かけ算第38号|和柄の対称群 × 形の定数と対数の写像
和柄を視野に戻す
形の定数と対数の写像では、視覚野のまっすぐな縞や六角形を視野に戻すと、トンネルや螺旋になった。同じことを市松・七宝つなぎ・麻の葉・青海波でやり、和柄の対称群で調べた鏡や回転が視野でどうなるかを数えた。残ったのは、閉じる向きを保つ操作だけだった。
なにか
視覚野の点 (x, y) を、視野の点 z = es(x + iy) に戻す。形の定数と対数の写像で使った複素対数の逆である。視野で継ぎ目なく 1 周閉じるには、縦 2π/s が模様の縦の周期 P のちょうど k 倍になればよい。そこで s = 2π/(kP) と置いた。k は市松が 12(1 周に正方形 24 枚)、七宝つなぎが 16、麻の葉が 10、青海波が 24 である。
和柄の対称群では、市松と七宝つなぎが p4m、麻の葉が p6m、青海波が cm だった。それぞれの鏡と回転を、視覚野の上で 1 つずつ確かめてから視野に持っていった。
残る操作と消える操作
見立ては「和柄の対称性は、視野に戻しても対称性として残る」だった。半分外れた。残ったのは市松で 8 つのうち 4 つ、七宝つなぎで 8 つのうち 4 つ、麻の葉で 12 のうち 4 つで、青海波だけは 2 つとも残った。どの操作も、視覚野の上では模様を自分に重ねる本物の対称操作である(市松と七宝つなぎは 81 点、麻の葉は 271 点、青海波は 317 点で確かめた)。
分かれ目は、閉じる向きである。視野で 1 周するのは視覚野の縦の向きなので、縦を縦に(上下を返してもよい)写す操作だけが、視野の上でも 1 つの写像に決まる。恒等、180° 回転、横の線での鏡、縦の線での鏡がそれにあたる。90° 回転や 45° の鏡は縦を横に倒し、60° 回転や 30° の鏡は縦を斜めに倒す。これらは、視野のどこから数えて 1 周目とみなすかで行き先が変わってしまう。
2 つのやり方で確かめた。1 つは、操作の線形部分が縦の周期を ±縦の周期に写すかを式で見る方法である。もう 1 つは、視野の点を対数の 1 つの枝で視覚野に戻し、操作をかけて視野に戻したとき、元の点の集まりに重なるかを見る方法である。残る操作は 100% 重なり、消える操作は 50〜57% しか重ならなかった。2 つのやり方の分け方は、全部の操作で一致した。
残る操作は円を円に写す
残る操作の視野での形を式で書いた。横の線 y = c での鏡は z ↦ e2isc z̄ で、放射の線を軸にした本物の鏡になる。縦の線 x = c での鏡は z ↦ e2sc/z̄ で、半径 esc の円での反転になる。中心 (c, d) のまわりの 180° 回転は z ↦ e2s(c + id)/z になる。平行移動 (a, b) は z ↦ es(a + ib) z で、縦なら回転、横なら拡大、斜めなら螺旋を描く相似になる。どの式も、視覚野に戻して操作をかける計算と 1×10⁻¹⁵ 以内で一致した。
どれも円を円に写すメビウス変換か、その鏡像である。視野の円を写した像は、残る操作では半径の 3×10⁻¹⁵ 以内で円に乗った。消える操作を対数の 1 つの枝で無理にかけると、像は円から半径の 2〜4% 外れた。和柄の縦の鏡が視野では円での反転になるので、この絵はインドラの網やシュタイナー鎖と同じ反転の仲間に入る。
どう作ったか
和柄は、和柄の対称群と同じ作り方の骨格を点の集まりにした。市松は色のついた正方形の中心、七宝つなぎは円の中心、麻の葉は三角格子の頂点と三角形の中心、青海波は扇の中心と、扇の開く向きの印である。青海波は、扇の列が視野で輪になるように、列を縦に並べた。視野の絵は、視覚野の線分を細かく刻んで写した折れ線で描いた。
確かめていないこと。対称操作は点群の要素だけを数え、すべり鏡映は数えていない。視覚野の座標は複素対数だけで、中心の近くの補正は入れていない。この絵が目にどう見えるかは調べていない。
出典
- 数理
- 和柄の群(市松・七宝つなぎ p4m、麻の葉 p6m、青海波 cm)は和柄の対称群の判定。複素対数は形の定数と対数の写像と同じ関数(そこでの出典は Bressloff ほか 2002)。残る操作の式は自分で導き、数値と突き合わせた
- 親戚
- 和柄の対称群・形の定数と対数の写像・インドラの網・シュタイナー鎖・江戸小紋三役と格子の向き・ヒマワリを視覚野の座標に写す
- 生成
- generators/wagara-v1.js(wagara-v1.svg 視野に戻した麻の葉・wagara-v1-book.svg 帳簿)