かけ算第39号|トーラスの泉 × 組紐と最大公約数
トーラスに巻いた糸の絡み数
組紐と最大公約数では、斜めに跳ね返る糸が縦横の最大公約数と同じ本数に分かれた。トーラスの泉では、入れ子のドーナツに巻いた斜めの円が、どの 2 本もちょうど 1 回絡んだ。2 つを合わせて、ドーナツに巻き数 (p, q) の糸を巻いたとき、分かれた輪どうしが何回絡むかを数えた。
なにか
トーラスの泉と同じく、Hopf のファイバーが乗る入れ子のトーラスを使う。糸は、軸のまわりを p 周、管のまわりを q 周して閉じる。p と q の最大公約数を d とすると、糸は d 本の輪に分かれ、1 本の輪は軸のまわりを p/d 周、管のまわりを q/d 周する。組紐と最大公約数で糸の本数が gcd になったのと同じ数え方である。Hopf のファイバーは巻き数 (1, 1) の輪だった。
絡み数は、トーラスの泉と同じ 2 つのやり方で数えた。1 つはガウスの絡み積分、もう 1 つは平面に写した図の交差に上下の向きの符号をつけて足し、2 で割る方法である。交差を数える前に、線がちょうど重なる向きを避けるために図を少し回した。
平行な輪どうしも絡む
見立ては「同じ面の上に平行に並んだ輪どうしは絡まない」だった。外れた。どの 2 本も (p/d)(q/d) 回絡んだ。(2, 2)・(3, 3)・(5, 5) では 1 回、(2, 4)・(4, 2)・(3, 6) では 2 回だった。(4, 6)・(6, 4)・(6, 9) では 6 回、(6, 10) では 15 回である。10 通りすべてで、ガウスの積分は予想の整数から 0.0008 以内、交差の数え上げは予想とちょうど同じだった。
輪は同じ面の上で交わらずに並んでいても、面をはさんで反対側から見ると互いに相手の管をくぐっている。Hopf のファイバーがどれも 1 回絡んだのは、巻き数 (1, 1) の輪を並べた、この一番小さい場合にあたる。
内側とは q 回、外側とは p 回
巻き数 (p, q) の糸を 1 本(d = 1)にして、内側のトーラス(緯度 −0.5)と外側のトーラス(緯度 0.5)のファイバーとの絡み数を数えた。内側のファイバーとは q 回、外側のファイバーとは p 回絡んだ。(2, 3) なら内側と 3 回、外側と 2 回で、(3, 2) では入れ替わる。6 通りすべてで、2 つのやり方がこの数に一致した。
内側のファイバーは、糸の乗るトーラスの管の中を、軸のまわりに 1 周している。糸はその管のまわりを q 周するので q 回絡む。外側のファイバーは糸の乗るトーラスを外からくるみ、糸は軸のまわりを p 周するので p 回絡む。いちばん内側の単位円とは q 回、軸に近いファイバー(緯度 0.98)とは p 回で、6 通りとも同じだった。
どう作ったか
緯度 t の Hopf のトーラス(中心の円の半径 R = 1/B、管の半径 r = A/B)の上で、軸のまわりの角を (p/d)s、管のまわりの角を (q/d)s として s を 1 周させた。c 本目の輪は、軸のまわりの角を 2πc/q だけずらして作った。表の数は緯度 0 のトーラスで数え、絵は輪の巻き方が見えやすいように細めの緯度 −0.6 のトーラスで描いた。
確かめていないこと。絡み数は 10 通りと 6 通りの巻き数で数値を見たもので、一般の (p, q) についての証明ではない。絡み数の符号は向きの取り方で変わるので、大きさだけを比べた。
出典
- 数理
- 入れ子のトーラスと Hopf のファイバーはトーラスの泉(D. W. Lyons, Mathematics Magazine 76 (2003) 87–98 の Hopf 写像と立体射影)。糸が gcd(p, q) 本に分かれることは組紐と最大公約数。絡み数の式 (p/d)(q/d) と、内側・外側との絡み数は、数値と突き合わせて自分で確かめた
- 親戚
- トーラスの泉・組紐と最大公約数・結び目の不変量・結ばれた輪・水引の結び
- 生成
- generators/torus-link.js(torus-link.svg (4, 6) の 2 本の輪・torus-link-book.svg 帳簿)