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かけ算第19号|Hat の回折像 × 非周期タイリングの棚

回折の動物園 — 「非周期」は一枚岩ではなかった

6種の非周期タイリングの回折像を並べた図。上段はペンローズ・アンマンビーンカー・ドデカゴナル、下段はHat・Spectre・Krinkle
収蔵している非周期タイリングの重心の回折像(点=ブラッグ点・大きさは強度)。同じ「非周期」でも、回転対称・鏡映・格子との関係がぜんぶ違う

同じ物差しで全員を測る

Hat の回折像(かけ算第18号)で「非周期には二種類ある」ことが見えた(発見28)。ならば収蔵品を全員並べて測れば、種類の表が作れるはずである。物差しは3本——①回転対称(ブラッグ点を回して写した先の強度)②鏡映線の有無(向きを総当たり)③完全コヒーレンス max S(q)/N

3本めが今回の道具の発明である。S(q)/N = 1 になる q がある ⟺ 全点で位相がそろう ⟺ 点が格子に乗る。「格子に乗るか」という構造の問いが、スカラー1つの走査に変わる。しかも独立な2本の G が見つかれば、その双対格子(a·G = 2π)に全点が乗っているかを実空間の距離で測り直せる——判定と検算が別の空間でできる。

★家系は3つに割れた

完全コヒーレンスの棒グラフ。三角格子・Hat・Krinkleウェッジ内が1.000000、準周期4種が0.48から0.85、Krinkle大域が0.07
完全コヒーレンス max S(q)/N。1.000000(赤)=格子に乗る。準周期4種は 0.48〜0.85 で頭打ち(窓を2倍にしても 1 へ近づかない)。⚠️1未満の値は窓の取り方で動く=「届かない」ことだけが主張
タイリング回折の回転対称鏡映コヒーレンス家系
三角格子(対照)6回あり 1.001.000000ただの結晶
Hat6回なし 0.2〜0.31.000000①格子の上の非周期
Krinkle(ウェッジ内)2回—(斜交格子)1.000000局所はただの結晶
ペンローズ P310回あり 1.000.48(窓で0.48〜0.76)②真の準周期
アンマン–ビーンカー8回あり 1.000.85②真の準周期
ドデカゴナル位置は12回・強度は6回あり 1.000.50②真の準周期
Spectre6回なし 0.5〜0.60.52(2倍窓でも0.52)②真の準周期(!)
Krinkle(大域)22回(=11回×フリーデル)0.75〜0.83(未確定)0.07③縫い目の秩序

①格子の上の非周期——Hat のコヒーレンスは 1.000000。見つかった G の双対格子は最近接距離のちょうど 1/4 の三角格子で、全点の残差は 10⁻⁸。v1.22 で実空間から見つけた発見28が、今回は回折だけから自動で出てきた(独立2経路)。②真の準周期——ペンローズ・AB・ドデカ・Spectre は 0.48〜0.85 で頭打ちし、どの窓でも 1 に届かない。③縫い目の秩序——Krinkle は下の節で。

★兄弟の分かれ道: Hat は格子に乗り、Spectre は乗らない

Hat と Spectre は同じ族のモノタイル(Spectre は Hat の族の Tile(1,1))なのに、回折の家系が違う。Hat の重心は周期格子に厳密に乗る(コヒーレンス 1.000000)が、Spectre は 0.52 で頭打ち——窓を2倍にしても 0.519 で動かない。どちらも回折は6回対称で鏡映線がない(Hat 0.2〜0.3・Spectre 0.5〜0.6、探した範囲は 0〜30° を1°刻み)。カイラルという性格は兄弟で共通、足元の格子だけが違う。

おまけにドデカゴナルで細かい割れ方も見えた: 30° 回すとピークの位置は 54/60 で写るのに、強度は 0.74 に崩れる——位置は12回・強度は6回。多重格子のオフセット位相(作るときに入れた 0.138, 0.267, … という目盛りのずれ)が、位置ではなく強度だけを壊している。

★Krinkle の秩序は「縫い目」にある

Krinkleの実空間(ウェッジで色分け)と、ウェッジ内の回折(完全な結晶)、中心を含む窓の回折(22回対称)
左=実空間(色はウェッジ)。ウェッジの中は1種のタイルの平行移動だけ=ただの結晶(コヒーレンス 1.000000・構成からも 基準+r·d0+c·d1 が 10⁻¹² で厳密)。右=中心を含む窓では22回対称(回転相関 0.90)でコヒーレンス 0.07

Modulo Krinkle は剰余数列 j·m mod k で作る非周期タイリングだが、回折で見ると正体がはっきりする。ウェッジ(扇形の区画)の中は、1種のタイルを平行移動で敷き詰めただけの完全な結晶である。非周期性はぜんぶウェッジどうしの接ぎ目(回転の縫い目)に集中していて、中心を含む窓で測ると22回対称(実空間の11回×フリーデルの反転)が立つ——結晶学的制限(和柄の対称群・回転は 1,2,3,4,6 だけ)の完全な外側の回転が、剰余算術から出てくる。対照に5回・6回・7回は 0.1 以下で立たない。

同じタイリングなのに、窓の場所しだいで回折が「結晶」にも「11回対称」にもなる——ペンローズ(どこを切っても準周期)とも Hat(どこを切っても格子の上)とも違う、第三の家系である。

どう作ったか

機械検査は22件: ①対照の三角格子で 1.000000・双対格子=自分自身 ②★Hat 1.000000・双対格子=最近接の1/4(発見28の回折側からの再発見)・窓を縮めても判定不変 ③★Krinkle ウェッジ内 1.000000+構成からの第2経路(残差 10⁻¹²)④★Spectre は 0.52 で頭打ち(窓2倍で 0.519)・6回・鏡なし ⑤ペンローズ 10回・鏡あり・0.48 ⑥AB 8回・鏡あり・0.85 ⑦ドデカ=位置は12回(54/60)強度は0.74 ⑧★Krinkle 大域 22回(0.90)・対照の5/6/7回は立たない・コヒーレンス0.07 ⑨フリーデルの法則(自己検証)⑩出荷SVG3枚。⚠️どの数値も「この窓」での測定で、1未満のコヒーレンス値は窓の取り方で動く(ペンローズで 0.48〜0.76 を確認)——不変なのは「1.000000 か、届かないか」。

→ Hat の回折像(かけ算第18号・親)

→ ペンローズ P3アンマン–ビーンカードデカゴナルSpectreModulo Krinkle(被写体たち)

→ 和柄の対称群(結晶に許される回転は 1,2,3,4,6 だけ)

出典

数理
回折像=構造のフーリエ変換の絶対値²。S(q)/N = 1 ⟺ 全点の位相がそろう、は構造因子の定義から。フリーデルの法則 S(−q) = S(q)。各タイリングは収蔵品の生成器(置換・多重格子の双対・剰余ずらし)
こちらの主張
表の全数値はこの作品の測定(重心の点集合だけ・形状因子は落としている・タイル1枚の向きの情報は入らない)。「準周期」「極限周期」等の文献用語との対応づけはしていない——ここでは測れる3本の物差しの値だけで家系を分けた
探した範囲
コヒーレンスは |q| ≤ 30(最近接距離=1の単位)・粗い走査 0.1 → 山登りで精密化。鏡映線は 0〜180/n° を1°刻み。窓は中心を外した円窓(Krinkle 大域だけ回転中心を含む)
生成
generators/diffraction-zoo.js(点集合8種・コヒーレンス走査・双対格子・対称性の測定・図3枚。道具は generators/diffraction.js(かけ算第18号)を再利用。依存ゼロ)