かけ算第24号|トゥルシェ × コーラム
1 か所ひねると輪の本数がちょうど 1 本動く。その法則が成り立つ条件を、2 つの作品を突き合わせて詰めた。
なにか
トゥルシェ・タイルはタイルを 1 枚回す。コーラムは鏡を 1 枚置く。別々の作品として収蔵したが、操作は同じ型をしている。どちらも「1 か所に集まる 4 つの端を 2 組に分ける、その分け方を変える」ことで、模様の輪をつなぎ替える。
コーラムの側では、鏡を 1 枚足すと輪の本数がちょうど 1 本増えるか減るかで、変わらないことは一度もなかった。全位置を総当たりして 0 が出ない。この「ちょうど ±1」からは、輪の本数の偶奇が鏡の枚数だけで決まること、一筆書きに要る鏡が最少で「輪 − 1」枚であることが順に出てくる。強い法則である。
では 0 は決して出ないのか。トゥルシェで同じ測り方をすると、出る。どういうときに出るのかを詰めたのがこの号で、答えは「輪が閉じているか」と「盤に縁があるか、周期でつながっているか」の 2 つに掛かっていた。
縁があると 0 が出る。犯人は開いた鎖
縁のあるトゥルシェの盤では、弧は閉じた輪だけでなく、縁から縁へ抜ける開いた鎖にもなる。この鎖の本数は一辺 N に対してちょうど 2N 本で、どのタイルを回しても変わらない。縁の中点は 4N 個あり、鎖 1 本が 2 個ずつ使うからである。N = 3 から 10 まで 35 面を数えて例外はなかった。
そして 1 枚ひねったときの変化を全位置で数えると、1,520 位置のうち826 位置で 0 になる。半分以上である。その 826 位置はすべて開いた鎖に触れていた。閉じた輪だけに触れる位置で 0 になったものは 1 件もない。鎖には端があるので、つなぎ替えても本数が変わらない組み合わせが作れてしまう。
縁をなくしても 0 は出る。今度は 1 周する輪
盤の縁を貼り合わせてトーラスにすると、開いた端がなくなって全部が閉じた輪になる。それでも 0 は出た。1,520 位置のうち 66 位置で、割合にすれば 4% ほど。最初に一辺 4・6・8 の盤を 3 種ずつ見たときは 1 件も出ず、危うく「トーラスなら ±1」と書くところだった。数を増やして見つかった。
この 66 位置はすべて、トーラスを 1 周する輪に触れていた。1 周する輪が 1 本もない盤を 11 面選んで全位置を叩いても、0 は 1 度も出ない。平面の閉曲線は必ず内と外を分けるので、つなぎ替えれば合流か分裂のどちらかしか起こらない。トーラスを 1 周する輪は内と外を分けないから、つなぎ替えても 1 本のまま残れる。
1 周する輪の本数の偶奇は、盤の一辺の偶奇で決まる
1 周する輪が何本できるかを、一辺 N を 4 から 11 まで、それぞれ 300 面ずつ数えた。本数の偶奇は N の偶奇と必ず一致する。N が奇数なら 1 本か 3 本、偶数なら 0 本か 2 本か 4 本で、2,400 面に例外がなかった。奇数の盤では 1 本以上あることが保証されるので、300 面すべてに 1 周する輪がある。
理由は 2 色の塗り分けにある。トゥルシェの模様は、格子点の色を (x+y) mod 2 で決めれば弧の両側が必ず違う色になる(トゥルシェの作品で確かめた恒等式)。ところが周期でつなぐと、x を N だけ進めたときに色が元に戻らなければならない。N が奇数だと反転してしまい、塗り分けが盤全体では成り立たない。塗り分けができる盤では弧はすべて色の境界なので分離的な閉曲線になり、1 周する輪は打ち消し合って偶数本になる。できない盤では、色が 1 周で反転するぶんが 1 周する輪の奇数本ぶんとして残る。
この帰結として、0 が出るのは一辺が奇数の周期盤だけになった。奇数の盤では 40 面中 90 パーセント以上に 0 の出る位置があり、偶数の盤では 1 面もない。偶数の盤にも 1 周する輪が 2 本あることは珍しくないのに、である。
ここは詰め切れていない。偶数の盤でも、1 枚のタイルの 4 つの中点がすべて同じ 1 周する輪に乗っているマスは普通にある。N = 6 で 162 個、N = 8 で 401 個、N = 10 で 488 個。そこをひねっても 0 が 1 件も出ない。奇数の盤では同じ条件のマスの 2 割から 3 割で 0 が出るのに、である。「同じ非分離な輪の上でつなぎ替えれば 0 になりうる」だけでは足りず、盤全体の偶奇が効いている。理由はまだ言えない。
まとめると、±1 は 2 つの条件つきの法則だった
1 か所のひねりが輪の本数をちょうど 1 本動かすのは、すべての曲線が閉じていて、かつどの輪も円板に縮められるときである。コーラムがこの条件を満たしているのは偶然ではない。壁で曲線が跳ね返るので開いた端がなく、平面の上なので 1 周する輪もない。だから 863 位置を叩いても 0 が出なかった。
条件が崩れれば、そこから導いた法則も一緒に崩れる。輪の本数の偶奇がひねった枚数の偶奇で決まるという法則を測ると、トーラスの盤で 720 回中 40 回外れ、縁のある盤では 720 回中 389 回も外れた。外れた回数は 0 が出た回数そのものである。
どう作ったか
generators/truchet-kolam.js。トゥルシェ側は truchet.js の盤と輪の数え方をそのまま使い、トーラスの巻き数(中点の座標の差を最小像で足して N で割る)を足した。コーラム側は kolam.js の鏡 1 枚の帳簿をそのまま呼んでいる。機械検査は 15 件。開いた鎖が 2N 本(35 面)、どのタイルを回しても鎖の本数が変わらない、輪の数の 2 経路(union-find と歩き)が縁のある盤を含む 30 面で一致、平面の 0 はすべて開いた鎖に触れる、閉じた輪だけに触れる位置では 0 が出ない、トーラスの 0 はすべて 1 周する輪に触れる、1 周する輪のない盤では 0 が出ない、コーラム側は 863 位置すべてで ±1、1 周する輪の本数の偶奇が N の偶奇と一致、0 が出る盤は一辺が奇数のときだけ、偶数の盤では自己つなぎ替えでも 0 が出ない、道具の答え合わせ(揃えた盤は N 本で全部 1 周・市松は N²/2 個で全部 (0,0))、偶奇の法則の崩れ方、出荷 SVG 3 枚。
道具の答え合わせとして、全部同じ向きに揃えた盤では巻き数が全部 (1, −1) で本数が N 本、市松の盤では全部 (0, 0) になることを確かめた。どちらもトゥルシェの作品で先に出していた既知の答えと合う。
この号で truchet.js の不具合をひとつ直した。開いた鎖を辿るとき、鎖の途中の弧から始めると片側しか辿れず、残りが別の成分として二重に数えられていた。縁のある盤でだけ出る型で、union-find と歩きの 2 経路が食い違って気づいた。端点から辿るように直して一致した。
出典
- 数理
- S. Truchet (1704)/C. S. Smith (1987)(トゥルシェ・タイル)/P. Gerdes, "Geometry from Africa" (1999)(鏡の曲線)。トーラス上の非分離な単純閉曲線が内と外を分けないことは位相の教科書の事実で、ここでは使っただけ。数字はすべて自分の総当たりで測った
- 親戚
- トゥルシェ・タイル・コーラム・組紐と最大公約数・結ばれた輪
- 生成
- generators/truchet-kolam.js(truchet-kolam.svg 周期盤の模様・truchet-kolam-flip.svg 0 の実例・truchet-kolam-book.svg 帳簿)