隙間で、
かたちの数理と遊ぶ。
「遊び」は、機械の部品と部品のあいだに残された隙間のこと。
隙間時間に、余裕をもって、かたちの数理で遊ぶギャラリーです。潰れたアルミ缶、地図の畳み方、浴室のタイル——身近なもののなかに隠れている数学との繋がりを、論文や数理から再実装して探索します。各作品は自作コードで生成し、元になった数理の出典を明記しています。→ 見取り図(コレクションを俯瞰する)
収蔵室
あつめて再実装した形Hat タイル
1種類だけで平面を埋め、決して周期しない。アインシュタイン問題の解 (2023)
Spectre タイル
裏返し(鏡映)すら使わない真のアインシュタイン。Hatの3か月後 (2023)
ペンローズ・タイリング P3
2種類の菱形だけで平面を埋め、決して周期しない。R. Penrose (1974)
ギリ・タイル
イスラム幾何文様の5種のタイル。辺の中点から54°の帯を描いて並べるだけで、帯が辺を越えて直線でつながる (Lu–Steinhardt 2007)
非周期のギリ
ペンローズの菱形(太い方がギリの菱形そのもの)にギリの帯の規則をそのまま載せる。共有辺の中点815個すべてで180°=帯は非周期でも直線で続く
ピンホイール・タイリング
1種の直角三角形で向きが増え続ける非周期。向きを増やすのは回転でなく裏返し。Federation Square の壁 (Radin 1994)
フィボナッチ・ワード
2つの幅の縞だけで決して繰り返さない。非周期タイリングの1次元の祖先。複雑さ n+1・回折は2つの波数の整数結合
ミウラ折り 立体
自由度1=スライダーひとつで畳める。ドラッグで回転(インタラクティブ)
吉村パターン 円筒
缶が潰れるときの模様。剛体では折れない(インタラクティブ)。吉村慶丸 (1951)
ミウラ折り 展開図
地図の畳み方として身近。一枚の紙が一動作で開閉する。三浦公亮 (1970)
吉村パターン 展開図
三角形のダイヤモンド模様。折って丸めると多面体の円筒になる
チューリング・パターン
シマウマの縞もヒョウの斑点も同じ数式から。A. Turing (1952)
アーベル砂山
4粒たまったら隣に配るだけ。崩す順番によらず同じ紋様・帳簿はラプラシアン・群には単位元 (Bak–Tang–Wiesenfeld 1987)
ロザンジュ・タイリング
積み木の錯視=箱に積んだ立方体と1対1。乱数で積むと角が凍って内接円が浮く(アークティック・サークル)。枚数は各n²で不変
トゥルシェ・タイル
1種のタイルを乱数で回すだけの迷路。輪は100セルに10本・大きさに典型なし・糸の次元1.67 (Truchet 1704 / Smith 1987)
ポアソン・ディスク
「どの2点も r 以上離す」だけの水玉。均等(低波数の S≈0.1)だが規則(ブラッグ点)はない=青ノイズ (Bridson 2007)
ボロノイ図
キリンの網目・トンボの羽・泥のひび割れ。「どの点に近いか」の分割 (1908)
距離を変えたボロノイ
「近い」の物差しを L1/L2/L∞/重みに取り替える。境界の向きは量子化する(L1 77%)のに隣接は9割そのまま。島が出るのは重みだけ
ハニカム
蜂の巣とシャボン玉。壁が最少なのは六角形=2000年越しの証明 (2001)
ハサミムシの扇
羽を1/10に畳む虫の扇子。要が紙の外にあり、輪の折り線で2回折り返す (2018/2020)
フィロタキシス
松ぼっくりとヒマワリの螺旋はなぜフィボナッチ数か。黄金角137.5° (1979)
コーヒーカップの光
カップの中の明るい曲線の正体。遠い光ならネフロイド、縁の光ならカージオイド
DLA — 雷の枝
「触れたら凍る」だけで樹枝が生える。次元1.68=線と面の間 (1981)
双曲タイリング {7,3}
レタスの縁の世界地図。平面で不可能な「七角形を3枚ずつ」が負曲率なら収まる
対数螺旋
貝が家を建て増す方法。回転=拡大=連続の自己相似。オウムガイは1周で3倍
ルーローの三角形
円じゃないのに幅が同じ。マンホール・ロータリーエンジン。同幅で面積最小 (1914)
スーパー楕円
|x|ⁿ+|y|ⁿ=1。指数1つで菱形→楕円→長方形。尖る場所は n=2 を境に軸から対角へ跳ぶ(軸の曲率 ∝ ε^(1−2/n))(Lamé 1818・Piet Hein)
ジャイロイド
蝶の翅の構造色と3Dプリンタの中身。空間を合同な2つの迷路に割る極小曲面 (1970)
モアレ01 — 差の波
網戸2枚で生まれる大きな波。円×円の縞は双曲線=「小さなずれの拡大鏡」
モアレ02 — 放物線の岸
円×直線の縞は放物線。差の波は右岸に、和の波は左岸に住む
モアレ03 — 風車のバラ
放射N₁×N₂=|差|枚羽根の風車。0.8°回すと20°回る「角度の副尺」
モアレ04 — モアレ拡大鏡
微小図形×ピッチ差=レンズなしで26倍。紙幣の「動く模様」と同じ原理
アンマン–ビーンカー
銀比1+√2と8回対称の非周期。4次元の周期格子の影として作った (1982)
ドデカゴナル(12回対称)
時計の文字盤の非周期。結晶には作れない12回対称、√3が支配する (1989)
Wang タイル
角の色を合わせるだけ。11枚・4色が最小=55年の競争の決着 (2015)
Modulo Krinkle
会社員が趣味で見つけた非周期。当ギャラリーの着想元のひとつ、道具は剰余の計算だけ (2025)
組紐と最大公約数
糸の本数 = gcd(縦, 横)。ユークリッドの互除法が色の数として見える
コーラム
点格子を一筆で巡る南インドの紋様。鏡1枚で輪はちょうど±1(0は出ない)=一筆は「輪−1」枚の鏡で必ず作れる (Gerdes 鏡の曲線)
カフェウォール錯視
目地は厳密に水平——傾きは目の中で作られる。目地を白にすると消える (1979)
フレーザーの偽螺旋
たどれば円、見れば渦。傾きを信じれば1周6.8倍のはずが、実物のずれは0 (1908)
ペンローズの三角形
角はどれも正しいのに全体は作れない。不可能=投影の核に隠れた変位 (1958)
オートステレオグラム
平行法で帽子が浮かぶ。奥行きは1画素も描かれていない——符号は間隔の列 (1990)
サイクロイド
自転車のバルブの軌跡。最速の坂=どの高さから放しても同着(振り子時計の心臓)
カテナリー
電線のたるみ=cosh。荷重の配り方を替えると放物線に化ける(吊り橋)(1691)
結び目の不変量
ほどけるかを多項式が言い当てる。交差の数は結び目の性質ではない (1984)
Resch パターン
紙で球は包めない。だから角をひだにためこむ——裁縫のダーツと同じ装置
ドラゴン曲線
紙を14回半分に折って開くだけ。山谷の並びは自分で決めていない (1966)
ヒルベルト曲線
1本の線が正方形を埋める。「番号が近い→場所が近い」は定数で守り、「場所が近い→番号が近い」は全曲線が破る=守れるのは片方 (Hilbert 1891)
アポロニウスのガスケット
隙間に入る円は足し算だけで決まる。円の大きさには入れない番号がある (1643)
太鼓の節線
砂が集まる線。同じ音のまま模様だけ無限に変わる。面積は聞こえる、形は聞こえない。スライダーで動かせる
誘電破壊
雷の枝を場から育てる。つまみ1つで苔から一本道まで——次元が1.93→0.92 (1984)
異方性DLA
枝の向きは格子が決める。ただし乱数を薄めないと偶然の腕に隠れて見えない
織りの数理
ジーンズの藍、サテンの光沢。四枚繻子と六枚繻子は数のせいで存在しない (1980)
和音のかたち
2つの音を縦と横に入れると図形になる。協和音=単純な閉曲線 (1857)
雪の結晶
6回対称はどこにも書き込んでいない。乱数ゼロの規則3つで樹枝から板まで (2005)
イモガイの貝殻
模様は空間ではなく時間の記録。縁でしか成長できないから三角形になる (1983)
泡の法則
どの泡が消えるかは辺の数で決まる。5辺以下は縮み、7辺以上は育つ (1952)
葉脈と血管
細り方は3乗で決まる。分岐角は泡と同じ釣り合い——等径なら120° (1926)
木はどこまで高くなれるか
倒れない高さは半径の2/3乗。木・血管・泡は同じ一本の曲線の3点だった (1881)
砂丘の風紋
平らな砂は平らでいられない。跳ぶ距離が間隔を、ならしが濃さを決める (1993)
和柄の対称群
手ぬぐいの模様は17種類のどれかに入る。5回対称の席だけが無い (1891)
ユークリッドリズム
ボサノバは互除法から出てくる。均等の条件は二つあって役割が違う (2003)
時間と周波数
窓を短くすると時刻が分かり、音の高さが分からなくなる。下限は 1/4π (1946)
結晶のかたち
境界を作るエネルギーが向きで違うと円は選ばれない。角が立つしきい値は 1/(n²−1) (1901)
川の分岐
枝の本数は等比で減る。木であることだけでは比は 2 にしかならない (1945)。窪地を埋めても指数は動かず、箱を縦長にすれば文献値は出た——出していたのは壁
乾燥亀裂と柱状節理
順に割れると90°、同時・釣り合いなら120°。角度を決めるのは時間割 (1962)
ロープだけの作図
麦畑の道具はロープ=コンパス。定規なしで幾何は全部できる。中点は円7つ (1672)
πのらせん
弧の角度÷36°=円周率。独立2経路で計算した40桁を麦畑の符号で刻む (2008)
ジュリア集合
2乗して c を足すだけ。つながるか塵かは軌道1本で決まり、見た目では分からない (1918)
畑の円の面積比
内接と外接の円の比が音程になるのは3・4・6角形だけ。壁紙の17種と同じ源 (1956)
かけ算の部屋
収蔵品どうしから生んだ形仕組みの違う収蔵品を掛け合わせると、模様だけでなく検査できる定理が増える(見取り図の発見6)。ここは当ギャラリーの新作の作り方そのもの。
かけ算第1号|フィロタキシス × ボロノイ
ヒマワリのボロノイ
隣どうしの番号差は100%フィボナッチ・面積はほぼ均一=螺旋の正体が見える
かけ算第2号|チューリング × ミウラ折り
チューリング×ミウラ折り
折り目だけ拡散を遅くすると、縞は折り線に沿って走り出す
かけ算第3号|ボロノイ × Hat
ボロノイ×Hat
乱数ゼロのランダム網目。赤=鏡映の縄張り=1/(1+φ⁴)
かけ算第4号|アンマン–ビーンカー × 組紐
非周期のケルト装飾
gcd が消えたあとに残るもの=全体を渡る巨大な糸2本と、星のまわりの小さな輪
かけ算第5号|モアレ × フィロタキシス
Glass パターン
ヒマワリ2枚を7.7°回して重ねると、相方は必ず21番先=フィボナッチ
かけ算第6号|ジャイロイド × チューリング
ジャイロイド×チューリング
蝶の翅の2つの数理を同居させる。縁のない曲面を縞がくぐり抜ける
かけ算第7号|双曲平面 × ボロノイ
双曲ボロノイ
「平均6」は平坦の特権。負曲率では 6 + 3a/π に書き換わる({7,3}で厳密に7)
意匠化第1号|Spectre の縁 × 三つ山の波
Spectre 織り
噛み合い条件2式を守れば縁は何でも布になる——テキスタイル試作第1号
意匠化第2号|Modulo Krinkle の縁 × ひと山の波
Krinkle 織り
回転の中心が1本の直線の辺として布に刻まれる——数理の制約が意匠になる
かけ算第8号|モアレ × ハニカム
ひねった蜂の巣
マジックアングルの数理。可換角 cosθ=13/14 では√7倍の超格子が厳密に立つ
かけ算第9号|モアレ × 組紐
絹の水紋
moiréの語源は織物。糸のゆらぎAが縞ではA/εに拡大される——ゆらぎの拡大鏡
かけ算第10号|モアレ × ミウラ折り(立体)
縞の等高線
面に投影した縞×参照格子=等高線。側弯症検診にも使われた「縞で測る3D」
かけ算第11号|モアレ × アンマン–ビーンカー
ひねった準結晶
非周期をひねっても親の式は効く。縞も多重格子=8回対称は重なりを生き延びる
かけ算第12号|ケルト装飾 × 結び目の不変量
結ばれた輪
ペンローズの糸だけが本当に結ばれている。しかも出る結び目に必ず5が入る
かけ算第13号|チューリング(阻害場) × フィロタキシス
黄金角の生まれ方
角度はどこにも書いていない。押し合うだけで137.5°が出てくる——枝は4本ある
かけ算第14号|DLA × アンマン–ビーンカー/ペンローズ
準結晶の上の雷
並進対称がなくても枝は向きを持つ。8回格子は8方向、10回格子は10方向を選ぶ
かけ算第15号|和音のかたち × フィロタキシス
なぜ鍵盤は12個か
葉と音は同じ装置に正反対の注文をしている。黄金角は「どの枚数でも負けない」
かけ算第16号|和音のかたち × モアレ
和音のモアレ
協和の単純さは超格子の粗さ。古代の協和音程=縞が超格子そのままに出る比
かけ算第17号|和音のかたち × Hat
周転円で描く角
円の足し算で角を作ると必ず 8.9490% 行き過ぎる。矩形波とタイルの角は同じ曲線
かけ算第18号|Hat × 周転円で描く角
Hat の回折像
部品は鏡を含むのに全体は鏡に映せない。鏡映の帽子は 1/2 ではなく 1/(3φ²)
かけ算第19号|Hat の回折像 × 非周期タイリングの棚
回折の動物園
「非周期」は3家系に割れる。Hat は格子に乗り、兄弟の Spectre は乗らない
かけ算第20号|太鼓の節線 × 非周期タイリング
かけ算第20号|非周期の太鼓
同じ音を2つ持てるかを決めるのは、非周期かどうかではなく回転対称だった
かけ算第21号|川の分岐 × 葉脈と血管
かけ算第21号|葉脈の分岐比
葉脈は二分木の2でも川の5でもない。羽状脈の分岐比は側脈の本数そのもの。横枝の角度を決められるのは Murray だけ
かけ算第22号|結晶のかたち × 雪の結晶
かけ算第22号|平衡形と成長形
同じ格子で水蒸気を減らすほど、雪の成長形は Wulff の六角へ単調に近づく(一致率 32%→94%)。角の向きも同じ
かけ算第23号|ボロノイ × 泡 × 乾燥亀裂
かけ算第23号|詰まり方の帳簿
緩和はつながりの帳簿を1ビットも変えず、面積の帳簿だけ変える。順に割ると分散は2.5倍。隣の相関 a はこの規模では読めない