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シュタイナー鎖

円の輪が一度ぴたりと閉じたら、どの位置から並べ始めても閉じる。ずらしても崩れない。

大きい円と偏心した小さい円のあいだに、両方に接する7個の円の輪。開始角を少しずつずらした輪を重ねて包絡線が見えている
外の円と、少し偏った内の円(茜)のあいだに、両方に接しながら互いに接する 7 個の円を並べた。並べ始める角度を少しずつずらした輪を 30 通り重ねてある。どの角度から始めても、7 個でぴたりと閉じる。

なにか

大きい円の内側に小さい円を置き、そのあいだに両方へ接する円をぐるりと並べていく。隣どうしも接するように置いていくと、ふつうは一周したところで最後の円が最初の円と重なるか、隙間が空く。うまく大きさを選べば、ちょうど閉じる。

問題はここからで、一度閉じる配置を見つけたら、並べ始める位置をどこにずらしても閉じる。閉じるかどうかは 2 つの円の関係だけで決まっていて、どこから始めたかには一切よらない。シュタイナーの閉形定理と呼ばれるものだと聞く。

ずらしても崩れない

同心の場合と偏心の場合の鎖を開始角16通りで重ねた図、鎖の円の中心が描く楕円の図、接し方のずれの表
左は同心、中央は偏心させたもの。どちらも開始角を 16 通りに振って重ねてある。右は鎖の円の中心が描く軌跡。表は接し方のずれを数で見たもの。

同心円のあいだなら、輪が閉じるのは当たり前に見える。円をぐるりと回すだけの対称性があるからだ。ところが内の円をずらすと、鎖の円は大きさがばらばらになる。それでも閉じる。

数で確かめた。開始角を 16 通りに振り、隣どうしの接し方、内の円との接し方、外の円との接し方をすべて測る。継ぎ目(最後の円と最初の円)のずれは 10⁻¹⁵ から 10⁻¹³ で、隣どうしのずれと同じ桁にとどまった。閉じ方が特別に甘いということがない。

種明かしは反転にある。交わらない 2 つの円は、うまい点を中心にして反転(円に関する鏡映)すると、同心円に写る。中心を結ぶ線の上に、2 円の共軸族が点に潰れる場所が 2 つあり、そこを反転の中心に取ればよい。実際に写すと 2 円の中心のずれは 0 になった。反転は接することを保つので、同心円のあいだで作った鎖を戻せば、元の 2 円の鎖になる。同心円なら回転の対称性で明らかに閉じる。ずらしても崩れないのはそのためだった。

閉じる条件も同心円に写せば読める。半径 ρ₁ < ρ₂ の同心円のあいだに n 個並ぶ条件は sin(π/n) = (ρ₂ − ρ₁)/(ρ₂ + ρ₁) だけで、半径の比しか出てこない。元の 2 円がどう置かれていても、反転して比を測れば個数が決まる。

→ アポロニウスのガスケット(隙間に入る円)

→ 双曲タイリング(反転が動かす世界)

中心は楕円に乗る

鎖の円の中心がどこを通るかを追うと、楕円が出てきた。焦点は 2 つの円の中心である。しかも長軸の和が何になるかは、初等的に出る。鎖の円は内の円に外接するので、その中心から内の円の中心までの距離は(内の半径 + 鎖の半径)。外の円には内接するので、外の円の中心までは(外の半径 − 鎖の半径)。足すと鎖の半径が消えて、2 円の半径の和になる。鎖の円がどれだけ大きくても小さくても、和は変わらない。

測ると、開始角 20 通り × 円の数だけ取った距離の和が、2 円の半径の和と 10⁻¹⁵ で一致した。式のほうが先に出るので驚きはないが、道具が正しく動いていることの検算になる。

どう作ったか

generators/steiner.js。反転(点と円の像)、共軸族の極限点、同心円への変換、同心円の鎖、逆変換を順に書いた。閉じる配置は、内の円の中心を決めて半径を二分探索で合わせる。機械検査は 11 件。反転を二度かけると元に戻る、反転が接することを保つ、交わらない 2 円が同心円に写る(中心のずれが 10⁻¹² 未満)、同心円の条件式 sin(π/n) が個数と合う、閉形定理(開始角 16 通りで継ぎ目のずれが 10⁻¹² 未満・5 通りの配置)、継ぎ目のずれが隣どうしと同じ桁、中心から 2 焦点への距離の和が 2 円の半径の和と一致、内円を偏心させても個数が変わらない、交わる 2 円では同心円に写せないことを検出する、出荷 SVG 2 枚。

出典

数理
J. Steiner (1826) の閉形定理(伝聞)。反転で同心円に写すという筋道も定石だと聞く。ここでは名前だけ借りて、反転も極限点も鎖も自分で書いて測った。中心が楕円に乗ることの式は自分で導いた
親戚
アポロニウスのガスケット双曲タイリング {7,3}双曲ボロノイルーローの三角形
生成
generators/steiner.js(steiner.svg 鎖を重ねた図・steiner-book.svg 閉形定理と楕円)