太陽の石
環ごとに回転対称の位数がある。写真から読めたのは中心の 4、日の記号の 20、外環の 2。重ねれば最大公約数の 2 に落ち、上の年の記号 1 つで 1 になる。太陽の石は曼荼羅ではなく文字盤である。
なにか
アステカの「太陽の石」は、1790 年 12 月 17 日にメキシコ市の中央広場の敷石を直す工事で見つかった。直径 3.58 m、厚さ 98 cm、重さはおよそ 24 t の玄武岩の円盤である。いつ彫られたかは説が分かれ、メキシコ国立人類学歴史研究所(INAH)は刻まれた「13 の葦」を 1479 年と読んで、アシャヤカトルの治世に完成したと見ている。中心の顔のまわりに前の 4 つの太陽を表す 4 つの四角、その外に 20 の日の記号の環、光線と箱の環、いちばん外に 2 匹の火の蛇。上には「13 の葦」という年の記号が 1 つある。暦石とも呼ばれるが、日付を数える道具ではなく、暦の構造を彫った石である。
ここで見るのは彫刻の意味ではなく、環ごとの回転対称の位数と、それを重ねた全体の対称だけ。位数は写真から測れる。全体の対称は算数で出る。
写真から環の位数を読む
Wikimedia Commons の CC BY-SA 4.0 の写真(Juan Carlos Fonseca Mata 撮影、正面からの全景)を使い、照明を大きなぼかしで均してから、半径の帯ごとに角度方向の明るさの列を 3,600 点で取り、そのフーリエ変換の n 次成分を 3 から 120 次の中央値で割った。位数 n の環なら n 次が突き出る。写真は載せず、起こした帳簿だけを載せている。
中心をどこに置くかで結果は動く。中心がずれると 4 つの四角の環に 3 次と 5 次の側波帯が出て、環の縁からは 1 次と 2 次が出る。だから位数ごとに中心を最適化してはいけない(最初にそうして、中心の環が 5、日の記号の環が 2 と出た)。写真で最も強い対称、中心の 4 つの四角の 4 次が最大になる点を中心に決め、その中心で全部の環を読んだ。結果は中心の四角 4(63 倍)、日の記号の枠 20(3.5 倍)、外環 2(23 倍)。解像度を半分にしても 3 つとも同じ位数で、倍率もほぼ同じ。日の記号の 20 は弱い。20 の記号は形が全部違い、周期は枠にしかないので、幅 60 px の帯に限ってようやく見える。光線の先の帯は 4 が最有力だが 2.3 から 3.0 倍にとどまり、解像度で 40 と入れ替わるので、読めたとは言わない。
比較のために、日の記号の枠の 20 次が最大になる中心も探した。2 つの中心は 25 px(円盤の直径の 0.7%)離れていて、その中心では日の記号の 20 が 5.7 倍に立ち、外環は 2 のまま、中心の環は 3 に化ける(側波帯)。斜めから撮った写真では同心円が同心のままでないので、環ごとに少しずつ中心が違うのは当然で、位数の読みはどちらの中心でも 20・2 で一致した。
重ねれば最大公約数、印 1 つで 1
位数 n₁, n₂, … の環を同じ中心で重ねた図形を、回転で自分に重ねるには、すべての環を同時に重ねなければならない。2π/m の回転がそれをするのは m がすべての nᵢ を割るときで、最大の m は最大公約数である。4・20・8・2 なら 2。総当たりで印の集合を回して確かめると、5 組すべてで最大公約数と一致した。
石にはもう 1 つ、上に年の記号が 1 つだけある。位数 1 の環を重ねたことになるので、全体の回転対称は、ほかの環の数と 1 の最大公約数で 1 になる。太陽の石を自分に重ねる回転は 0° しかない。環は高い対称を持つが、全体は向きを持つ。曼荼羅ではなく文字盤で、20 の環は日の名の環、その上で年の記号が針の役をしている。
20 の日の名と 365 日の年が噛み合うと、年の初日に来る名は 365 = 18×20 + 5 だから 20/5 = 4 つ(アステカでは兎・葦・火打石・家の順に回る)。13 の数と組んで 4 × 13 = 52 年で一周する。マヤ暦の噛み合いと同じ勘定で、太陽の石の 20 と 4 は、その 20 と 4 である。
どう作ったか
写真から帳簿を起こす手順は次のとおりである。照明を均し、石の中心と縦横比を探してから、環ごとに角度方向の明るさの列を取り、フーリエ変換で何回対称が強いかを見る。解像度を 1.0 と 0.5 に変えても答えが同じになることを確かめた。生成器 generators/sun-stone.js が、環の印の集合と回転の総当たり、文字盤の図、帳簿の図を書く。年の担い手の勘定はマヤ暦の噛み合いと同じ計算を使っている。
最初は、何回対称を測るかごとに中心を合わせ直していた。すると中心の環が 5、日の記号の環が 2 と読めてしまった。どちらも中心のずれが作った見かけの山である。中心は、何を測るかと関係なく決めなければならない。写真は輪郭を起こすのにだけ使い、画像は載せていない。起こしたデータは写真と同じ CC BY-SA 4.0 で扱う。
出典
- 史実
- 発見の日付は A. de León y Gama, Descripción histórica y cronológica de las dos piedras(1792・archive.org の本文)の「1790 年 12 月 17 日、わずか半バーラの深さで見つかった」と、INAH の頁(2025 年 12 月 17 日の記事)。直径 358.0 cm・厚さ 98.0 cm と環の構成(ollin の印の中の Tonatiuh・4 つの前の太陽・20 の日の記号・2 匹の xiuhcóatl)は INAH のメディア目録(国立人類学博物館 10-0001123)。「およそ 24 トン」と、1479 年・アシャヤカトルの治世に完成したという見方は INAH の頁。上の「13 の葦」は León y Gama §66 が「13 の小さな丸のついた葦の記号」と書いている。以前ここに書いていた 1502〜1520 年(モクテスマ 2 世の治世とする説)と 24,590 kg は、開けた資料では確かめられなかったので外した。年の担い手の順(兎 1・葦 2・火打石 3・家 4)は León y Gama §5 による
- 写真
- Juan Carlos Fonseca Mata「Piedra del Sol en MNA」Wikimedia Commons・CC BY-SA 4.0・3,335×2,822 px。環ごとの角度列にだけ使った
- 数理
- 回転の位数の最大公約数(初等)。フーリエ変換で角度の周期を読む方法(初等)。ここで確かめたのは、写真の環の位数と、重ねた環の対称の総当たりだけ
- 身近
- 時計の文字盤(12 と 60 と針)・方位盤・自転車のスプロケットの歯数
- 親戚
- マヤ暦の噛み合い・インカの石組・ウルクの円錐モザイク・和柄の対称群
- 生成
- generators/sun-stone.js(sun-stone.svg 文字盤・sun-stone-book.svg 環の位数と対称の帳簿)・tools/explore/sun-rings.py(写真→generators/data/sunstone/rings.json)