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麻の葉の平坦折り

紙を平らに畳むには、頂点ごとに山と谷の数と角がそろい、重なりが紙を突き抜けない必要がある。麻の葉の線だけを折り目に使うと、この条件で止まる頂点が出る。そこへどんな線を足せばよいか、足し方は何通りあり、畳むとどんな形になるかを数えた。

麻の葉の線の上に、菱形 3 向きを 3 色で塗った積み木の敷き詰めを重ね、各菱形の長い対角線の中央に茜色の短い線を足した図
麻の葉に、積み木の形に並べた菱形を重ねた。菱形は向きごとに 3 色で塗り、茜の線が足した折り目である。茜の線は菱形の長い対角線の中央 3 分の 1 にあたり、2 つの三角形の重心を結ぶ。

なにか

麻の葉は、正三角形を敷き詰めた格子に、各三角形の重心から 3 つの頂点へ線を引いた文様である。和柄の対称群では p6m と判定した。

平らに畳めるかは、まず頂点ごとに決まる。1 つの頂点に集まる折り目は偶数本で、山と谷の数の差が 2 でなければならない(前川の定理)。角を 1 つおきに足すと 180° になる必要もある(川崎の定理)。この 2 つを満たしても、紙が自分を突き抜けずに重なる順番が取れるとは限らない。そこで山谷の割り当てごとに、層の順番を総当たりで探す方法と、隣より小さい角を挟む逆向きの 2 本を畳み込んでいく方法(クリンプ)の 2 通りで判定し、結果を突き合わせた。

重心で止まる

頂点 5 種の帳簿、足す線の角が 60° に決まるグラフと 3 つの敷き詰め、山谷の数と規則の山谷を載せた積み木、畳んだ形 4 つの帳簿
上から、頂点 5 種の帳簿、足す線の角が決まる理由と周期ごとの数、山谷の数と規則の山谷を載せた積み木(茜の実線が山、藍の破線が谷)、面ごとの鏡映を合成して畳んだ形を並べた。

麻の葉の頂点は 2 種類ある。格子点には格子の辺 6 本と重心からの線 6 本が 30° おきに集まる。川崎の定理を満たし、山と谷が 7 対 5 になる割り当て 1584 通りは、2 通りの判定のどちらでもすべて畳めた。重心には線が 3 本しかない。奇数なので前川の定理を満たせず、面ごとの鏡映を合成しても、重心を 1 周すると 3 回の鏡映で元に戻らない。

線を抜いて畳める形にするなら、重心の 3 本は 1 本も残せない。2 本残すと 120° に曲がった折れ線になり、1 本では行き止まりになるからだ。残るのはただの三角格子で、麻の葉は消える。

足す線は菱形の敷き詰め

重心に線を 1 本だけ足す場合を考えた。120° の角を x と 120° − x に割ると、川崎の定理を満たすのは x = 60° のときだけだった。その線は向かいの辺に垂直に当たり、辺の中点を通る。中点では辺が 180° の角を作っているので、もう 1 本が要る。それも 90° に決まり、線は辺の向こうの三角形の重心までまっすぐ続く。

だから線を 1 本足すと、隣り合う三角形 2 つが対になる。どの重心にも 1 本ずつという条件は、全部の三角形を重ならないように 2 つずつ組むことと同じで、組んだ 2 つは 1 つの菱形になる。ロザンジュ・タイリングと同じ菱形の敷き詰めである。周期 2 の敷き詰めは 9 通り、周期 3 は 42 通り、周期 4 は 417 通りあった。周期 2 と 3 では、辺の部分集合の総当たり、三角形を対にする総当たり、上向きの三角形が辺を 1 つ選ぶ総当たりの 3 通りで同じ数が出た。

重心に 3 本足しても畳める。三角形ごとに 1 本か 3 本という足し方は、周期 2 で 32 通り、周期 3 で 1024 通りで、周期を L とすると、どちらも 2 を L² + 1 回かけた数になる。「三角形ごとに奇数本」という条件を 2 を法とする連立方程式にして階数を出すと、同じ数になった。足す線の長さは、1 本ずつなら三角形あたり内接円の半径ぶんで、3 本ずつ(中線を全部延ばす)の 3 分の 1 である。数字を出す前は「中線を全部延ばすのが最少」と見立てていたが、外れた。

山谷と畳んだ形

重心に 1 本足した頂点は、角が 60°・60°・120°・120° の 4 本になる。前川の定理を満たす 8 通りのうち畳めるのは 6 通りで、畳めない 2 つは、3 対 1 の「1」を遠い頂点へ向かう線に置いた場合だった。

どの単位胞も同じ山谷にする周期 1 の割り当ては、麻の葉そのままで 0 通り、三角格子だけで 6 通り、平行な菱形で垂線を足すと 192 通り、中線を全部延ばすと 5700 通りあった。前から順に探す数え方と、全部の組を総当たりする数え方で一致している。

敷き詰めごとに山谷を探す必要はなかった。上向きの三角形の線を谷、下向きの三角形の線を山、足した線はその逆にし、格子の辺は向きごとに 2 向きを同じ色、残り 1 向きを逆の色にする。この規則を周期 2・3・4 の敷き詰め 468 通りに当てると、辺の色の選び方 6 通りのどれでも、全部の頂点で前川の定理・層の順番・クリンプの 3 つを通った。格子点では葉の線が谷と山を交互に 3 本ずつ持ち、辺が 4 対 2 になるので山谷は 7 対 5 になる。重心に 3 本足した三角形が混ざると、この規則は通らなかった。

面ごとに、越えた折り目の鏡映を合成して畳んだ形を出した。三角格子だけなら正三角形 1 枚に、中線を全部延ばすと 30°・60°・90° の三角形に畳まれる。菱形の敷き詰めで垂線を足すと 30°・30°・120° の三角形になり、重心からの線で三角形を 3 つに割った 1 片と同じ形だった。周期 3 の敷き詰め 42 通りはどれも同じ三角形に同じ層の数で畳まれ、どの菱形を選んだかは畳んだ形に残らない。

→ 和柄の対称群(麻の葉は p6m)

→ ロザンジュ・タイリング(菱形の敷き詰めと積み木)

→ ミウラ折り 展開図(次数 4 の頂点だけの平坦折り)

→ 紋切り遊びと一刀切り(折り線の川崎の定理)

どう作ったか

生成器は generators/asanoha-fold.js で、三角格子の点を 6 倍した整数座標で持ち、重心と中点も整数で表した。周期 L の格子を端でつないだ面(トーラス)の上に折り目を並べ、頂点ごとに折り目を角度順に並べて角を出した。1 頂点の判定は、層の順番を 1 枚ずつ差し込む総当たりと、クリンプを繰り返す方法の 2 通りで書き、割り当ての集合が一致するのを確かめた。足し方の数は部分集合の総当たりと 2 を法とする階数、菱形の敷き詰めの数は対にする総当たりと上向きの三角形の選び方で数えた。畳んだ形は、半径 3 の六角形の紙で面をたどって鏡映を合成し、別の道でたどり着いた面と行列が食い違わないかを見た。依存も乱数も使っていない。

確かめていないこと。判定したのは頂点 1 つずつの畳み方と、周期の中で山谷が矛盾しないところまでで、紙全体の層の順番(どの面がどの面の上に来るか)は確かめていない。実際に紙を折ってもいない。途中の形を曲げずに動かせるか(剛体折り)も調べていない。麻の葉を折り紙のテセレーションとして折る先行例は調べていない。

出典

身近
麻の葉(和柄)。三角格子に重心からの線を引く描き方は、和柄の対称群の生成器と同じにした
数理
前川の定理と川崎の定理は T. Hull, The Combinatorics of Flat Folds: a Survey(arXiv:1307.1065)の定理 2.1・2.2(川崎は川崎敏和、前川は Justin とともに挙げられている)。1 頂点の山谷の割り当てを線形時間で判定できることは M. Bern と B. Hayes(SODA 1996)の結果として Chung ほか arXiv:2204.03696 の p.4 が引いている(Bern と Hayes の本文は開けていない)。ここで使ったクリンプを繰り返す方法は、層の順番の総当たりと突き合わせて確かめた。菱形の敷き詰めとハニカムの完全マッチングの対応は R. Kenyon, Lectures on dimers(arXiv:0910.3129)の p.4 で、ここでは周期 2・3 で 3 通りに数えて一致を見た
親戚
和柄の対称群・ロザンジュ・タイリング・ミウラ折り 展開図・紋切り遊びと一刀切り・ハニカム・家紋の対称群
生成
generators/asanoha-fold.js(asanoha-fold.svg 積み木の菱形と足した折り目・asanoha-fold-book.svg 帳簿。依存ゼロ・乱数ゼロ)