亀甲と甲羅の育ち方
リクガメ 16 個体の写真で背中の真ん中の板 13 枚の並びを数えると、隣り合い方は亀甲から切り出した 13 枚の六角形と同じだった。違いは板の育ち方にある。板は縁に輪を足して大きくなり、最初の輪が甲羅の真ん中へ寄る種と、板の真ん中に留まる種があった。輪が真ん中に留まるケヅメリクガメの育ち方で、亀甲を描き直した。
なにか
亀甲は、同じ正六角形を隙間なく敷き詰めた和柄である。リクガメの背中の甲羅も、角張った板(甲板)が継ぎ目で接して並ぶ。この 2 つを、並び方と育ち方の 2 つで比べた。
並び方は、背中の真ん中の板 13 枚が何枚の板と接しているかで見た。育ち方は、板ごとに最初の輪がどこにあるかで見た。そのうえで、測った育ち方を亀甲の六角形に入れて描き直した。
真ん中の 13 枚は、亀甲から切り出した形と同じに並ぶ
Zimm ほか(2017)は p.1303 で、陸のカメの多くは背中の甲羅の板の並びが同じだと書く。真ん中に椎甲板が 5 枚縦に並び、その左右に肋甲板が 4 枚ずつ並ぶ。縁に沿って小さな縁甲板が片側 12 枚ずつ並び、前を項甲板 1 枚が閉じる。
イェール・ピーボディ自然史博物館の標本写真 14 個体と、野外の写真 2 枚で、13 種 16 個体を数えた。椎甲板と肋甲板の数は 16 個体とも 5・4・4 で、余分な板や割れた板は見た範囲では無かった。2〜4 枚目の椎甲板は、見えた 47 枚が全部 6 枚の板と接していた。前後の椎甲板と、左右それぞれ 2 枚の肋甲板である。
正六角形の敷き詰めから、真ん中の列を 5 枚、左右の列を 4 枚ずつ半段ずらして切り出すと、13 枚の中だけの隣り合いは 26 組になる。甲羅の型どおりの隣り合い 26 組と、1 組も違わなかった。13 枚が 3 列に並ぶので、13 枚の中だけで数えると 6 枚と接するのは真ん中の 3 枚だけで、平均は 4 枚になる。これは亀甲から切り出しても同じだった。
13 枚の形は、平行移動だけで平面を隙間なく覆うこともできる。ずらし方の格子は 2 つあり、互いに鏡に映した形だった。
板は縁に輪を足して育つ
Germano と Bury は 1998 年の論文の p.127 で、甲板の層は前の年の層の下に薄く広がり、外の縁で厚くなって輪になると書く。輪は板を 1 周する。同じ論文の p.125 では、年齢を数えるのに使える輪の数の上限を、おおむね淡水のカメで 5〜14 本、リクガメで 15〜29 本としている。
輪が板の縁に足されていくので、いちばん内側の最初の輪の位置を見れば、板がどの向きに多く育ったかが分かる。最初の輪が板の真ん中にあれば、板はどの向きにも同じだけ育った。前に寄っていれば、後ろへ多く育った。
最初の輪が、甲羅の真ん中へ寄る種と寄らない種
椎甲板 5 枚について、最初の輪の中心が前の継ぎ目から後ろの継ぎ目までのどこにあるかを、写真に目盛りを重ねて読んだ。0 が前の継ぎ目、1 が後ろの継ぎ目である。5 種 6 標本を読み、前の 2 枚の平均から後ろの 2 枚の平均を引いて、前後の差とした。1 つの読みの幅は 0.05 ほどある。
ヒョウモンガメは前後の差が 0.21、ギリシャリクガメは 0.12 だった。前の椎甲板ほど輪が後ろに寄り、後ろの椎甲板では真ん中か前寄りになる。最初の輪が甲羅の真ん中へ寄る形で、板は甲羅の真ん中から遠い側へ多く育ったことになる。ベルセオレガメは 0.09 で同じ向きにわずか、エジプトリクガメは 0.05 で読みの幅に収まった。
ケヅメリクガメは 2 体とも、前後の差が −0.01 と −0.09 で、前の板ほど後ろに寄る傾きは出なかった。最初の輪は板の真ん中にある。表紙の亀甲は、このケヅメリクガメの育ち方で描いた。
亀甲に入れる
六角形 1 枚ごとに、最初の輪の点を面の中心から寄せ、そこを中心に六角形を縮めて輪にした。寄せる先は甲羅 1 枚(13 枚)に 1 点で、寄せる量は面の中心からその点までの距離の κ 倍にした。
ヒョウモンガメの 2〜5 枚目の椎甲板の読みに直線を当てると、κ は 0.068 で、寄せる先は 3 枚目の椎甲板の中心から 0.72 枚ぶん後ろになった。この強さで描くと、輪の位置は 0.62・0.55・0.48・0.41 になり、読みとの差はいちばん大きくて 0.04 だった。左の図の赤い点が読んだ位置である。
測った強さ κ=0.068 では、輪のずれが小さく、甲羅の形の区画を並べた床にしても近くで見ないと分からない。右の図は κ を 0.2 にして、約 3 倍に強めた。太い線で囲んだ 13 枚ずつの区画の中で、輪が区画の真ん中へ寄り、区画の縁の六角形ほど輪が片側に詰まる。寄せる量は、輪が片側の縁に寄りすぎないように、辺の長さの 0.39 倍で頭打ちにした。
見立て
数える前に見立てを 4 つ決めた。1 つ目は、13 枚が 3 列に並ぶので全部が 6 枚隣にはなれない、だった。当たりである。ただし亀甲から 13 枚を切り出しても同じで、甲羅だけの性質ではなかった。
2 つ目は、最初の輪は板の後ろ・内側寄りにある、だった。前の椎甲板については当たり、後ろの椎甲板については外れで、半分である。肋甲板の内外は読みが粗く、判定に入れなかった。
3 つ目は、ずれの向きは 13 枚で揃う、だった。向きは板の位置で変わり、甲羅の真ん中を向くので外れである。
4 つ目は、亀甲に入れると輪が後ろへ寄った「育った亀甲」になる、だった。輪は後ろでなく甲羅の真ん中へ寄り、測った強さでは目に見えるほどずれなかったので外れである。
どう作ったか
生成器は generators/kikkou-shell.js である。亀甲は尖りが左右を向く正六角形で、辺の長さを 1 にした。輪は 6 本で、最初の輪の点 a から六角形の頂点 P へ向かう線を t の割合で縮めた点をつないだ。t は 0.26 から 1 までを内側ほど間が広くなるように取った。13 枚の区画の並べ方は、13 枚が格子の剰余類に 1 つずつ入る格子を探した。行列式 13 の格子 14 個のうち、入るのは 2 個だった。床の真ん中の 169 枚の六角形で、重なりも抜けもないことを確かめた。
確かめていないこと。輪の数は数えられなかった。最初の輪の前と後ろで溝の数が合わず、表紙と図の輪の数と間隔は描くために決めたものである。肋甲板は 3 種で読んだだけで、寄せる先を決める直線には入れていない。肋甲板が縁甲板と何枚接するかは、真上からの写真では継ぎ目が隠れて数えられなかった。ケヅメリクガメは 2 体で、種の違いと言い切るには少ない。
出典
- 甲羅の板の並び
- R. Zimm・B. P. Bentley・J. Wyneken・J. E. Moustakas-Verho「Environmental Causation of Turtle Scute Anomalies in ovo and in silico」Integrative and Comparative Biology 57(6)(2017)1303〜1311、doi:10.1093/icb/icx066。p.1303(陸のカメの多くは椎甲板 5・肋甲板 4 が左右・縁甲板 12 が左右・項甲板 1)。p.1305 には、2 組の反応拡散系で板の原基の位置と継ぎ目を決める模型の説明がある
- 輪のでき方
- D. J. Germano・R. B. Bury「Age Determination in Turtles: Evidence of Annual Deposition of Scute Rings」Chelonian Conservation and Biology 3(1)(1998)123〜132。p.125(数えられる輪の上限はおおむね淡水のカメで 5〜14・リクガメで 15〜29)、p.127(層は前の年の層の下に薄く広がり、外の縁で厚くなって輪になる・輪は板を 1 周する)
- 標本の写真
- イェール・ピーボディ自然史博物館の爬虫類標本(YPM HERR)の写真を GBIF から取った。記録も写真も CC0 である。読んだ 6 標本は 011465(ヒョウモンガメ)・010458(ギリシャリクガメ)・012606(ベルセオレガメ)・011767(エジプトリクガメ)・019409.001 と 011227(ケヅメリクガメ)。写真そのものは載せていない
- 数理
- 13 枚の隣り合いの突き合わせ、最初の輪の読み方、寄せる強さの当てはめ、13 枚の区画の並べ方は自分で組んだ
- 親戚
- 和柄の対称群・和柄の上の唐草・ハニカム・乾燥亀裂・チューリング・パターン・トンボの羽の網目
- 生成
- generators/kikkou-shell.js(kikkou-shell.svg 表紙・kikkou-shell-book.svg 帳簿)。読みの値は生成器の中に書いた