ウルクの円錐モザイク
いちばん古いモザイクの画素は六方格子に並ぶ。写真から頭を起こして測ると、隣の方向は 60° に集まり、殻の比は √3 に寄った。六方は最も密で、接して続く方向が 3 つあるから、斜めの線が途切れない。
なにか
メソポタミアのウルクのエアンナ地区(前 4 千年紀の終わりに最盛)の神殿は、壁の表面を何千もの円錐で覆っていた。円錐は長さ 10 cm ほどの焼いた粘土か石膏で、湿った壁に押し込み、外に出た頭を赤・黒・白に塗り分けて、ジグザグ・三角・菱形・縞の模様を作る。復元はベルリンのペルガモン博物館の中の古代オリエント博物館にある。知られているかぎり最古のモザイクで、色のついた点で図を作るという意味では最古の画素でもある。
ここで見たのは、その画素がどう並んでいるかである。丸い頭を隙間なく押し込めば六方に詰まるはずだが、手で一つずつ押した壁で実際にどうなっているかは、写真から測るしかない。
写真から起こした並び
Wikimedia Commons の CC BY-SA 4.0 の写真(ペルガモン博物館の復元壁、Dosseman 撮影)から、半円柱の最も平らな中央 1400×1400 px を切り、照明を均して、頭の中心を局所極大として起こした。頭の間隔は自己相関の最初の山で 86 px。ぼかしの幅 σ を 17・22・26 px の 3 通りに振ると、頭は 266・231・155 個になる。
並びの型は 2 つの量で決まる。各頭の隣(距離が間隔の 1.35 倍未満)の方向を並べて隣どうしの隙間の角を測ると、六方なら 60°、正方なら 90° に集まる。写真では 45〜75° が 77%、75〜105° は 8%(σ = 17 px)。距離の分布の第 1 の山と第 2 の山の比は、六方なら √3 = 1.732、正方なら √2 = 1.414 で、写真では 1.64〜1.72。どちらの量も、σ を振っても六方側にとどまった。隣が 6 個ある頭は 38%(σ = 17 px)で、手で押した壁は完全な六方格子ではないが、型は六方である。
頭を明るさの中央値で暗と明に分けると 133 個ずつになる。暗い頭どうしの隣接の方向を格子の向き(2.5°)から測ると、横の列(0° と 180° の 15° 内)が 104 に対して、斜めの 2 方向(45〜75° と 105〜135°)の合計が 260 で、2.5 倍。写真のジグザグの腕は格子の対角に沿っている。
六方の画素は斜めが途切れない
同じ大きさの円を平面に最も密に詰めるのは六方で、密度は π/(2√3) = 0.9069、正方なら π/4 = 0.7854(Thue、Fejes Tóth)。一辺 400 の箱に格子点を置いて円の面積を数えると 0.9040 と 0.7815 で、縁の欠けぶんだけ小さく、どちらも 0.5% 内で式に一致した。
画素として使うときに効くのは密度より方向である。六方格子では接する隣が 6 つあり、接して続く直線の方向が 0°・60°・120° の 3 つある。正方格子では隣が 4 つで、接して続く方向は 0° と 90° の 2 つ。正方格子の 45° の対角線は角で触れるだけで、丸い頭ならつながって見えない。六方の画素で斜めの線を描くと、線は途切れない。ウルクのジグザグが 60° の腕でできているのは、格子がそれを許すからである。
カードの図はこの規則で作った。六方格子の軸座標 (a, b) で、b を k 行ごとに折り返し、60° の腕では a を一定に、120° の腕では a + b を一定にして幅 1 の鎖を引く。鎖は 4 本おきで、番号の偶奇で墨と茜を交互にした。色のついた頭の隣接を数えると、横の列 0°: 0、斜め 60°: 684、120°: 670 で、腕は横の列には並ばない。
どう作ったか
写真から円錐の頭を起こす手順は次のとおりである。照明を均し、自己相関で頭の間隔を出し、ぼかした画像の局所極大を頭とみなして、隣の方向の隙間と、近い順の殻の距離の比を測る。頭は明るいものと暗いものの 2 色に分けた。写真は載せず、起こした点だけを載せている。生成器 generators/uruk-cone.js が、六方格子の座標、密度の数え上げ、ジグザグの規則、カードと帳簿の図を書く。
写真は輪郭を起こすのにだけ使い、画像は載せていない。起こしたデータは写真と同じ CC BY-SA 4.0 で扱う。撮影者は Dosseman(Dick Osseman)。
出典
- 史実
- 円錐の材料・色・模様とエアンナの年代は、ベルリン国立博物館群の古代オリエント博物館が Google Arts & Culture に出している VA 11000 の解説(L. Martin 執筆)の「長さ約 10 cm の焼いた粘土か石膏の円錐」「頭は黒・赤・白に塗られた」「菱形・三角・縞・ジグザグ」「エアンナの発展は 4 千年紀の終わりに頂点に達した」、同館の museum-digital の VA 10997(R.-B. Wartke 執筆)で読んだ。以前ここに書いていた「石の円錐を使った石錐神殿がいちばん古い」は、開けた資料では確かめられなかったので外した
- 写真
- Dosseman(Dick Osseman)「Pergamon Museum Cone mosaics from temple district facade of Eanna in Uruk 8057」Wikimedia Commons・CC BY-SA 4.0。中央 1400×1400 px から頭を起こした
- 数理
- 円の最密充填が六方であること(A. Thue の 1910 年の証明と、それを完全にした L. Fejes Tóth。H.-C. Chang と L.-C. Wang, arXiv:1009.4322 の p.1 が「Thue の元の証明は不完全で、最初の完全な証明は Fejes Tóth による」と書き、参考文献に Thue 1910 と Fejes Tóth, Math. Z. 48 (1943) を挙げている。T. C. Hales, arXiv:math/9811071 の p.5 は、Thue の最初の証明を 1892 年、2 つめを 1910 年としている)。ここで確かめたのは、写真の頭の並びが六方の型であることと、六方と正方の密度・接する方向の数え上げだけ
- 身近
- ドット絵・点描・ビーズ織り(ペヨーテステッチは六方、ルームは正方)・LED の並び
- 親戚
- ハニカム・インカの石組・アンデスの噛み合う魚・トゥルシェ
- 生成
- generators/uruk-cone.js(uruk-cone.svg 六方格子のジグザグ・uruk-cone-book.svg 写真から起こした並びと格子の帳簿)・tools/explore/uruk-pack.py(写真→generators/data/uruk/pack.json)