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雪花絞りと畳み方の群

布を蛇腹に畳んで帯にし、帯を三角に折り重ねて板で挟むと、折り目はすべて鏡になる。帯の上でそのまま折り重ねられる三角形は、角を 1° 刻みで 2700 通り試して、正三角形と直角二等辺三角形の 2 つだけだった。広げた模様の群は畳んだ形で決まり、正三角形なら p3m1、直角二等辺なら p4m になる。染め方が三角形の中で鏡を持つと群は上がり、正三角形の角を 1 つ浸すだけで模様は p6m になった。

藍と白の見本 4 枚。正三角形・直角二等辺三角形・30°・60°・90° に畳んで縁と角を藍で浸した模様と、正三角形に畳んで麻の葉の板で挟んだ星と菱形の模様
左から、正三角形・直角二等辺三角形・30°・60°・90° に畳んで縁と角を藍で浸した見本と、正三角形に畳んで麻の葉の板で挟んだ見本。どれも、畳んだ三角形の中の染めを折り目の鏡で広げただけで描いた。

なにか

雪花絞りは、愛知県の有松に古くからある板締め絞りの一つである(水野染工場のコラム「板締め絞りとは?」、2022-11-02 の日付がある)。白い生地を 4 つか 6 つに蛇腹に折って帯にし、帯を板の大きさに合わせて三角に折り、三角の板で挟んで固定してから染める。広げると、雪の結晶や花のような模様が出る。同じコラムは正三角形の折りを基本とし、二等辺三角形に折ると別の模様になると書いている。名古屋の染め物店まり木綿のブログ(2018-12-29)は、板締めの板の代表を「二等辺三角形」「正三角形」「麻の葉」の 3 種類としている。染料のみやこ染の板締絞り器には、1 辺 8.5cm の正三角形の板と、底辺 15cm・高さ 4.4cm の「麻の葉三角形」の板が入っている(桂屋ファイングッズの商品頁)。

模型はこう決めた。帯の幅を 1 とし、蛇腹の折り目は帯の縁の直線 y = 0, 1, 2, … にある。帯の上の三角形を、帯をまたぐ辺で裏返すと隣の三角形になる。これを繰り返して帯を三角形の列にし、端から順に辺で折り重ねると、帯全体が最初の三角形 T の形に畳める。折り目で布は裏返るので、広げた布の点 x は T の中の 1 点 f(x) に決まる。染めた模様は、T の中の染め方 F を引き戻した F(f(x)) になる。板で挟んだ所は白く残り、浸した縁や角から染まる。

帯の上を転がせる三角形

帯の上で三角形を裏返して転がす図 4 段、角の総当たりの結果、畳み方と染め方の組ごとの群の表、麻の葉の板で染めた模様と麻の葉の線の重ね図
上から、帯の上で三角形を転がす図(茜の点線は帯に乗らない裏返し)、角の総当たり、畳み方と染め方の 13 通りの組の群、麻の葉の板で染めた模様と麻の葉の線の重ね合わせ。

折り目で囲まれた三角形が平面を隙間なく埋めるには、どの角も 180° を割り切らなければならない。当てはまるのは 60°・60°・60°、45°・45°・90°、30°・60°・90° の 3 つで、これがそのまま帯の上で転がせる三角形だと見立てた。

角を 1° 刻みで 2700 通り、縁に置く辺を 3 通りずつ試すと、帯の上で転がせたのは 60°・60°・60° と 45°・45°・90° の 2 つだけだった。直角二等辺三角形は脚を縁に置いたときだけ転がせて、斜辺を縁に置くと 1 回目の裏返しで頂点が y = 2 に出る。30°・60°・90° はどの辺を縁に置いても転がせず、裏返した頂点は y = 2・0.5・1.5 に出た。頂点が帯の外や途中の高さに来ると、次の折り目が帯を横切れない。30°・60°・90° に畳むには、正三角形に畳んだ束を高さの線でもう一度半分に折ればよい。

麻の葉三角形(30°・30°・120°)は、120° が 180° を割り切らないので鏡の三角形にならない。帯の上でも、3 通りの置き方で頂点が y = 3・−1・2 に出て転がせなかった。麻の葉の平坦折りで、線が 3 本しか集まらない重心が畳めなかったのも、同じ 120° の角による。

群は畳んだ形で決まり、染め方で上がる

畳み方の写像 f は 2 通りに作った。1 つは、点が T の外にあるあいだ、外れた辺で裏返し続ける万華鏡の引き戻しである。もう 1 つは、蛇腹と三角の折りを実際に順にたどる。正三角形、直角二等辺、30°・60°・90°、正方形、長方形の 5 つで 3000 点ずつ比べると、食い違いは最大 1.9 × 10⁻¹⁴ だった。正三角形と直角二等辺の帯では、4000 点の標本がどれもちょうど 1 枚の三角形に入り、重なりも隙間もなかった。

T の中に対称のない染めを置き、広げた模様に回転と 15° 刻みの鏡を総当たりで当てた。群は正三角形が p3m1、直角二等辺が p4m、30°・60°・90° が p6m、正方形と長方形が pmm で、鏡の三角形と長方形の群 *333・*442・*632・*2222 と一致した。C. Yackel の研究頁(ICERM、2017 年 5 月開始)は、畳んで挟む板締めで作れる壁紙模様を p1・pm・cm・p6m・p4m・p3m1・pmm の 7 つとしている。ここで出た群は、染め方を変えた組も含めてすべてこの中に入った。

染め方が T の中で鏡を持つと、その鏡も広げた模様の鏡になる。13 通りの組で、見立てと総当たりはすべて一致した。正三角形の 3 辺を同じ色で浸すと、模様は p3m1 から p6m に上がる。3 辺を別々の色にすると p3m1 のままで、群は落ちない。p3m1 の鏡はどれも辺の種類を入れ替えないので、辺ごとの色の違いが鏡で崩れないからである。正方形の 4 辺を同じ色で浸すと pmm が p4m に上がり、長方形の縁を浸しても pmm のまま升が半分になるだけだった。

角を 1 つだけ浸すと、正三角形の模様は p6m になる。最初は p3m1 のままと見ていたが、数える前に、浸した角の二等分線が染めの鏡になると気づいて見立てを直した。角を 2 つ別の色で浸すと T の鏡は残らず、p3m1 だった。

麻の葉の板

底辺 15cm・高さ 4.4cm の麻の葉三角形の板は、底角が 30.40°、頂角が 119.20° になる。1 辺 15cm の正三角形の内接円の半径は 4.330cm で、板の高さはこれより 1.6% 高いだけである。つまりこの板は、正三角形を重心で 3 つに割った 1 つとほぼ同じ形をしている。そこで、正三角形に畳んだ束の 1 辺に板の底辺を合わせて挟むと見立てた。商品頁には「絞り方の説明書付き」とあるが、説明書は開いていない。

広げた模様は p6m になった。板は T の鏡を 1 本だけ持ち、その鏡で T が 30°・60°・90° の三角形 2 つに割れるからである。白く残る面積は標本で 33.6% で、板の面積の 3 分の 1 と合う。「麻の葉の線がそのまま出る」という見立ては半分外れた。麻の葉は三角格子の辺と、重心から 3 つの頂点への線でできている。白と藍の境目に乗ったのは、重心からの線 72 本のうち 48 本(3 分の 2)で、三角格子の辺は 42 本のうち 0 本だった。境目に乗らない残りの 24 本は藍の中を通る。三角格子の辺は、板の底辺を合わせた側の辺が白い菱形の対角線になり(15 本)、ほかは藍の中に埋もれて(27 本)、どちらも線としては見えない。

数字を出す前の見立ては 4 つだった。「帯の上で転がせるのは角が 180° を割り切る 3 つの三角形」は半分外れで、30°・60°・90° は転がせず、直角二等辺三角形は脚を縁に置くときだけだった。「群は畳んだ形で決まる」は 5 つの形で当たった。染め方の見立ては 13 通りの組で当たったが、角を 1 つ浸す組は数える前に一度直している。「麻の葉の線がそのまま出る」は外れで、出るのは重心からの線の 3 分の 2 だけだった。

→ 和柄の対称群(麻の葉は p6m)

→ 麻の葉の平坦折り(120° の重心は畳めない)

→ 紋切り遊びと一刀切り(扇に畳んで鏡を重ねる)

→ 江戸小紋三役と格子の向き(型染めと格子)

→ 手毬の地割り(球の上の鏡の三角形)

どう作ったか

生成器は generators/sekka.js である。帯の上の転がしは、帯をまたぐ辺で三角形を裏返し、裏返した頂点が縁に乗るかを 1 回ごとに確かめた。総当たりは角を 1° 刻みにした 2700 通りの三角形で、縁に置く辺を 3 通り、左右に 30 回ずつ転がした。畳み方の写像は、万華鏡の引き戻しと、蛇腹と三角の折りを順にたどる引き戻しの 2 つを作って突き合わせた。染めは T の中の連続な関数にしてあり、群は回転(2・3・4・6 回)と 15° 刻みの鏡と映進を、敷き詰めた三角形の頂点・辺の中点・重心を中心の候補にして 240 点の標本で判定した。見本の図は、同じ写像で画素ごとに染めを引き戻して描いた。依存はなく、乱数は種を固定した標本にだけ使っている。

確かめていないこと。Yackel の論文(J. Math. Arts 15 巻 3・4 号、2021 年、232〜244 頁。書誌は Crossref で確かめた)の本文は開いていない。7 つの群は ICERM の研究頁の要旨から取った。この頁の要旨は p3m1 を *332 と書くが、同じ頁の写真の説明は *333 で、ここでは *333 とした。実際の雪花絞りで、30°・60°・90° や麻の葉の板をどう畳んで使うかは確かめていない。層の奥ほど染料が届きにくいこと、生地の厚みで折り目の位置がずれること、染料が板の下へにじむ幅は入れていない。板の寸法は商品頁の記載で、実物は測っていない。

出典

身近
雪花絞りの手順: 水野染工場「板締め絞りとは?古くから愛される模様を生み出す染色技法」(https://hanten.jp/column/aizome/indigo13 、2022-11-02 の日付)。板の形: まり木綿「絞りの道具紹介」(2018-12-29)。板の寸法: 桂屋ファイングッズ「みやこ染 板締絞り器 三角形」の商品頁(正三角形 1 辺 8.5cm、二等辺三角形 底辺 15cm・高さ 4.4cm)
数理
板締めで作れる壁紙模様: C. Yackel, Wallpaper patterns admissible in itajime shibori, Journal of Mathematics and the Arts 15 巻 3・4 号(2021 年)232〜244 頁(本文は開いていない)と、同じ著者の ICERM の研究頁 Itajime Shibori Wallpapers(2017 年 5 月開始)。鏡の三角形と壁紙群: 角が π/p・π/q・π/r の三角形の鏡映群(ここでは総当たりの結果と突き合わせた)。群の名前は国際結晶学連合の表記
親戚
和柄の対称群・麻の葉の平坦折り・紋切り遊びと一刀切り・江戸小紋三役と格子の向き・手毬の地割り
生成
generators/sekka.js(sekka.svg 見本 4 枚・sekka-book.svg 帳簿。依存ゼロ)