけで決まっていて、どこから始めたかには一切よらない。Steiner が 1826 年に示したもので、英語では Steiner porism と呼ぶ(Schwartz と Tabachnikov, arXiv:1811.08030 の p.1)。このページでは閉形定理と書く。
ずらしても崩れない
同心円のあいだなら、輪が閉じるのは当たり前に見える。円をぐるりと回すだけの対称性があるからだ。ところが内の円をずらすと、鎖の円は大きさがばらばらになる。それでも閉じる。
数で確かめた。開始角を 16 通りに振り、隣どうしの接し方、内の円との接し方、外の円との接し方をすべて測る。継ぎ目(最後の円と最初の円)のずれは 10⁻¹⁵ から 10⁻¹³ で、隣どうしのずれと同じ桁にとどまった。閉じ方が特別に甘いということがない。
種明かしは反転にある。交わらない 2 つの円は、うまい点を中心にして反転(円に関する鏡映)すると、同心円に写る。中心を結ぶ線の上に、2 円の共軸族が点に潰れる場所が 2 つあり、そこを反転の中心に取ればよい。実際に写すと 2 円の中心のずれは 0 になった。反転は接することを保つので、同心円のあいだで作った鎖を戻せば、元の 2 円の鎖になる。同心円なら回転の対称性で明らかに閉じる。ずらしても崩れないのはそのためだった。
閉じる条件も同心円に写せば読める。半径 ρ₁ < ρ₂ の同心円のあいだに n 個並ぶ条件は sin(π/n) = (ρ₂ − ρ₁)/(ρ₂ + ρ₁) だけで、半径の比しか出てこない。元の 2 円がどう置かれていても、反転して比を測れば個数が決まる。
中心は楕円に乗る
鎖の円の中心がどこを通るかを追うと、楕円が出てきた。焦点は 2 つの円の中心である。しかも長軸の和が何になるかは、初等的に出る。鎖の円は内の円に外接するので、その中心から内の円の中心までの距離は(内の半径 + 鎖の半径)。外の円には内接するので、外の円の中心までは(外の半径 − 鎖の半径)。足すと鎖の半径が消えて、2 円の半径の和になる。鎖の円がどれだけ大きくても小さくても、和は変わらない。
測ると、開始角 20 通り × 円の数だけ取った距離の和が、2 円の半径の和と 10⁻¹⁵ で一致した。式のほうが先に出るので驚きはないが、道具が正しく動いていることの検算になる。
どう作ったか
生成器は generators/steiner.js で、点と円の反転、共軸族の極限点、同心円への変換、同心円の鎖、逆変換を順に書いた。閉じる配置は、内の円の中心を決めてから半径を二分探索で合わせて作る。鎖の開始角を 16 通りに変えても継ぎ目のずれが 10⁻¹² 未満に収まることを、5 通りの配置で確かめた。
出典
- 数理
- 閉形定理は J. Steiner, „Fortsetzung der geometrischen Betrachtungen", J. reine angew. Math. 1 (1826) 252–288 の pp.255–256 にある(Göttingen のデジタル版のページ画像で読んだ。2 つの円の両方に接する円の列が、ある出発点で一周して閉じるなら、どこから始めても同じ個数・同じ周回数で閉じる)。Steiner 自身の論じ方は相似の中心と共通のべきによるもので、同心円に写す形ではない。反転で同心円に写す証明は R. E. Schwartz と S. Tabachnikov, arXiv:1811.08030 の p.3 が「簡単に証明できる」として書いている。ここでは名前だけ借りて、反転も極限点も鎖も自分で書いて測った。中心が楕円に乗ることの式は自分で導いた
- 親戚
- アポロニウスのガスケット・インドラの網・双曲タイリング {7,3}・双曲ボロノイ・ルーローの三角形
- 生成
- generators/steiner.js(steiner.svg 鎖を重ねた図・steiner-book.svg 閉形定理と楕円)