帯に写した双曲タイリング
正七角形を 1 点に 3 枚ずつ集める双曲タイリング {7,3} を、複素対数で写した。双曲平面は幅 π の帯になり、模様は横にだけ 2.898 ごとにくり返して、上下の端へ向かって細かくなる。くり返しの長さと、帯模様の対称性の型を確かめた。
なにか
双曲タイリング {7,3}では、双曲平面を円板の中に描いた。同じ平面は、上半平面にも描ける。上半平面の点 w に複素対数 log w をかけると、上半平面は高さ π の帯になる。この対数は、形の定数と対数の写像で視野から視覚野への対応に使った関数と同じである。ここでは、双曲平面をこの帯の上に描いたものを帯と呼ぶ。
円板の直径 1 本は、w = i(1 + z)/(1 − z) で上半平面の虚軸に移り、対数で帯の中央の線に移る。直径に沿った双曲の平行移動は上半平面では拡大・縮小で、対数をかけると帯の上の横ずれになる。
3 つの地図
帯の座標は 2 つのやり方で出した。1 つは、円板の点を上半平面に写してから対数をかける方法である。もう 1 つは、直径に沿った距離 u と直径からの距離 v を先に求め、(u, π/2 + arctan(sinh v)) と置く方法である。タイルの頂点で比べると、2 つは 7×10⁻¹⁰ 以内で一致した。帯の横の座標は、直径に沿った双曲の距離そのものになる。
模様は横にだけくり返す
見立ては「対数で写せば、平面の壁紙のように縦にも横にもくり返す」だった。外れた。くり返すのは横の 1 方向だけで、縦にはくり返さない。
横のくり返しの長さは、2 つのやり方で求めた。A は中央の線の通り道から数える方法である。中心のタイルの頂点の 1 つを中央の線に乗せると、線は頂点、中心、辺の中点、中心、頂点の順に通り、そのあと 1 本の辺に沿って次の頂点に着く。そこから先は同じ並びになる。中心から頂点までを ρ、中心から辺の中点までを ι、辺の長さを e とする。ρ = 0.620672、ι = 0.545275、e = 0.566256 で、1 周期は 2ρ + 2ι + e = 2.898149 になる。B は、中央の線のまわりのタイルの頂点を横にずらし、自分に重なる最小のずれを探す方法である。32 点で確かめて 2.898149 になり、A との差は 3×10⁻¹⁴ だった。中央の線の上に中心が乗るタイルの間隔は 1.090550 と 1.807600 が交互に並び、それぞれ 2ι と 2ρ + e に当たる。
縦にくり返さないのは、帯の縦の座標が π/2 + arctan(sinh v) だからである。直径から v 離れた所では、縦の長さが 1/cosh v に縮む。帯の上下の縁は双曲平面の無限の遠くで、そこへ近づくほどタイルはいくらでも細かくなる。
帯模様の型は p2mm
一方向にだけくり返す帯模様の対称性は 7 つの型に分かれる。今井(2024)は将棋の駒の並びを題材に、その 7 つを p1・p11g・p1m1・p11m・p2・p2mm・p2mg と挙げ、p2mm を水平と垂直の鏡、平行移動、180° 回転を持つ型としている。
帯の {7,3} では、中央の線が水平の鏡になった。縦の鏡は 1 周期に 2 本あり、位置は u = 0.9038 と 2.3529、間隔は周期のちょうど半分だった。1 本は軸に沿った辺の中点を、もう 1 本は中央の線をまたぐ辺の中点を通る。縦の鏡と中央の線の交点には 180° 回転がある。半周期だけずらす平行移動と、半周期ずらして上下を返すすべり鏡映はなかった。どれも頂点 32 点で確かめた。型は p2mm である。
双対の {3,7} は同じ長さでくり返す
{7,3} の中心と頂点を入れ替えると、正三角形を 1 点に 7 枚ずつ集める {3,7} になる。見立ては「三角形で敷けば、くり返しの長さも変わる」だった。外れた。B の方法で測った {3,7} の周期は 2.898149 で、{7,3} との差は 2×10⁻¹² だった。中央の線の上の三角形の中心の間隔は 0.5663 と 2.3319 で、{7,3} とは違う。それでも、2 つの敷き詰めは同じ鏡の線を持つので、中央の線に沿った周期は同じになる。
{8,3} では、中央の線は頂点、中心、向かいの頂点の順に通り、そのあと辺に沿って次の頂点に着く。周期は 2ρ + e = 2.448452 で、B の方法の値との差は 3×10⁻¹³ だった。
どう作ったか
タイルは双曲面モデルで作った。中心のタイルを原点に置き、辺を通る測地線での鏡映を重ねて広げた。円板の座標のまま端の近くまで広げると、丸めの誤差で同じタイルを見分けられなくなる。そこで、直径からの距離が決めた範囲を超えるタイルは広げないようにした。帯の絵は、中心が 1 周期の中にあるタイルだけを作り、横に周期ずつずらして並べた。辺は測地線の上の点を帯に写した折れ線で描いた。
確かめていないこと。周期と対称性は、中央の線から決まった距離の中の頂点で確かめたもので、証明ではない。中央の線を、鏡の線でない向きに取った場合は調べていない。{7,3}・{3,7}・{8,3} 以外の組は、周期が確かめた範囲より長く、測れなかった。この帯の絵が目にどう見えるかは調べていない。
出典
- 数理
- 帯模様の 7 つの型と p2mm の中身は Y. Imai, "Shogi and Frieze group", arXiv:2401.08591 の p.11(開いて読んだ)。正多角形の外接半径・内接半径・辺の長さは双曲三角法の式で出し、タイルの頂点の座標と突き合わせた。複素対数は形の定数と対数の写像と同じ関数(そこでの出典は Bressloff ほか 2002)
- 親戚
- 双曲タイリング {7,3}・双曲ボロノイ・形の定数と対数の写像・目を共有する顔と壁紙群・トーラスの泉
- 生成
- generators/hypband.js(hypband.svg 帯に写した {7,3}・hypband-book.svg 帳簿)