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かけ算第37号|フィロタキシス × 形の定数と対数の写像

ヒマワリを視覚野の座標に写す

形の定数と対数の写像では、視覚野のまっすぐな縞を複素対数で視野に戻すと螺旋になった。では、視野にもともと螺旋に並んでいるヒマワリの種を、同じ対数で視覚野の座標に写すと、まっすぐな格子になるだろうか。ならなかった。格子になるのは、半径が等比で増える並び方のほうだった。

左から右へ、まばらな灰色の点、薄い藍、藍、紫、茜、橙の点が縦の帯になって並び、右へ行くほど点が小さく細かく詰まっていく
ヒマワリの種 3,000 粒を視覚野の座標(横が半径の対数、縦が角度)に写した。色はいちばん近い種との番号差で、左から 13・21・34・55・89 の帯に分かれる。右へ行くほど種が詰まり、格子にはならない。

なにか

視野の点 z = r eiθ を、横 x = ln r・縦 y = θ の座標に写す。形の定数と対数の写像で、視野から視覚野への対応として使った複素対数である。

ヒマワリの種は、n 番目の種を半径 √n、角 n × 黄金角(137.508°)に置くモデルでよく描かれる。Bacher の論文(arXiv:1301.7568)は冒頭でこの形を種のモデルとして挙げ、√n の因子で半径 R の円に R² 個の種が入ると書いている。同じ論文の §11.1 は、円筒の上の格子を指数関数で写すと、半径が ρn で増える「対数模型」になると書く。対数はその逆なので、対数模型なら視覚野で格子に戻るはずである。

対数模型は格子になる

ヒマワリと対数模型を視野と視覚野で並べた 4 つの点の図、格子の確かめ、帯ごとの種の数の表、螺旋の角の表、番号差の一致
上から、視野と視覚野の 4 つの図、対数模型の格子、ヒマワリの混み方、螺旋の傾き、いちばん近い種の番号差を並べた。

見立ては「螺旋に並ぶ種は、対数で写せば格子になる」だった。半径を 1.03n とした対数模型では当たりだった。2 つのやり方で確かめた。1 つは、点 n が「横 n ln 1.03、縦は黄金角の n 倍に 2π の整数倍を足した値」の位置に来るかを見る方法で、300 点でずれは 6×10⁻¹⁴ だった。もう 1 つは、基底を知らないまま、いちばん近い差のベクトル 2 本を取る方法である。ほかの 299 本の差はすべてその 2 本の整数の組み合わせで書け、整数からのずれは 7×10⁻¹³ だった。基本の平行四辺形の面積は 0.1857 で、2π ln 1.03 に等しい。

ヒマワリは右へ詰まる

ヒマワリ(半径 √n)では外れた。視野では半径 √N の円に N 粒が入るので、種の混み方は一様に 1/π である。対数の写像は面積を 1/r² 倍にするので、視覚野の混み方は r²/π、つまり e2x/π になり、右へ行くほど指数関数で詰まる。8,104 粒を x の帯で区切って数えた。x = 1〜2 で 47 粒(式では 47.2)、2〜3 で 349 粒(348.8)、3〜4 で 2,577 粒(2,577.5)になり、どの帯でも式との差は 1 粒以内だった。

同じ番号差 F の種を結ぶ螺旋も、外へ行くほど傾きが変わる。螺旋が円(視覚野では縦の線)となす角は、F = 21 では n = 400 で 10.83°、n = 25,600 で 0.18° と寝ていき、n が 4 倍になるごとにほぼ 1/4 になる。自分で導いた近似 tan ψ ≈ √5F²/(4πn) は、n = 25,600 で 0.176° と、測った値に小数第 3 位まで合う。対数は角度を保つので、同じ角を視野で測っても小数第 1 位まで同じ値になった(n = 400 で 10.81°)。対数模型では角が一定で、F = 13 は n = 50・100・150 でどれも 60.6133° だった。

近所の並びは変わらない

対数は、近くだけを見れば拡大と回転なので、近所の並び方は変えない。n = 20〜6,000 の 5,981 粒で、いちばん近い種の番号差を視野と視覚野で比べると、5,799 粒で一致した。現れる番号差は 13・21・34・55・89・144 で、ヒマワリのボロノイで見たフィボナッチ数の帯と同じ順に並ぶ。食い違う 182 粒は、どれも 2 番目に近い種との距離の差が 4.4% 以内の取り合いだった。変わるのは種の大きさの見え方だけで、ヒマワリと対数模型の違いはそこに出る。

→ フィロタキシス(黄金角で並べる種)

→ 形の定数と対数の写像(同じ複素対数)

→ ヒマワリのボロノイ(番号差の帯)

→ 対数螺旋(等角に巻く螺旋)

どう作ったか

種の位置は、角を 2π(2 − φ)n(φ は黄金比)、半径を √n または 1.03n とした。視覚野の縦の座標は 2π で畳み、縦の差は ±π に収まるように測った。いちばん近い種は、番号が前後 400 以内の種から探した。

確かめていないこと。視覚野の座標は複素対数だけで、中心の近くの補正は入れていない。実物のヒマワリの頭や松かさの写真は測っていない。対数模型が実物のどの植物に合うかは調べていない。この絵が目にどう見えるかも調べていない。

出典

数理
R. Bacher, "On geodesics of phyllotaxis", arXiv:1301.7568(開いて読んだ)。種のモデル √n e2iπnθ は p.1、√n の因子で半径 R の円に R² 個が入ることは p.4、円筒の格子と対数模型の関係は §11.1(p.30)。モデルの元は H. Vogel, "A better way to construct the sunflower head", Math. Biosci. 44 (1979) 179–189(要旨を読んだ)。複素対数は形の定数と対数の写像と同じ関数。混み方の式と螺旋の角の近似は自分で導いた
親戚
フィロタキシス・ヒマワリのボロノイ・形の定数と対数の写像・対数螺旋・帯に写した双曲タイリング
生成
generators/sunflower-v1.js(sunflower-v1.svg 視覚野の座標のヒマワリ・sunflower-v1-book.svg 帳簿)