← ギャラリーへ

かけ算第40号|点滅光と皮質の模様 × ユークリッドリズム

リズムで点滅させる

点滅光と皮質の模様では、一様な点滅で興奮と抑制の場を揺すると、点滅の速さと形で模様の出る範囲が決まった。ユークリッドリズムでは、12 拍のうち 7 拍を最大限均等に選ぶと、長音階と同じ形になった。点滅を 12 拍のリズムにして、場がリズムのどこを見ているかを計算した。このページの図はすべて静止画で、点滅は再現していない。

12 個の点を円に並べた輪が 4 つあり、光る拍を結んだ七角形・五角形・六角形・四角形が描かれている。それぞれの下に、1 次から 11 次までの成分の大きさを表す細い棒が並ぶ
左上から、E(7,12)(長音階の形)・E(5,12)(五音音階の形)・全音音階・減 7 和音を 12 拍のリズムにした輪。下の棒は、そのリズムで点滅させたときの 1〜11 次の成分の大きさで、濃い棒がそれぞれの集合でいちばん深い舌を作る次数にあたる。全音音階は 6 次、減 7 和音は 4 次と 8 次の棒しか立たない。

なにか

12 拍を 1 巡りにして、選んだ拍だけ明るくする。光る拍の集合は、12 音のうちどの音を鳴らすかを決めた和音や音階と、数学では同じものになる。音楽理論では、その集合のフーリエ係数 F(m) で和音の性格を測る(Amiot 2007 が Lewin と Quinn の仕事を整理している)。場の模型と係数は点滅光と皮質の模様と同じものを使った。

点滅光と皮質の模様では、模様の出る範囲(舌)が点滅の振動数と、矩形波の何次の成分があるかで決まった。リズムの点滅にも 1 次から順に成分があり、m 次の成分の大きさはちょうど |F(m)| に比例する。そこで見立てを立てた。m 次の舌の深さは |F(m)| で決まり、k 音のリズムでは最大均等な E(k,12) が k 次の舌をいちばん深くする。

明かりの平均を揃える

はじめは点滅光と皮質の模様と同じく、明かりを 0 と A で切り替えた。長音階の形で点滅させると、強さ A を 0.3〜0.9、振動数を 1.5〜2.8 の範囲で動かしても、1 巡あたりの倍率は最大 0.783 で、模様は出なかった。光る拍の数が集合ごとに違い、強くするほど場の平均の明るさまで動くので、成分の大きさだけを比べられない。

そこで、明るさの平均を 0.1 に固定し、光る拍を 0.1 より明るく、暗い拍を暗くした。光る拍が k 個なら、光る拍の明るさは 0.1 + A(1 − k/12)、暗い拍は 0.1 − Ak/12 にした。点滅がないとき、この場は波数 0.726 の乱れがいちばんゆっくり減り、減衰率 0.1270、角振動数 1.2149 で振動しながら消える。その 2 倍の 2.4298 に m 次の成分が来るように、1 巡の長さを決めた。拍の長さは、場の振動の周期の m/24 になる。

舌の深さはフーリエ係数で決まる

成長率の増え分を成分の大きさに対して打った点がすべて 1 本の直線に乗る散布図、次数と音程の表と 6 つの輪、最大均等な集合の表、ボサノバとソン・クラーベの輪、移調の限られた集合の一覧、閾値の数値を並べた帳簿
上から、成長率の増え分と成分の大きさ、次数ごとに成分を最大にする集合、k 次の係数を最大にする集合とボサノバ・ソン・クラーベ、係数が 0 の次数、閾値まで強くしたときの値を並べた。

見立ては当たった。点滅の強さを A = 0.002 と小さくして、12 拍に 5 音と 7 音を置くリズムの全部の型(回転と裏返しで同じものを 1 つに数えて 38 種ずつ)を、1〜11 次のそれぞれで計算した。1 巡あたりの乗数から出した成長率の増え分を「A × m 次の成分の大きさ」で割ると、係数が 0 でない 816 点すべてが 1.836〜1.860 に入った。成分の大きさは |F(m)| に、1 拍ぶん光る箱の形から来る係数 sin(πm/12)/(πm/12) を掛けて 12 で割ったものである。

この比 κ は、摂動の式からも出せる。点滅がないときの場の固有ベクトルと、明るさを揺すったときの係数行列の変化から計算すると κ = 1.8496 になった。正弦波で揺すって乗数から測ると、振幅 0.0005 で 1.8489、0.001 で 1.8481、0.002 で 1.8467 で、振幅を小さくするほど式の値に寄る。

乗数の符号は、816 点すべてで m が偶数なら +1、奇数なら −1 だった。m 次の成分が場の振動の 2 倍の速さで揺するので、場は 1 巡のあいだに m/2 回振動する。m が偶数なら模様は 1 巡ごとに同じ形に戻り、奇数なら明暗が反転して 2 巡でもとに戻る。点滅光と皮質の模様で明かり 25% の矩形波に現れた +1 の舌は、この規則の m = 2 にあたる。

最大均等なリズムが k 次の舌をいちばん深くする

Amiot は、k 次の係数の大きさ |F(k)| が k 音の集合の中で最大になるものを最大均等と定義した。Clough と Douthett の J 関数で作った集合がこの定義で最大均等になることも、同じ論文で示している。12 拍の 2¹² 通りを総当たりすると、k = 1〜11 のすべてで、|F(k)| を最大にする集合は E(k,12) の回転だけだった。5 音と 7 音では最大値が 3.7321 になる。成長率の増え分は係数の大きさに比例するので、長音階の形の点滅は、7 音の点滅の中で 7 次の舌をいちばん深くする。

16 拍に 5 音のボサノバ(E(5,16))とソン・クラーベでも比べた。5 次の係数はボサノバが 4.2620 で、16 拍の 5 音の集合の中で最大になる。ソン・クラーベは 3.6131 で、係数の値の大きい順に 4 番目だった。5 次の舌の成長率の増え分はボサノバがソン・クラーベの 1.18 倍で、係数の比 1.18 と同じになる。

→ ユークリッドリズム(最大均等と互除法)

テンポが音程を選ぶ

拍の長さを変えると、共鳴する次数が変わる。拍が短ければ 1 次が場の振動の 2 倍に重なり、拍を長くするにつれて重なる次数が上がる。次数ごとに、その成分を最大にする 7 音の集合を探すと、どれも決まった音程でできていた。1 次では半音が続く塊、2 次では増 4 度(6 半音)離れた 2 つの塊、3 次では長 3 度(4 半音)の三角形のまわり、4 次では短 3 度(3 半音)の四角形のまわりになる。5 次と 7 次では完全 5 度(7 半音)を積んだ長音階が最大になり、6 次では全音(2 半音)を積んだ全音音階に 1 音を足した集合が最大になる。5 音でも同じ並びになり、5 次と 7 次では五音音階、6 次では全音音階から 1 音を抜いた集合が最大だった。

|F(m)| は、集合の各音の位置を m 倍して 12 で割った余りが円の上で固まっているほど大きい。m が 12 を割り切るなら、辺が 12/m 半音の正多角形に近い集合がそうなる。m が 12 と互いに素なら、m を掛けて 1 になる数の半音を積んだ鎖がそうなる(7 × 7 = 49 は 12 で割って 1 余るので、7 次は 7 半音の鎖=5 度の鎖)。12 等分の 7 半音は、純正の比では 3:2 の完全 5 度にあたる。どのテンポで点滅させるかが次数を決め、次数がどの音程でできたリズムにこの場が強く応じるかを決めている。

反対に、係数が 0 の次数では舌が開かない。増 3 和音(0・4・8)は 3・6・9 次だけ、減 7 和音と 8 音の音階(半音と全音を交互に積んだもの)は 4・8 次だけ、全音音階は 6 次だけに成分がある。どれも回転すると自分に重なる集合で、Amiot の命題 2.6 のとおり、周期と合わない次数の係数が 0 になる。係数が 0 の 20 点の増え分は 4.5×10⁻⁷ 以下で、係数が 0 でない点の最小値 7.4×10⁻⁶ の 16 分の 1 より小さかった。

→ 和音のかたち(音程の比と 12 等分の音程)

→ 和音のモアレ(周期の比を音程の比にした格子)

いちばん弱い点滅で模様を作るのは塊

見立て「最大均等なリズムがいちばん弱い点滅で模様を作る」は外れた。テンポを自由に選べるなら、成分の大きさが最大になる次数を選べばよい。12 拍に 5 音の 38 種で比べると、いちばん大きい成分を持つのは光る拍を 5 つ続けた塊(1 次で 0.3075)だった。2 番目は増 4 度離れた 2 つの塊(2 次で 0.2869)、3 番目は長 3 度の三角形のまわり(3 次で 0.2705)になる。E(5,12) は 9 番目で、5 次の 0.2295 にとどまる。低い次数ほど 1 拍の箱の形から来る係数が大きいので、光る拍をまとめて 1 本の長い明かりにした点滅が強い。最大均等なリズムが勝つのは、k 次が共鳴するテンポに揃えて k 音のリズムどうしを比べたときに限られる。

閾値まで強くすると

模様が出はじめる強さ(閾値)まで点滅を強くすると、見立ての比例からずれる。長音階の形の 7 次では閾値が 0.3723 で、閾値がいちばん低くなる振動数は 1.941 と、小さな点滅での 2.4298 から下がった。x.x.x.x.x.x. の 6 次では閾値 0.1868、振動数 2.040 である。閾値と成分の大きさの積は、2 つで 2.7% 違った。舌の深さを係数で読めるのは、点滅が弱い範囲に限られる。

→ 点滅光と皮質の模様(2 つの舌と Floquet 乗数)

→ ファラデー波(Mathieu の舌)

続き|上向きと下向きの六角形

点滅光と皮質の模様では、乗数が +1 の舌でだけ六角形の向きに区別があった。点の位置で興奮が弱まる六角形と、その明暗を反転した六角形のどちらが残りやすいかは、振幅方程式の 2 次の係数 g で決まる。リズムの点滅では、この区別が何で決まるかを計算した。見立ては、奇数次の舌(乗数 −1)では区別がなく、偶数次の舌では g が F(m/2) で決まる、というものだった。

計算には、点滅がないときの減衰を模様の成分にだけ打ち消した場を使った。点滅がなくても模様が出る寸前にある場を、弱い点滅で揺すった状態にあたる。元の係数のまま閾値まで強くすると、隣の次数の舌が先に開いて比べられなかった。六角形の 3 本の波がちょうど 1 組入る周期の箱で、乗数をちょうど ±1 に合わせ、上向きと下向きの六角形を種にして回した。乗数が 1 から少しずれたまま測ると、g が 1 巡の始まりをどこに取るかで変わり、正弦波の点滅で試すと、位相によらない一定のずれが加わった。以下の g は点滅の強さ A で割り、振幅を 1 巡の平均の大きさで測った値である。

奇数次では上下の区別がなかった。0〜6 の拍が光る半音 7 連のリズムで 40 周期回し、上向きと下向きの振幅の比の対数を種の振幅で割って追った。2 次・4 次・6 次の舌ではこの値が周期に比例して開き、2 次では 10・20・40 周期で −0.422・−0.844・−1.689 になった。1・3・5・7 次の舌では、1 周期ごとに差が出ても次の周期で打ち消され、偶数周期ごとに 0.002 以下に戻った。乗数 −1 の模様は 1 周期で明暗が反転するので、上向きと下向きは同じ模様を半分ずらした姿になる。

偶数次の g は、見立ての F(m/2) だけでは決まらなかった。4 次の舌では、長音階と半音 7 連の |F(2)| と |F(6)| はどちらも 1 なのに、g は大きく違った。決めていたのは、場の振動数 ω₀ とその 3 倍に来る点滅の成分と、その位相である。m 次の成分が場を 2ω₀ で揺するので、ω₀ には m/2 次、3ω₀ には 3m/2 次の成分が来る。m 次の成分の位相の半分を θ とし、X = ĉ(m/2)e−iθ、Y = ĉ(3m/2)e−3iθ と置くと、g は Re(aX + bY) の形になる。奇数次では m/2 と 3m/2 が整数にならず、その成分がないので区別が消える。偶奇の規則と見立ての外れは、同じ仕組みから出ていた。

係数 a と b は、リズムを使わずに測れる。m 次と m/2 次の 2 本の正弦波を重ねた点滅で m/2 次の位相を回すと a が、3m/2 次と重ねると b が出る。2 次の舌では a = 6.2482 − 8.6140i、b = 7.1722 + 4.0333i だった。この 2 つだけで、12 拍に 5 音と 7 音を置くリズムの全部の型の |g| を予言した。A → 0 に外挿した値と比べると、2 次の舌の 70 型で差は最大 0.0044(|g| の最大は 3.1714)、4 次の舌の 76 型で 0.0109(4.6592)だった。4 次の a と b は 2 次の 2 倍になった(差は 0.03% 以内)。4 次の舌は 1 巡の長さが 2 倍なので、時間あたりにすれば同じ係数である。2 次の舌で差がいちばん大きいのは 0・1・2・3・10 の拍が光るリズムで、ほとんど差がないのは 0・1・2・4・6・8・9 だった(A → 0 で 0.0044)。

有限の振幅まで育てると、どの形が残るかも計算した。1 周期あたり 1.002 倍でゆっくり育つように合わせ、小さな乱れから回した。形は、3 本の波の振幅のうち最小と最大の比(六角の指数)で見た。縞なら 0、六角形なら 1 になる。1 次の舌の半音 7 連は、種を変えた 3 本とも 24,000 周期で縞になった。0・1・2・3・10 の 2 次の舌は、A = 0.05 で種を変えた 3 本とも六角形になった。6,000 周期で六角の指数は 0.955〜0.998、24,000 周期回した 1 本は 1.000 だった。3 本とも同じ向きの六角形である。

0・1・2・4・6・8・9 の g は、点滅の強さで変わる。A → 0 では 0.0044 でも、A = 0.05 では −0.138 と符号が反転し、A ≈ 0.0016 のあたりで 0 を横切る。乱れから 24,000 周期回すと、A = 0.01 と 0.02 では縞になり、0.03 ではどちらにも決まらず、0.04 と 0.05 では六角形に向かった。この六角形は 0・1・2・3・10 と向きが逆で、g の符号と合っている。g がほぼ 0 の A = 0.0016 では振幅の符号が定まらず、形も決まらなかった。

縞が残った A = 0.02 でも、六角形を種にして始めると、12,000 周期たっても六角形のままだった(0.956・0.968)。この範囲では六角形と縞の両方が安定で、乱れから育てたときにどちらへ落ちるかを g の大きさが決めている。g が大きいほど六角形に落ちやすい。育つ速さを 10 倍の 1 周期あたり 1.02 倍にすると、g がいちばん大きいリズムでも、六角形を種にして 1,500 周期までに縞へ崩れた。ここに書いた規則は、模様がゆっくり育つ範囲でだけ成り立つ。

→ 点滅光と皮質の模様(六角形か、縞か)

どう作ったか

拍ごとに一定の明るさを入れ、一様な場の周期解を 4 次のルンゲ・クッタ法で求め、同じ刻みで波数ごとの 2 行 2 列の基本行列を積んで乗数を出した。時間の刻みは 0.05 以下にした。成長率の増え分は、乗数から出した成長率に、見つかった波数での点滅がないときの減衰率を足して求めた。摂動の式では、明るさを揺すったときの一様な状態の応答まで含めて係数行列の変化を計算した。集合の係数と総当たりは、12 拍と 16 拍の全部の部分集合で計算している。

確かめていないこと。係数は自分で選んだもので、原論文の値でも生理の測定値でもない。振動数と拍の長さを Hz や秒に直していない。上向きと下向きの六角形の計算は、減衰を打ち消した場で、六角形が 1 組だけ入る小さな箱の中で見たもので、元の係数の場の閾値の近くでは見ていない。育つ速さを 10 倍にすると六角形が崩れる理由は確かめていない。見立ての比例は点滅が弱い範囲の話で、閾値の比較は 2 つの例しか見ていない。人が実際にリズムの点滅を見たときの模様との対応は確かめていない。

出典

数理
E. Amiot, "David Lewin and maximally even sets", Journal of Mathematics and Music 1 (2007) 157–172。集合のフーリエ係数の定義(定義 2.1・p.159)、移調と反転で大きさが変わらないこと(定理 2.5・p.160)、回転で重なる集合の係数(命題 2.6・p.160)、最大均等の定義(定義 3.1・p.163)、J 関数で作った集合が最大均等になること(§3.7・定理 3.9・p.169)を IRCAM に置かれた PDF で読んだ。場の模型は点滅光と皮質の模様(M. Rule, M. Stoffregen, B. Ermentrout, PLoS Comput Biol 7(9): e1002158 (2011) と同じ型)。成長率の増え分の比例と乗数の符号の規則は、数値と摂動の式で自分で確かめた
親戚
点滅光と皮質の模様・ユークリッドリズム・和音のかたち・和音のモアレ・なぜ鍵盤は12個か・ファラデー波
生成
generators/flicker-rhythm.js(flicker-rhythm.svg 4 つのリズムの輪・flicker-rhythm-book.svg 帳簿)。上向きと下向きの六角形の計算は tools/explore/flicker-rhythm-hex.js で、長い計算の結果は tools/explore/flicker-rhythm-hex.json に置いた