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水引の結び

淡路結びの端を閉じると 8 交差の結び目 8₁₈ になる。左巻きと右巻きの淡路は、不変量で区別のつかない同じ結び目である。三つ葉には左右がある。5 本並行の水引は、どの 2 本も絡み数が 0 になる。

紅白 5 本の水引で結った淡路結び。上に 3 つの輪、中央に 8 つの交差の織り、下に 2 本の端が垂れる
淡路結びを紅白 5 本の水引で描いた。道筋は 3 リード 4 バイトのターク・ヘッドの影で、下の山を切って 2 本の端を垂らした。交差は 8 で、道筋に沿って上下が交互になる。5 本は平行のまま、交差ごとに帯ごと上下する。

なにか

水引は、祝儀袋や贈答品にかける飾り紐である。紅白や金銀の細い紐を 5 本・7 本と平行に並べ、交差ごとに上下を交互にくぐらせて結う。基本の形が淡路結びで、上に 3 つの輪、中央に織り、下に 2 本の端が出る。両端を閉じた形は、Knot Atlas が「実用の結びの Carrick loop」とする 8₁₈ と同じである。名前の似た Carrick bend は、閉じると 2 成分の絡み目 8²₇ になると同じ頁にある。引いても解けないので結び切りに使い、梅結びはこれを 5 弁に続けたものである。

端のある紐は、どう結んであっても数学的には自明で、端をつなぐと初めて結び目になる。ここでは淡路結びの 2 本の端を下でつないで閉曲線にし、ジョーンズ多項式 V(t)を出した。道筋は「ターク・ヘッド」の影で作った。L 回まわる周回(リード)が B 個の山(バイト)を持つ閉曲線 r = R + a cos(Bt/L)で、自己交差は B(L−1)個になり、上下を道筋に沿って交互にすると交代図式になる。淡路は、リード 3 でバイト 4 の (3, 4)から下の山を切ったもので、閉じれば (3, 4)そのものである。実物の淡路結びと同じ形かは、生成した図を目で見て確かめた。上に 3 つの輪、中央に 8 交差の織り、下に 2 本の端が出る。

淡路結びは 8₁₈

淡路・閉じた淡路・梅・三つ葉の 4 つの図式、ターク・ヘッドの家系の帳簿、2 橋結び目の表、5 本並行の絡み数、文献との突き合わせ
上に淡路(端を垂らした形)、閉じた淡路、梅、三つ葉の図式を置いた。中はターク・ヘッド (L, B)11 本の帳簿で、交差・成分・幅・行列式・全域木・鏡像との一致・V(t)を並べた。下は 2 橋結び目 14 本の表と、5 本並行にした水引の絡み数、文献との突き合わせである。

閉じた淡路の自己交差は 8 で、V(t)は t⁴ − 4t³ + 6t² − 7t + 9 − 7t⁻¹ + 6t⁻² − 4t⁻³ + t⁻⁴ になった。平面図から出しても、組紐 (σ₁σ₂⁻¹)⁴ の閉包から出しても、同じ式が出る。関西大学の辻野の卒業論文「淡路結びのジョーンズ多項式」がスケイン関係式で出した式、Knot Atlas が 8₁₈ に載せる式とも一致した。V は 1 ではないので、淡路は自明でない。幅(最高次と最低次の差)は 8 で交差数に等しい。交代で既約な図式ではこれが交差数になる(Kauffman・Murasugi・Thistlethwaite 1987。Champanerkar と Kofman の総説 arXiv:1406.1945 の p.4)ので、淡路の交差数は 8 で、これより少ない交差では描けない。

行列式 |V(−1)| は 45 である。同じ数を、上下の情報を一切使わずに出した。図式の面は 10(交差 + 2)で、市松に 2 色に塗れる。片方の色の面を頂点、交差を辺にしたテイトグラフの全域木を数えると 45 で、双対でも 45 になる。交代図式では全域木の数が行列式に等しい(同じ総説の pp.8〜9)ので、これが独立の 2 経路になる。梅結びは (3, 5)と見ると交差 10、幅 10、行列式 121 で、実物の梅結びは端を中に納めるので閉じ方は仮定である。

左巻きと右巻きは同じ結び目

淡路結びには左右の作り方がある。数字を出す前の見立ては「左右の淡路は別の結び目で、V(t)と V(1/t)が違う」だった。これは外れた。淡路の V は t と 1/t を入れ替えても同じで、鏡像の図式から出し直しても同じ式になる。V が違えば別の結び目だが、同じだからといって同じ結び目とは限らない。ただし Knot Atlas は 8₁₈ を鏡像と同じ結び目(完全両手型、Fully amphicheiral)としているので、左巻きと右巻きの淡路は同じ結び目である。三つ葉 (2, 3)は V = t + t³ − t⁴ で、入れ替えると違う式になる。三つ葉には左右がある。

ターク・ヘッドを 11 本並べると規則が見えた。リードが奇数(3・5)なら全部 V(t)と V(1/t)が同じで、偶数(2・4)なら全部違う。理由の見立てはこうである。組紐 (σ₁σ₂⁻¹σ₃……)^B の鏡像は符号を全部裏返した語で、生成元を σᵢ → σ_{L−i} と裏返すと、L が奇数のとき奇数番と偶数番が入れ替わって元の符号に戻る。残るのは語を逆に読んだものだが、閉組紐を裏返せば同じ結び目である。L が偶数だとこの入れ替えが起きない。11 本で例外はなかった。(3, 2)は 8 の字結び目で、既存の 4₁ と V が一致した。

もうひとつの見立て「(3, 4)と (4, 3)は同じ結び目」も外れた。トーラス結び目は T(3,4)と T(4,3)が同じなので同じ影から出る織りも同じだろうと見たが、交代の織りは交差 8 と 9、行列式 45 と 75 の別の結び目になった。トーラスの対称は上下を交互にした時点で消える。

→ 結び目の不変量(ジョーンズ多項式の道具)

2 橋の表と正体

正体を突き合わせる相手として、2 橋(有理)結び目の表を自前で組んだ。Conway 記法(3₁ = [3]、4₁ = [2 2]、5₂ = [3 2]、7₄ = [3 1 3] など 14 本。記法は KnotInfo の Conway 記法の欄と照合した)から有理タングルを組み、分子閉包して V を出した。14 本とも交代で成分 1、交差は記法の和、行列式は連分数の分子に一致し、[3]・[2 2]・[5] は既存の三つ葉・8 の字・五葉と V が一致した。淡路と梅は、この 14 本のどれとも一致しない。淡路は幅 8 なので 7 交差までの表にないのは当然で、8₁₈ は Knot Atlas と KnotInfo で Conway 記法が [8*]、橋指数が 3 で、2 橋ではない。

→ 結ばれた輪(平面図から結び目を読む同じ手順)

5 本の水引

水引は 1 本でなく、5 本・7 本を平行に並べて結う。並行にした結び目は成分 5 の絡み目で、成分の対ごとに絡み数が決まる。組紐の各交差を 5×5 の交差の塊に置き換えて数えると、淡路 5 本は交差 200、どの 2 本の対も絡み数 0 になった。7 本でも梅 5 本でも 0 で、三つ葉 5 本は全部 3 になる。絡み数はもとの図式のライズ(交差の符号の和)に等しく、淡路の図式は正の交差と負の交差が 4 つずつでライズ 0 である。絡み数 0 は「離せる」とは違うが、淡路の 5 本は互いに巻きついていない。

→ 家紋の対称群(鏡映を持たない紋)

→ 組紐と最大公約数

どう作ったか

生成器は generators/mizuhiki.js で、ターク・ヘッドの影を折れ線で作り、線分どうしの交点を全部集め、道筋に沿って通過を並べて上下を交互に割り当て、jones.js の fromPlanar で図式にして V を出した。組紐のほうは braid で閉包を作った。テイトグラフは交差ごとに端を反時計回りに並べて面をたどり、市松に塗り、ラプラシアンの余因子を整数のまま(Bareiss 法)で出した。2 橋の表は有理タングルを「横ひねりを足す」「90° 回して鏡像」の 2 操作で組み、分子閉包した図式を成分ごとにたどって交差の符号をつけた。並行化は組紐語の各生成元を k×k の塊に展開して絡み数を数えた。描画は折れ線の法線方向に 5 本をずらした帯で、上の帯の周りに窓を切ってから帯を描き直した。乱数は使っていない。

出典

身近
水引の淡路結び・梅結び。閉じた淡路が 8₁₈(Carrick loop)であることは Knot Atlas の 8₁₈ の頁と、辻野の卒業論文 p.10 の「淡路結びの両端を閉じたものは結び目表の 8₁₈ と同じ」。梅結びの閉じ方はここでの仮定
数理
V. F. R. Jones (1985)・L. H. Kauffman (1987)は結び目の不変量と同じ。幅 = 交差数と行列式 = テイトグラフの全域木は Champanerkar と Kofman の総説(arXiv:1406.1945)で、8₁₈ が完全両手型・橋指数 3・Conway 記法 [8*] であることは Knot Atlas と KnotInfo で確かめた。辻野早紀「淡路結びのジョーンズ多項式」(関西大学・卒業論文・PDF を読んだ)の式と、Knot Atlas の 8₁₈ の式は自分の計算と一致した
親戚
結び目の不変量・結ばれた輪・組紐と最大公約数・家紋の対称群・手毬の地割り
生成
generators/mizuhiki.js(mizuhiki.svg 紅白 5 本の淡路結び・mizuhiki-book.svg 帳簿。依存は jones.js だけ・乱数ゼロ)