モアレ01 — 差の波(網戸が2枚重なると生まれる大きな波)
なにか
網戸を2枚重ねる、レースのカーテンが折り返る、縞のシャツをテレビで映す——細かい繰り返し模様が2枚重なると、どちらの模様にもなかった大きな縞が浮かび上がる。これがモアレ。数理は「差の波」で、2つの波を掛け合わせると和の波と差の波に分かれ(音でいう、うなり)、目に見えるのは低周波の差の項だけ。同じピッチ p の格子を角度 θ だけ回して重ねると、縞の間隔は p/(2sin(θ/2))——θ が小さいほど縞は巨大になる。
つまりモアレは「小さなずれの拡大鏡」。ノギスの副尺はこの拡大効果をそのまま測定器にした1次元モアレで、0.05mm のずれを目で読める太さに変換している。2018年には、グラフェン2枚を約1.1°だけ捻って重ねたモアレ超格子が超伝導することが見つかり(マジックアングル・グラフェン)、この「重ねてずらす」が物性物理の一大分野になった。
もう1枚
★自分で動かす
下の絵はこの場で計算している(あらかじめ描いた絵の切り替えではない)。上の図を作っているのと同じ 1 本のコード gallery/assets/moire-live.js を、記事の中で呼んでいる。ここでも縞は1本も描いていない——描いているのは平行線(または同心円)だけ。
θ を小さくするほど縞は巨大になる(1/θ 則)。ノギスの副尺はこの拡大効果を測定器にしたもの。
2つの中心を焦点とする双曲線の族が浮かぶ。交点を幾何で独立に計算して、双曲線の式に乗るかを確かめている。
- 縞の周期(実測)
- —
- 縞の周期(閉じた式)
- —
- 拡大率
- —
スライダーで決めた角度とピッチで重ねた2枚の格子(縞は描いていない)
どう作ったか
SVG には平行線と同心円しか描いていない——縞は1本も描いておらず、見えている縞はあなたの目(と画面)の上で生まれている。機械検査は7件: 重ねた明度を走査して自己相関で縞の周期を実測し、閉形式 p/(2sin(θ/2)) と3%以内で一致・角度を半分にすると縞が2倍になる拡大則・同心円版は円どうしの交点を幾何で独立に計算し、双曲線の方程式に誤差10⁻⁹以下で乗ることを確認・記事のドラッグ版を偽DOMの上で実際に走らせる8項目(★角度を21通り・ピッチを5通り動かしても実測と閉形式が合い続ける/中心のあいだを5通り動かしても交点が双曲線に乗る)・出荷SVGとドラッグ版が同じ1本のコードを共有していること・SVG実物2枚。ドラッグ版の検査の実体は tools/moire-live-test.js。
モアレ連作
この1枚(差の波=双曲線)を起点に、図形を替えたモアレを集めている。02 放物線の岸(円×直線)・03 風車のバラ(放射=角度の副尺)・04 モアレ拡大鏡(紙幣の中の巨人)。かけ算の部屋には応用が4つ: ひねった蜂の巣(第8号)・絹の水紋(第9号)・縞の等高線(第10号)・ひねった準結晶(第11号)。
出典
- 数理
- モアレ縞の古典幾何(Lord Rayleigh, 1874 が最初の定式化として知られる)。マジックアングルは Cao et al., Nature (2018)
- 生成
- generators/moire.js(線格子 θ=4°・同心円は中心距離130/ピッチ11)モアレの数理(格子の透過率・縞の周期の実測・同心円の交点)は gallery/assets/moire-live.js に置き、出荷SVGの生成器と記事のドラッグ版が同じ1本を共有している